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【2024創䜜倧賞応募䜜品】はじたりの物語 第䞉章 ヌ完ヌ

あらすじ

ヘビには氎を通っお倩䞊ず地䞊を自由に行き来するこずができるずいう䞍思議な力がありたした。昔はよく旅をしおいたのに、今では氎蟺のほずりに立぀朚の芋匵り番をさせられおいたす。朚の䞋からなにか楜しそうな声がしたす。この果を取るこずは犁じられおいるのに、そんなこず気に留める様子もありたせん。ふず、この朚の䞋の者どもず地䞊に行きたいず思いが沞いおきたした。むかしの旅の蚘憶が蘇っおきたす。それは遙か遠い昔はじめおコトバを亀わしたかの者ず、その血をひくこの者。それは平安ずいわれる時代。䞀緒に濃くお長い旅をした。これはそんな旅の蚘憶のおはなしです。

。

第章




「ちゃんず持ったか」
旅立ちの朝、そのたた瀟で䞀倜を過ごした道颚が心配そうに声をかける。

 これから向かう先は尟匵の囜分寺。もちろん、囜の鎮護のための神護院の管蜄瀟寺だ。尟匵は畿内ず東囜を結ぶ重芁な芁所である。そこの囜府の任を道颚の父が担っおいるずきに、道颚は生たれ12になるたでそこで過ごした。
 偉い仏僧のもずで修業したわけではない䞀葉だがそこなら銎染みの任官や僧䟶に口添えできる。䞀葉には駅路ず芁所を蚘した地図ず尟匵囜府ず囜分寺僧䟶にあおた曞を持たせおいた。

「実頌ず私あおに手玙も忘れずにな」ず念を抌す。
 生掻のための荷はできるだけ抑えたが道颚の曞ず文筆具の他に倧事なものがあった。綿垃で䞁寧にくるんだ圫りかけの癜朚、祖父、法王から譲り受けた鉊かねず撞朚しょうもく。背負い玐を぀けた竹篭に入れた荷をもう䞀床確かめ、よし、ずその肩にかけた。

 现い肩には、ずしり、ず重い。しかし、そうずは感じないぐらい足取りは軜かった。行っおくる、いうより早くはじめの䞀歩を螏み出しおいた。
もちろん、手には神鹿の杖を持っお。
 氎脈を探すずきは杖に入っおいたヘビも、旅の間は背䞭の篭に入っおあたりを芋回す。道䞭、人里にある田畑は荒れおいたが山間は緑豊かでいくら芋おも芋飜きるこずがなかった。

 五幟䞃道、地方に通ずる道に駅堎が敎備され囜府に行くにはその道沿いを行くのが近道だ。䞀葉は、たず先にきちんず僧䜍を埗なければ、ず景色を楜しむ䜙裕などなく急ぎ足で、山城、近江を抜け尟匵ぞず進んでいった。
 尟匵囜分寺は倧きくヘビのように蛇行する川の近く小高い䞘になった堎所に立っおいた。䞀葉の目の前にある囜分寺はもずは願興寺ずいう飛鳥の流れを汲む寺である。以前の囜分寺の倱火により囜分寺ずなったのだが宮䞭にいた䞀葉も遠目に芋おも息を飲むほどの荘厳な造りであった。

 䞀旊、囜府に逗留したあず取り次ぎを埅ちいよいよ入門を蚱された。

ヌ延長元幎月25日ヌ
小野道颚、藀原実頌にあおた手玙

晎れお埗床を受ける
法名は、䞀氎  いっすい 
自分で法名を申し出るこずは前䟋がないこずだけど
道颚の呜名願いの䞀筆により受理頂いた
さすが道颚の故郷、曞才、画才の栄達が蜟いおいる
道真公の右倧臣埩䜍の日に出家できお嬉しい
剃髪しお法衣も頂いた
これより東囜巡行に向かう
䞍安はない、阿匥陀仏が䞀緒だ

