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なぜ今欧米で「BL」が流行しているのか?ブロマンスからエンタメ化までの変遷を追う【2000-2025年】

みなさん、今欧米で「BL」がブームになっていることをご存知でしょうか?

そのブームの火付け役となったのが、カナダで制作されたドラマ『Heated Rivalry(ヒーテッド・ライバルリー)』。アイスホッケーの選手同士の恋を描いた作品です。

Heated Rivalry(ヒーテッド・ライバルリー)(2025)

放送されると、多くの欧米の女性ファンを魅了し、そのファンの熱量と作品の人気ぶりに、New York TimesやBBCといった大手メディアでも特集が組まれるなど、社会現象を巻き起こしています。

このブームに至るまでに、欧米の映像BLコンテンツにおける「男性同士の関係性の描き方」がここ数年で大きく変化してきました。それと同時にファンの「ブロマンス・BL」へ向ける目線も変わってきています。

そこで今回は、「欧米の映像コンテンツ」に注目し、

・欧米のファン文化
・欧米作品における男性同士の関係性の描き方の変遷
・作品に対するファンの受け止め方の変化

について、具体的な作品を取り上げながら年表形式で振り返っていきます!


欧米のファン文化

欧米の男性同士の関係性の描き方の変遷について振り返る前に、まずは前提となるファン文化の特徴・概念についてご紹介します!

・M/Mロマンス

日本でいう「Boy’s Love」にあたる概念で、男性同士の恋愛を主題とした作品を指す。Male(男性)という英単語が語源になっている。

・Slash(スラッシュ)

欧米圏における、テレビドラマや映画、小説などの作品をもとに男性同士の恋愛、性愛関係を描いたファンフィクションのこと。ペアリング(日本でいうカップリングのこと)を示す記号「/」(スラッシュ)に由来しており、ジャンルそのものの名称として使われている。日本とは違い、左右の位置で攻め・受けが決まるものではない。

・Shipping(シッピング)

「relationship(関係性)」に由来する言葉で、キャラクター同士を恋愛関係として捉える行為。日本でいう二次創作に当たる語彙で、男性同士だけでなく男女や女性同士の関係性も対象となる。また、ShippingをするファンのことをShipperという。

特徴的なのは、欧米では主に男性同士の関係性は二次創作を中心に楽しまれてきたという点です。

実際に「shipping」は、ファンフィクション(二次創作小説)やファンアート(二次イラスト、漫画) といった形で表現され、その多くがインターネット上で共有されています。

日本と比べてBLコンテンツの供給が多くない欧米では、ファンはブロマンス作品や一般作品に描かれるship(関係性)を読み取り、二次創作として拡張することで、楽しみ方を発展させてきたと言うことが出来ます。


欧米の作品変遷

それでは、欧米作品における男性同士の関係性の描き方の変遷について、年表形式で振り返って行きましょう!


2000~2010年

2000年初期、欧米では数多くのブロマンス作品が制作され、ファンの間で大きな話題となりました。

代表的な作品としては、超常現象の調査を行い悪魔やモンスターと闘う『スーパーナチュラル』(2006〜)や、「シャーロック・ホームズ」を現代風にアレンジし、2人のバディが事件を解決していく『Sherlock/シャーロック』(2010〜)などが挙げられます。

スーパーナチュラル(2006〜)
Sherlock/シャーロック(2010〜)

この時代の特徴は、「2人の関係性を匂わせるバディもの」である点です。

物語の主軸はあくまでミステリーや冒険であり、恋愛が前面に描かれることはありません。
しかしその一方で、距離の近さや強い感情的結びつき、意味深なセリフや演出によって、「ただのバディではない」と感じさせる要素が随所に散りばめられています。
こうした作品に対して、ファンは二次創作やカップリング(shipping)という形で関係性を拡張し、共有していきました。

2000年代初期の欧米は、恋愛を主題としないブロマンス作品が主流であったと言えるでしょう。


2010~2015年

2010年代に入ると、バディといった関係性から、さらに一歩踏み込んだ描写が見られるようになります。

それを象徴するのが、FBIを舞台にした事件解決ドラマ『ハンニバル』(2013〜2015)です。本作の特徴は、「事件解決だけでなく2人の関係性にもフォーカスが当てられている点」にあります。シーズン1・2では従来通り、事件解決が物語の主軸となっていますが、シーズン3以降は「2人の関係性そのもの」に焦点が当てられていきます。

ハンニバル(2013〜2015)

ただし、その関係はあくまでプラトニックに描かれており、肉体的な関係は明示されていません。

男性同士の親密な信頼関係に焦点が当たり始めた、まさに”転換点”の時代だったのですね!


