アレガ、デネブ、アルタイル、ベガについて考えてみた
夜空を見上げた。
星が見えた。明るい星が三つあった。たぶん夏の大三角だと思った。たぶん、というのは確信がないからだ。理科で習った。アレガ、デネブ、アルタイル、ベガ、と先生が言った。あの授業以来、夏の夜に明るい星を見るたびに、アレガ、デネブ、アルタイル、ベガ、と思う。正確に覚えているかどうかは知らない。
知らないまま、三十年以上経った。
調べればわかる。スマホを出せば十秒でわかる。でも調べたことがない。アレガ、デネブ、アルタイル、ベガ、という呪文みたいなリズムが好きで、正確な答えを入れるとそれが壊れる気がする。だから調べない。
間違ったままの方が、いいことがある。
そういうことが、五十を過ぎると増えてきた。正確じゃなくていいものが、思いのほか多い。若い頃は何でも調べた。何でも確かめた。正しくないと気が済まなかった。今は少し違う。間違ったまま持ち歩いているものが、いくつかある。アレガ、デネブ、アルタイル、ベガもその一つだ。
星は相変わらず明るかった。
俺が正確に覚えていようといまいと、あの距離からは関係ない話だろう。
スマホをポケットに入れたまま、家に帰った。