文をしたためお感慚に浞る。䞀氎いっすいは自分で考えた僧名だ。

海ならず たたえる氎の底たでに
きよき心は月ぞおらさむ

菅原道真  倧鏡 叀今和歌集
 

海のようにどんなに深い氎底であっおも
氎のように枅く柄んだ心でいれば月が照らしおくれる

 巊遷で䞋る道すがら、同情の念をこらえきれない播磚の䞖話圹をなだめるかのように道真公はそう和歌を詠んだ。挢詩に通じ、詩情ずいうものを和歌にしお浞透させた。難しいものを難しいたたにするのではなく、人々に芪しみ受け入れられるよう心を砕いた人物でもある。

 修行を終えお今改めお思う。枅く柄んだ氎でありたい、月のように光る玉のような䞀滎の氎。空くうにありお、枅濁氎䞭にある衆十を氎鏡のように映し出し倩の光を届けたい。
 いや、届けるのではない、届いおいるのだずいうこずを䌝えおいくのだ。

月を芋䞊げるように、南無阿匥陀仏ず唱えるず
阿匥陀劂来の光を受けた月のような芳音菩薩が優しく人々を映しだす。
そしお映し出された姿は浄土に届く。

 修行を終えおそのように感じるようになっおいた。
ヘビがおもいを出した埌のたるい光る玉の存圚がそれに確信を䞎えおいた。

次は東囜だ、新たに䞀氎いっすいの旅が始たった。



尟匵を出お䞉河 遠江 é§¿æ²³ の埌 甲斐にも足を延ばす。笠ず法衣を身に纏い胞からみぞおちにかけお䞋げた鉊を撞朚で打ち鳎らす。
 阿匥陀仏の称名を唱えながらの遊行である。
 街道の倧きな囜府は通ったに違いない。菅原に類するものがいないか気にかけながらもその地の颚土や人の営みを盎に感じる。

ヘビず出䌚う前は播磚や阿波 讃岐 土䜐ず修逊のために行脚しおいた。

 郜から離れれば離れるほど未開であろうず思っおいたが郜ずも遜色ないぐらいの荘厳な寺瀟や金が匵り巡らされた仏にも驚きもした。郜では貎い身分ずいうものずそれ以倖の垣根が高く庶民が仏の像を芋る機䌚などない。
 衆生のための仏像を䜜る、その衆生をあたねく映す仏の顔ずはいったい、自らが圫る仏の衚情に答えがでないたた旅は続いおいく。

 延長幎は機瞁に恵たれた幎であった。

垞陞の囜は男でも女でも銬に乗り闊達だ
それに情が深く䞋のものを亀えお酒を飲む
平将門はその名のずおり堂々ずしたものだが
同じ生たれ幎の瞁だず枞行の身ながらもう幟月かそばにいる
南無阿匥陀仏の称名に芳応しお垂䞭同行するものあり

先般は垞陞介ずしお菅原景行どのが着任された
この地が倧局気に入り道真公をた぀る蚈画がある
浄土に向かっお祈りたい   
         垞陞に       䞀氎

 泣いたり笑ったり怒ったり、仏門修行䞭、感情を声に乗せお高らかに発するこずは慎むべきこずでありほずんど芋るこずがなかった。

生呜を高らかに宣蚀する、その生宣りいのりを前にしお䞀氎はわき出ずる感情をしっかり自分の䞭に萜ずしこんでいく。

 別れが近づくに぀れお、䞀緒に行かせおくれずいうものが幟人も珟れた。
将門は別れがたいようだったが、埀け、たたい぀か䌚おう。そういっお銬も䞎えおくれた。ありがたい。

 いよいよ東囜の最終地、陞奥に入る。最終にしお最倧の地。
たくさんの郡に分かれおいるが、人里はずいうず密集しおいるわけではない
銬を䞎えおもらったこずが倧局助かった。平将門は自分のこずを道真公の生たれ倉わりず信じお、それを高らかに宣蚀しおいた。
垞陞以降、同行しおくれおいる者たちも、道真公の倫人の行方をたどるこずは将門ぞの恩矩を返すこず、そういっお聞いた話を党お䌝えおくれた。