2015~2020年

こうして欧米でブロマンス作品が浸透していく中、ついに「男性同士の恋愛を主題とした作品」が登場します!!

代表的な作品として挙げられるのが、北イタリアを舞台にひと夏の激しく切ない恋を描いた映画『君の名前で僕を呼んで(原題:Call Me by Your Name)』(2017)です。
繊細な演技と美しい映像が高く評価され、第90回アカデミー賞では脚色賞を受賞しました。

君の名前で僕を呼んで(原題:Call Me by Your Name)(2017)

さらに2018年には、ヨーロッパを中心に爆発的な人気を博したドラマ『SKAM FRANCE(スカム・フランス)』が制作されます。高校生たちのリアルな日常と恋愛を描いた本作は、多くの視聴者の共感を集めました。

SKAM FRANCE(スカム・フランス)(2018)

このように、2015~2020年は、「男性同士の恋愛を主題とした作品」が増加した時代と言えそうです。

ただし重要なのは、これらが日本で親しまれているエンタメとしての『BL』というよりは、むしろ『クィア表象(当事者の物語)』の文脈で描かれていたという点です。「ブロマンスとして関係性を匂わせる段階」から「男性同士の恋愛を描く段階」に移行していたように思えます。


2020~2024年

2020年から欧米圏の映像BLは新たなフェーズに…!BLがより一般層に向けた恋愛エンタメ作品として描かれるようになりました

代表的な作品としては、男子高校生同士の恋と成長を描いた王道学園ドラマ『HEARTSTOPPER(ハートストッパー)』(2022)や、アメリカ大統領の息子とイギリス王子の恋愛を描いた『赤と白とロイヤルブルー』(2023)が挙げられます。

HEARTSTOPPER(ハートストッパー)(2022)
赤と白とロイヤルブルー(2023)

この時代の特徴は、一般的な恋愛ドラマやラブコメと同じ構造で作られている点です。

これまでのように、「特別なテーマとしての同性愛」ではなく、「数ある恋愛の1つ」として描かれ、BLはより広い層に受け入れられるようになりました。つまり、この時代は”エンタメとしての確立期”だといえるでしょう。


2025年~現在

エンタメとして広く楽しまれるようになった、BL作品。

その流れを象徴するのが、2025年に制作されたホッケー選手同士の恋愛を描いたドラマ『Heated Rivalry(ヒーテッド・ライバルリー)』です。本作は欧米圏を中心に大きな話題を呼び、これまでBL作品に触れてこなかった層にも届くなど、幅広い支持を集めました。

Heated Rivalry(ヒーテッド・ライバルリー)(2025)

こうしたヒットを背景に、オタク女性に限られていた「shipping(カップリングとして関係性を楽しむ視点)」が、一般層にも広まりつつあります

さらに近年では、俳優同士の関係性を強調したドラマのプロモーションなど、BL的な楽しみ方を前提としたマーケティングも増加しています。

BLがより一般化し、男性同士の恋愛をエンタメとして楽しむ文化が急速に拡大した、まさに”拡大期”といえる時代ですね!


まとめ

いかがでしたか?今回は「欧米の映像コンテンツ」に注目し、ファン文化や、海外作品における男性同士の関係性の描かれ方、そしてそれを受け取るファンのあり方の変化について振り返ってきました。

かつては二次創作を中心に楽しまれていた関係性は、作品の中で描かれるようになり、やがてエンタメとして広く受け入れられる存在へと変化しています。こうした流れを背景に、欧米圏のBLコンテンツは今まさに新たなフェーズに突入していると言えるでしょう。

昨今の「BLブーム」が今後どのように広がっていくのか―――今後の動きにも引き続き注目ですね!


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