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来年の黄変は、しまう前の10分で決まっている

夏物をしまう前に知っておきたい、汗と虫と湿気の理屈

汗に含まれる塩分やアミノ酸は、無色のまま繊維に残り、それが酸化して、半年かけて茶色く育つ。来年の夏に取り出したときの、あの見覚えのない黄ばみの正体はこれ。

つまり黄変は、来年起きる事故ではありません。しまう前の判断で、すでにほとんど決まっています。

無色の汗が、半年で茶色に育つまで

厄介なのは、しまう時点では何も見えないことです。洗って干して、きれいになったと思って畳む。その中に残留物があるかどうかを、目で確かめる方法がない。

だから多くの人が「洗ってしまえば大丈夫」で止まります。私も長いことそうでした。実際には、洗ったかどうかではなく、何の汚れをどう落としたかが分かれ目になります。

そして残った汗は、黄変だけを起こすのではありません。このあと出てくる虫の話にも、同じ汚れが関わってきます。夏物の保管は、汗という一点から全部つながっています。

ドライに出したのに黄変する理由

クリーニングに出したのに翌年黄ばんでいた、という経験はないでしょうか。これには理屈があります。

ドライクリーニングは油性の汚れを落とす処理です。皮脂やメイクの汚れには強い。一方、汗は水溶性です。油性溶剤の中では、水に溶ける汚れは基本的に落ちません。

だから、ドライに出した服がきれいに見えるのに、汗の成分だけが繊維に残る。それが半年かけて色に変わる。

対処法は、店で言葉にできるかどうかです。

  • 汗をかいた一着は、汗抜き(ウェットクリーニング)を頼めるか聞いてみる

  • 脇、襟、背中など、汗が集中した箇所を具体的に伝える

  • 見た目にシミがないから大丈夫、とは考えない

「クリーニングに出す」ではなく「この汗をどう落とすか」。ここまで解像度を上げると、頼み方が変わります。

虫が食うのはウールだけではない

防虫の話になると、ウールやシルクだけを警戒しがちです。獣毛やシルクが食害を受けやすいのは確かで、ヒメマルカツオブシムシの幼虫などがそれにあたります。成虫は無害なので、飛んでいるのを見て安心してしまうのも誤解のもとです。

ただ、綿や麻、化学繊維が無傷というわけでもありません。虫種や条件によって差はあるとされますが、皮脂汚れが付いた部分を入口に食われることがあると言われます。

つまり、素材そのものではなく、そこに残った汚れが呼ぶ。

  • ウール、シルク:素材自体が狙われる。最優先で防虫

  • 綿、麻、化繊:汚れを残さないことが最大の防虫

夏物こそ汗と皮脂を吸っています。「夏物だから虫は関係ない」は成り立ちません。

置き場所と袋、今日直せること

道具の使い方には、今日中に直せるものがあります。

防虫剤の成分は気体になって効きますが、その気体は下に降りていきます。引き出しの底に沈めても、衣類の上まで届きません。衣類の上に置く。これだけで効き方が変わります。

もうひとつ、クリーニングから戻ってきた透明なポリ袋。あれは運搬時の保護具であって、保管の道具ではありません。湿気と溶剤のガスを内側に閉じ込めてしまうので、家に着いたら外します。

  • 防虫剤は衣類の上に

  • パラジクロロベンゼンなど、種類の違う防虫剤を混ぜて使わない(溶けやシミの恐れ)

  • クリーニングのポリ袋は外す

  • 除湿剤は飽和すると逆に湿気源になり得るので、入れっぱなしにしない

親切そうに見えるものが、閉じた箱の中では逆に働く。保管とは、逃げ道を作る作業です。

畳みジワが、来年の破れ目になる

最後に麻と綿の折り方です。強い圧力が同じ折り目にかかり続けると、繊維が疲労して変色したり切れやすくなるとされます。劣化の速さは保管環境によりますが、去年の畳みジワの線に沿って弱っていく、という話です。

だから、麻のシャツやジャケットは吊るす。畳むなら、詰め込まず、去年と同じ線で折らない。昔から衣替えのときに虫干し、つまり日陰で風を通す作法が続いてきたのも、閉じた状態を定期的に解くためでした。

次に夏物をしまうとき、一着ずつこう考えてみてください。

  • この汚れは油性か、水溶性か

  • この素材は、虫に狙われるのか、汚れ経由で狙われるのか

  • この湿気は、どこから逃げるのか

三つの問いに答えられれば、その一着をどう寝かせるかは自分で決められます。服の寿命は、着ている時間ではなく、しまわれている時間に決まっているのかもしれません。

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