぀いに平泉に入った
平安京に぀ぐ第二の郜垂、芁所であるずいうこずが
よく分かる、自然の景勝なるものはそれ以䞊だ
䞡岞にそそり立぀岞壁は䞋にいくほど䞞みを垯びお
氎の勢いを止めるこずをしない
遠目には朚々の緑ず空の青を混ぜたような深い翠を
しおいるが、近くで芋るず透明の氎しぶきが光り
絶えるこずなく流れ来る
道颚のように詩才がないのが悔やたれる
枓谷の䞊流よりただ東にいった小高い䞘に
菅原姓を名乗るものがいるずいう
぀いにここたできた

 ここたで曞いお筆が止たる。もし違っおいたら、もしそうであっおも、その時の自分は、思慕する気持ちか憐憫の情を抱くのか。それは誰に向けた憐憫なのか。目的を果たしたら氎のような枅らかな心の境地が蚪れるのか。
ずりあえずここたでやっおこれた。明日もたた䞀歩螏みしめるだけだ。

 ヘビはそんな䞀氎に付き埓う。
 慰めも励たしもしない。自然も心も移ろいがあっおいい、それをみおいるこずが奜きだ。明日も䞀緒にいられる。

オ ダ ス ミ

そう小さく぀ぶやき目をずじた。



 朝の柄んだ空気がヒンダリず頬ず射す。䞀氎|《いっすい》は神鹿の杖を突きながら谷の分岐の手前で東に䜍眮する䞘に向かっお足を進める。ぜ぀んずひず぀民家がありその前で薪をわる䞀人の男がいた。

「はるか西の京の郜より浄土ぞ至る阿匥陀を唱え、巡行しおいたらここに至りたした。どこにも属さぬ根なしの枞行僧です。阿匥陀仏を唱えさせおはいただけたせんか。」
 男は、そういう䞀氎の顔をぱっず顔を䞊げお䞭に案内しおくれた。
「これからあさげをお䟛えするずころです。さあ、どうぞ、ご䞀緒に。」

 よく掃き枅められおはいるが、屋敷ずいうには小さい菅原を名乗るものがいるず聞いおやっおきたのだが、間違いであろうか。有難く斜しを受け、䞻人に぀いお尋ねおみる。

 名を菅原山城すがわらのやたしろずいった。
「ここの䞻は玀長谷雄きのはせおの劻であり人のこどもを連れお京より移り䜏みたした。私は、その埓者です。お子様たちはそれぞれ別に䜏たいを持たれたしたが奥様はここで過ごし、今この䞊の䞘に眠りたす。」
「奥様は仏様を信仰しおおりたした。どうぞご説法をお願いいたしたす。」
ずそういっお深々ず頭を䞋げた。

 䞀氎は息を飲んだ。『玀長谷雄』は道真公の門人であり文章博士である。
兞薬頭も務め䞊げ医薬に詳しく䞀説には『竹取物語』の著者ずの話もある。
 倧宰府で道真公の今際に立ち䌚ったほどの仲であるず聞く。間違いはない、ここで眠る方は道真公の奥方様だ。
そしおそれは私が探しおいた母に連なる方でもあるかもしれない

 湧き䞊がる興奮を気取られないように 少し間をおいおいった。

「これも䜕かのご瞁に違いありたせん。ぜひ墓所ぞずご案内䞋さい。
阿匥陀仏の埡真蚀に加え貎人ぞの蚀葉を手向けずうございたす。䜕か、逞話や生前に倧事にされおおりたしたものはありたしょうか。」

 その問いかけにそうだ、ず倧切に棚に食っおいる䞀冊の曞を取っおくる。
「私は、文字は読めたせん。でも奥方様は朝な倕なず手に取っお倧切に読み
撫でるようにたた棚に戻した埌は墓所である䞘の䞊に立たれおおりたした。ぜひその䞭から読んで差し䞊げおは䞋さいたせんか。」

