株式投資の社会的意義---ESGとインパクト評価-2
「フルタイム」パートタイマー vs. 「バグ」人間 34
ESG投資とは
「うちは、環境や社会にすごく配慮してますよ。年に1回有志で集まって本社ビル周辺のゴミ拾いをやります。社外取締役には女性もいます。元局アナの有名タレントです!」
「E・S・Gがちゃんとそろってますね!」でESG投資が成立!
大げさにいうと、10年前はこのようなお門違いなアピールも平然とありました。
■現在はサステナビリティ情報の開示が義務に
実際、上場企業の「サステナビリティ経営の情報開示」はとても大変な作業です。
専任チームを複数置くことになった企業の話もよく耳にします。
また、証券アナリスト等はAIで大量の開示資料を読むため、「AIに正しく読みとらせること」を考慮して資料を作成するのが必須となっています。
そして、有価証券報告書による開示は、金融庁により法的に義務付けられました。
2023年3月期〜:すべての上場企業が義務化されました。
2027年3月期〜:*SSBJ(国際基準)の開示が、プライム市場などの時価総額の大きい企業順に段階的に義務付けられました。
ESG分野は「金融庁」「経済産業省」「環境省」の3つが密に連携してガイドラインを作成しています。おおまかな分担は以下の通り。
金融庁:お金の流れと投資家への情報開示。企業が正しいESGデータを開示しているか取り締まる
経済産業省:企業の競争力向上やイノベーションを担当。企業がESGを推進しながら利益を出せるよう、実践ガイドラインや補助金・税制優遇などを整える
環境省:科学的な環境保全や生物多様性を担当。CO2排出量の計算方法のベース作成、グリーンボンド(環境債)の技術的基準を監修
私は投資関連の会社で働くまで、金融庁が経産省の中にあると信じていました。(いつも連名で名前が出てくるし)でも、まちがいでした。金融庁は「内閣府の外局」で、別の行政機関でした。
■情報開示と「裏のドラマ」
自社工場を持つ製造業なら、環境対策やサプライチェーンの取り組みをドラマチックに開示しやすいでしょう。
一方、鉄道のように
「エコ?これ以上どうやって?」
のような、一見「ESG地味系」業種もあります。
工場も機械も持たないIT企業や金融業は、環境負荷なんて「事務所の電気代だけでは?」と思えます。
でも実際は激しいESGドラマの渦中にあります。
IT企業:データセンター等の「電力爆食」、ソフトウエア開発のための過酷な労働環境の改善
銀行:融資先の製造業や電力会社に対し、CO2削減を強く働きかける
銀行はああみえて、実は非常に激しいドラマがあります。
融資先の企業に向かって
「二酸化炭素減らさないと、今後のお金の出し方を考えますよ」ということです。
「倍返し」越えの、地獄絵図か大転換劇か。
一方で、鉄道や不動産会社(賃料収益がメイン)のようなESG地味系企業が、ESG開示をサボるとどうなるでしょうか。
・銀行の「リスク案件」とされる
・大手企業との「取引」で不利になる
・モノ言う株主の標的になる
・採用にひびき、社内が高齢化する
緊急の問題はなく普通にビジネスはつづきそうですが、「古臭く」見えて、じわじわ取り残される……という静かなリスクを抱えることになります。
■ESG投資と「インパクト評価**」の違い
「まぎらわしいから一緒にしてくれ」と言いたいけれど、この2つはレイヤーが違います。
ESG(開示義務あり):「社会課題をどのように解決するつもりか」の方針を宣言します。(例:ガバナンスの透明性、CO2削減目標、女性管理職比率など)
インパクト(開示義務なし):ESGを受けて「社会課題をどれだけ解決したか」という結果の測定
このようなイメージ。
「ESG=宣言」
「インパクト=結果発表」
たとえば、とても興味深い例を挙げると
「日本たばこ産業」
ESG開示:・喫煙者減少に伴う葉タバコ農家の転作目標数や助成金制度の設定・分煙環境の整備。
インパクト評価:・契約農家が転作した結果、実際に所得は上がったのか? ・分煙環境が進んだ結果、健康被害は減り、どのような社会的・経済的利益につながったか?
■社会的成果をどう測るか
日本たばこ産業は「たばこ」という商品をどのように考えるかで、投資家のESG投資の対象かどうか別れます。ガバナンスの優秀さは日本を代表する企業です。
ですので、「ESG優良企業」か、「インパクト投資対象」としての評価は一筋縄ではいきません。
一方で、例えば、このような業種の企業があるとします。
・障がい者雇用支援事業
・途上国向けマイクロファイナンス
・地方医療サービス
こうした事業は、社会的インパクトは非常に大ですが、ビジネスの構造上、
・小規模
・利益率が低い
・ガバナンスが(まだ)未熟
になりがちです。
従来のESG評価機関からは高評価は受けにくいです。
■高度化する企業の社会課題解決の評価
「企業の社会課題解決をいかに正しく評価するか」
これは、いま非常に高度化している領域なのです。
■株式投資の意義とは
以前、証券会社で、
「この業界に社会的意義を全く感じたことはない」
と言って、辞めていった若い人がいました。
株の売買について、このような虚しさを抱く人は多いのではないかと私も思います。
一日一日で考えると空しいかもしれません。
普通に会社でで働く人たちは、自分の会社が上場していようと、「今日の株価」など全く考えずに働いています。そうやって現場で働く人たちが、日々の仕事をまっとうして、社会が回っています。
ただし、長期的な視点では、社会に必要なお金は月々のお給料だけではないです。
毎日、株式の活発な取引があって、何十年も、途切れず毎日売買があって、それでやっと年金が成り立つのです。
……とはいえ、若い人からみたら、ただ空しく感じても無理はないですね。
source*: https://www.ssb-j.jp/
source**: https://thegiin.org/
