見出し画像

幼馴染の家|第十五話「続最大の問題」



一級建築士、700棟引渡。
800フォロワーのぱにがれです。

土曜連載中の「幼馴染の家」。
続きを描きました。


床鳴りが解決した。

あれだけ悩まされた床鳴りだったが、床の上から頭の小さいビスを打ち、専門業者にビス頭を補修してもらったことで、音は完全に止まった。

私は、ほっとしていた。

これで一段落。

そう思っていた。

それから、しばらく経った。

床鳴りのことも、少しずつ忘れかけていた。

そんなある日。

カスタマーセンターから連絡が入った。

「給湯器からエラーが出ています。」

カスタマーセンターは、すぐにメーカーを手配した。

メーカーが現地を確認する。

しかし、

原因が分からない。

嫌な予感がした。

給湯器そのものが原因ではない。

では、何が原因なのか。

私は現場へ向かった。

そして確認する。

原因が判明した。

不凍液が減っている。

その瞬間、

嫌な予感が現実になった。

頭をよぎったのは、先日の床鳴り。

床鳴りを直すために打ったビス。

その下には床暖房の配管がある。

まさか。

いや、

考えたくはなかった。

しかし可能性として、

「床鳴りの是正で打ったビスが、床暖房のチューブを傷つけ、不凍液が漏れているのではないか。」

という疑いが出てきた。

これが、

恐怖の創造だった。

まだ原因が確定したわけではない。

それでも、頭の中では最悪のシナリオが出来上がっていく。

そして、調査の結果。

その恐怖は現実になった。

不凍液が漏れた原因は、床鳴りを直すために打ったビスだった。

私は幼馴染に説明した。

すると、

「しっかりやってくれ。」

そう言った。

短い言葉だった。

でも、私は分かっていた。

こいつは昔から同じだった。

納得できないことは曖昧にしない。

やるなら、

しっかりやれ。

それだけだ。

私は覚悟を決めた。

ここからは、

最大限の筋を通す。


もう私一人で解決する話ではない。

原因は会社側の施工にある。

会社として対応すべき案件だ。覚悟を決めた。

私は上司に相談した。

そして、説明には同席してもらうことにした。

私一人で処理するのは筋違いだ。

会社として正面から対応する。

説明の日。

私は上司と一緒に幼馴染の家へ向かった。

そして説明した。

リビング全面張り替え。

床暖房パネルも交換。

当然、その間は生活できない。

幼馴染一家にはホテルなどで仮住まいをしてもらう。

そこで幼馴染から質問が出た。

「不凍液って、毒なんだよね?」

「子供も小さいよね。」

そして、

「床暖房を直せば、それで済むの?床全体に毒が回っている可能性があるだろ」

さらに、

「フローリングはリビングとダイニングで色が変わるよね。」

確かにそうだ。

一年使った床と、新しく張り替えた床。

同じ商品でも色は変わる。

リビングだけ張り替えれば、ダイニングとの境目が出る。

幼馴染は、

「しっかり頼む。」

と言った。

私は、その意味を理解していた。

つまり、

リビングだけではなく、

ダイニングも含めて直せ。

ということだ。

フローリングだけを張り替えれば済む話ではなかった。

この家は、断熱材が一体となった床下地パネルの上に床暖房パネルを施工し、その上にフローリングを仕上げている。

床下地パネルと床暖房パネルは別物である。

つまり今回、

フローリングを剥がす。

床暖房パネルを撤去する。

さらに、その下の床下地パネルまで解体する。

つまり、

一階の床そのものを一度解体する。

ダイニング・キッチンを含む、一階の約7割。

床下地パネルから解体し、

床暖房パネルも交換し、

フローリングまでやり直すことが決まった。

完成から一年。

あれほどこだわってつくった家の一階を、

今度は一度壊す。

そして工事中、

幼馴染一家はホテルで生活する。

その費用は、

会社が負担する。

私は、

「ここまでやるのか。」

とは思わなかった。この時は。

原因をつくったのは、

こちらだからだ。

やるしかない。

次回は工事編。
そして、オーナーとの人間関係か崩れていく。


いいなと思ったら応援しよう!

700棟|現場監督|一級建築士|ぱにがれ 現場は、正解が見えにくい判断の連続です。 この記録が、どこかの現場で 「一度立ち止まる材料」になれば幸いです。 応援としてチップをいただけると、続ける力になります。