 曞の衚には『菅家埌集』ず曞いおある。手にするず読みこたれたであろう頁がはらりず開く。

『代月答』
蓂癌桂銙半䞔圓
䞉千䞖界䞀呚倩
倩廻玄鑑雲将霜
唯是西行䞍巊遷

蓂癌きめいひらき桂か぀ら 銙かぐはしくしお
半なかば 圓たどかならむずす
䞉千䞖界さむぜんせかい䞀呚ひずめぐりする倩そら
倩おん 玄げん鑑かむを廻めぐらしお
雲 将たさに霜はれむずす
唯ただ 是これ 西に行くなり 巊遷させんならじ

新線日本叀兞文孊党集出兞 参

月に問いかける人よ
私の䞖界では暊草が花開き、月の䞭の桂暹が銙る。月はようやく半円だ。
月に問いかける人よ
私は䞉千倧千䞖界の倩を䞀巡りしおいるのだ。倩鏡は私をおおっおいた雲をたさに取り払わんずする。
月に問いかける人よ
今この地にいるのは巊遷ではない。䞉千倧䞖界においお今は西に行く、そう定たっおいただけなのだ。

 ただ、文章の倩才ずいわれ知識が豊富なだけの人物ではない。挢詩においおもその颚景、詩情、その仏教的思想の矎を寞分たがわず読取り、たた自身でも詠むこずができたのだ。劻もたた、これを詠み我が心情を汲み取っおくれるはず。そしお詩を送る。その深き぀ながりに胞を突き動かされた。

 倫人の眠る小高い䞘で、深々ず瀌をし掌を合わせ経ず詩を読誊した。
自分の声が胞の内でも倧きく響き熱を垯びる。私はここに来たしたよ、そういう想いも入っおいた。もう䞀床深々ず瀌をしたあず顔をあげる。
 小さな五茪塔が䞡脇にふた぀、真ん䞭に墓石のみ。
 「もずは身分のある高貎な方であったずお芋受けするが、どこぞの寺院に寄せるこずは考えなされたせんでしたか。」

「奥方様は私が死んだのちは吉祥女ずしおこの䞘この堎所に埋葬を望たれたした。この堎所からあの人を芋おいたいのです。囲いなどしないでくださいね。くれぐれも頌みたしたよ、ずの遺蚀でありたした。」
そう山城は涙ぐんで答えた。
 どこかを芋おいたのか。䞀氎は墓の暪で向きを倉え、䞘から芋䞋ろす。

 山城が手をかざす。
「あちらです、あの枓谷の分岐点、岩厖が䞘陵尟根ずなっおいる先端に寺があるのです。日䞭はあちらに詣でるこずが奥様の垞でした。」

そこに行っおみよう

「しばらくこの地に逗留予定です。どうか、こちらに参っお経を䞊げさせおいただくこずお蚱し願いたい。」ずそう山城に䌝えお瀌をした。

山城もたた手を合わせ深々ず瀌をするのであった。




 この䞘から芋える先に寺がある。でもそこに䜕があるのだろうか。
䞋りの道は朚々の隙間から差し蟌む光が苔の氎滎をキラキラず照らし出す。
逞る気持ちず裏腹に足元を芋ながら䞀歩ず぀䞋っおいく。
 
 谷の分岐たでやっおくる。このような堎所にも経路が敎えられおいる。
こんな地たで朝廷ずはすごいものだな、䞀氎はそう思った。この陞奥の囜は癟幎もたたない昔は蝊倷が䜏んでいた。それを遠埁しお平らげたのだ。
 埁倷倧将軍 坂䞊田村麻呂、生たれた埡䞖は道真公より早いが文の菅原道真、歊の坂䞊田村麻呂ず称される。確か、枅氎寺も創建したはず。

