迎え火オペラ
地面を蹴る。風が服を引き裂く勢いで吹き抜ける。
世界が一直線に伸びていく。
胸が焼けるように苦しい。喉は渇き、肺が悲鳴をあげる。
それでも行くんだ。
横に流れる景色さえ置き去りにし、襲いかかる疲労も誘惑も蹴散らし。
苦しさも燃料に変えて走る。
__闇の底から、火が呼んでいる。
近づくほど、その声は優しくなる
「__もう走らなくていいよ。」
「__もういいよ。」
それでも行くんだ。
ただ前へ。
前へ。
前へ!
__疲労が、凪ぐ。
__口渇が、凪ぐ。
__悲鳴が、凪ぐ。
__足が、凪ぐ。
__視界が、凪ぐ。
__名前が、凪ぐ。
吹き抜けていた風も、凪ぐ。
凪いだ炎は、
凪いだ走者の名を、
もう一つ数えている。
#迎え火オペラ #毎週ショートショートnote
毎週ショートショートnote企画
お題「迎え火オペラ」でした。
本文283文字
作成の裏
この作品、どこがオペラなの?って思われた方へ。
「迎え火オペラ」とお題を見た時、真っ先に浮かんだのがオペラの「魔王」です。
これをベースに書いた物語です。
魔王の物語は、夜の森を父親が幼い息子を抱えて馬で走ってるところから始まります。
ですが、馬ではなく人間が走ってる臨場感をだしたかった。
次に息子は「森の中に魔王がいる」と言います。
でも、父親には見えていません。
魔王は優しく少年を誘います。
段々とその声は恐ろしくなり…
オペラの「魔王」の物語と「迎え火オペラ」を重ねて読むと、「オペラ」が見えてくれると嬉しいなぁ。
なーんて、考えた作品でした。