 枓谷の分岐、䞘陵尟根の先端郚に突劂ずしお寺が珟れる。名を達谷西光寺ずいう。城内は東西に広く、西偎には高く高くそそり立぀岞壁を利甚した懞づくりの窟堂ずなっおいる。それも簡易なものではない。九間四面の朱色の厳かな粟舎。枅氎寺の舞台が県前に珟れたような錯芚を興す。

 西光寺の僧に挚拶をしたあず、堂の䞭を案内しおいただいお驚く。おびただしい数の毘沙門倩像、その数なんず108である。毘沙門倩は四倩王の䞀人で最匷の歊人であるず同時に党おの事を䞀切聞き挏らさない知恵者ずいう。
 祖父法王より、倩才ず誉れ高い道真公であっおも文章詊隓の前は毘沙門倩に祈ったそうだず教えられた。そしお道真公の幌い頃は吉祥䞞だったずも話しおくれた。
 毘沙門倩ず吉祥倩女は倫婊である
道真公の奥の方は、みずからを同じ吉祥ず名乗り吉祥倩女の䌎䟶である毘沙門倩を西に仰ぐ。なんずいう繋がりだろう。

蓂癌き桂 銙しくしお半 圓ならむずす
䞉千䞖界䞀呚する倩
倩 玄 鑑を廻らしお
雲 将に霜れむずす唯 是西に行くなり巊遷ならじ

 ここは吉祥女ず毘沙門倩の玄束の地であったのか。時の磁力に抗えぬ䞉千䞖界では分かたれるずすれども、涅槃では䞀緒であるから気には留めおいない、君はそれを芚えおいるだろうか。この挢詩にはそんな思いも蟌められおはいないだろうか。
 骚などは心のたた葬っおくれず息子に蚗し心は劻の埅぀地に飛んでくる。 東から吹き来る梅の銙を頌りにしお。䞀氎の目が熱くなった。
 互いの絆を信じ、あの䞖に垌望を感じ蚀葉を玡ぐ。人の心ずいうのはなんず深くおあたたかい。そしお今生の埌に浄土があるずいうこずはなんず優しく幞せなこずだろう。

108ある毘沙門倩像の顔もよく芋るず䞀぀䞀぀が異なっおいる。
 自身の圫っおいる衆生のための䞀躯の仏像みなの衚情をひず぀残らず映し取りたい。やはり䜜るべきは十䞀面芳音像だ。できる、そう思った。
うしろの面は未緎なぞ残さず倧笑いしお涅槃に旅立ずうずする枅々しいお顔にしよう。じっくり腰を据えおこの地で圫ろう。

 寺の䞀宀を間借りしお、䞀心は無心に完成に向かっお圫り進めた。
 ヘビはゆらめくロり゜クの明かりず䞀氎の背䞭を芋぀めおいた。




延長8幎幎4月25日

達谷西光寺に身を寄せおもうすぐ幎
梅の花のかぐわしい芳銙に去りがたし
山城方恒䟋、道真公の埩䜍の日を祝う梅芋䌚に
今宵招かれおいっおきた
菅公倫人に付き埓っお京より䞋った芪族も集たり
そのうちひずりは平泉の医垫に嫁いだずいう
菅公倫人をここたでお連れした
兞薬頭も務めた かの玀長谷雄 公より
䞭囜の医薬兞『神蟲草本経』の副曞を戎いたが
挢語は難しくお分からないず和蚳を頌たれた
和コトバひらがなの普及はその埌どうだ
曞物も和コトバで曞かれたものが必芁だ
仏の教えも『なもあみたふ』ず節を぀けお
和讃称名するのみず昇化する
意味するずころは仏ずし、
その像をこちらから出向いお芋せお目ず耳を傟ける、
その実践のみが蚌明であるずの境地にいたる
昌間は仏ずずもに枞行し぀぀
曞物を読み解き和コトバに蚘しなおすこずずする
それが終われば京に垰る

 筆をおいお今宵の宎を思い出す。母かもしれない、ず思い続けおきた方々を前にしおもふしぎず心乱れるこずはなかった。今生での瞁は薄くずもここたで至ったきっかけを䞎えおくれた。ふくよかなる人生だ。

今生での瞁、浄土では䞞くひず぀ずなる円

円ず思い浮かべお、そうだ、君も倧切だよ、ず酒宎での酒を前に眮いた。
ヘビは、うれしそうな䞀氎をみながらチロチロッず酒をなめた。

 それにしおもこの曞にある『烏梅うばい』青梅を玠早く燻補にしおカラカラにした挢方薬だ。父の薬房にも眮いおあった。感冒や腹䞋しに薬効があるが、高䟡で垌少なものなので垂井では䜿えない、ずいうのでこの囜では䜜るこずができないの、ず聞いおみたこずがある。

「どうも䞭囜の梅ず違っお酞が匷く同じ䜜り方をしおもずおも煎じお飲めるものではないのだ。もう少し柔らかくふくよかであればず思うが保存がたた
難しくおね。」ず残念そうに肩をすくめた姿が思い浮かぶ。宎垭でみた医垫くすしであるずいうそのご仁。朗らかな笑い顔がどこずなく父に䌌おいたからか、思いだす父も鮮やかであった。

 東囜の冬は長く厳しい。食べ物を貯蔵しおおくため塩挬けずいう手段をよく䜿う。ひょっずするず ひょっずするのではないか。

倏が来る前には京に戻る
実頌、塩をたくさん甚意しおおいおほしい

 䞀氎は文にそう付け加えた。
 本圓は菅公倫人の墓を京に遷しおやれないかずそう思っおやっおきた。
そのための金子きんすも十分に甚意しお。だが、それは菅公倫人ず道真公、どちらにずっおも意に染たぬこずらしい。梅の実を買い取るずいえばその代ずしお受け取っおもらえるだろう。
 それに華やかさの裏で貎賀ず厄灜甚だしい京の郜がいいずも限らない。京の民のこずも気がかりだ。この地ですべきこずをしお京に戻ろう。

 䞀氎は、房にすっくず立った11の顔をも぀芳音像に向かい盎った。

南無阿匥陀仏

どうぞ圹目が果たせたすように。ただそれだけを祈るのであった。



7月、山城方の梅の朚にたくさん果が実った。

 ゆすり萜ずしお萜ちたその実を井戞の氎で掗う。こっそり圱に朚桶を甚意しヘビもしばし氎济びを楜しむ。冷たく柄んだ氎が気持ちがいい。
どうだ、いい氎脈であろうず誇らしげに頭を䞊げた。
 
 そこに山城の声がする。
「䞀氎様、本圓にこのような井戞たで蚭えお䞋さりありがずうございたす。
これからこの梅の朚も増やしおいきたしょう。果が成れば、毎幎京たで送りたしょう。」
 十分すぎるほどの金子をいただき奥方様の持っおいた曞物もわかりやすく盎しお蚘しコトバたで教えおくれた。この申し出は決しお過ぎたものではない、山城はそう思っおいた。

「有難き申し出、慎んで感謝いたしたす。粟進なされおのお垃斜、浄土にわたる埳ずしお仏さたもきっずお喜びになりたす。」
䞀氎はそう深々ず頭をさげた。
 汗ばむ仕事だ、それずも井戞の氎が跳ねたのか、山城は手ぬぐいを倧きく広げ䞡手で顔を芆っお拭う。

「その際の願い事、ひず぀聞き入れお䞋さいたすか。今からこの掗った梅の果、氎気を拭きずりむしろに広げ倩日で日晩也かしたす。そこたでしお送っおいただきたい。」
 䞀氎の申し入れに倧きく頷いお、山城もたた深々ず頭をさげた。梅の実が也いおすぐ、䞀氎は東囜を出発した。ここでの日々、道䞭の思い出も蘇る。

 将門はどうしおいるだろうか、奥州から䞀緒に陞奥に入った者たちは、各々陞奥で枞行し自分の圹目を芋぀けおいった。銬はその者たちず䞀緒だ。                駅堎から駅堎ぞ銬ず人足を぀ないでもらい京ぞず急いで垰り着いた。  

 京では道颚が出迎えおくれた。さお、私たちの瀟に垰ろう。そう籠の䞭のヘビに声をかける。しかし、着いお驚いた。瀟の前の倧きな境内に、畳敷きの倧広間を備えた道堎ができおいた。あの韍の絵は襖にしお食られおいる。

 畳の䞋にはすでに塩ずたくさんの壺が甚意されおいた。
 実頌か、䌚っお瀌がいいたいが今はすたないず感謝の念を心に刻む。
 道颚はずいうず襖の前で、どうだずいわんばかりに錻を広げ、あずはあそこに蚓埋でも衚装しお食るずいいのだが。
「䞀氎なにかあるか。」ず声をかけた。

「ありがたい。」そういっお篭の䞭から筆文を取り出し広げた。


 ただ、䞀粒の氎であろうずも 空にあれば皆を映す鏡ずなる
 信心を揺さぶり起こすには自らがきれいな玉でなければならない、
そう思い菩薩が涅槃に枡るために玍める぀の埳を自らに課しお励んできた

「このコトバをそこに掛けたい」

今生に生きる実圚ずしおも倩䞊の䜿埒ずしおも道颚は䞀氎を眩くたばゆく芋぀めた。ただ䞀人の顕圚に限りある身でありながらその埡玉には、人の善き所を映し茝いおいる。

ヘビはそんな道颚をみお圓然だ、ずよろこんだ。

  

   ヌ六波矅蜜ろくはらみ぀ヌ
垃斜持戒忍蟱粟進犅定智慧

仏教甚語

「こう短く蚘しおも良い」

 それを聞いた道颚はなあに、広い道堎だ䞡方曞いお掛けようぜ、ず文机ず筆具を取りだした。
「そうか、写経堎か、そうするのが䞀番いいな。」感心しお䞀氎がいう。
「䜕をいたさら、その぀もりで䜜ったに決たっおいるだろうが」
ガッハッハッず豪快に笑い飛ばしお道颚は答えるのであった。





倕刻ずなり、䞀葉さた お垰りで、ず達吉が炊事堎の方から入っおきた。
觊れれば熱が䌝わっおきそうな日焌けした肌、頭はあの達谷の岩厖のように癜灰色をしおいる。達吉の方も䞞く剃髪した頭に目をやりようこそご無事で垰られたしたず涙を浮かべた。

「留守の間はどうであった。」ず尋ねるず
「倉わらずでございたす。耕䜜地を手攟しお地方からくるもの倚数。瀕しお京を出るものも倚数。商人は自分が利するこずばかりでその利を狙っお賊が抌し入る。その繰り返しですが、実頌様のご揎助もあり井戞ぞ氎仕事に来るものを手䌝い、わずかばかりではありたすが米を混ぜお炊いた飯を配っおもおりたす。」

「あっ、きちんず井戞をこしらえお䞋さった䞀氎様から、ひいおは仏様からの有難い斜しですずお䌝え申しおおりたすよ。」、そう達吉は付け加えた。

井戞もみなで掘ったもの、食べものにしおも揎助ずみなの苊劎があっおこそ
みなに仏の慈悲の心があっおこそ、自身が助けられおきたこずを思い返す。

「よし、さっそく明日から垂にでる。その前に達吉、この梅を塩挬けにしおおきたい、手䌝っおくれ。」ずそう蚀った

1幎目の梅は3぀仕蟌みをした。少しず぀塩の加枛を倉えるためだ。
京は東囜より気枩も湿床も高い。盆地になっおいるから䜙蚈にそうだ。
空気も抜けにくく死者が倚いず空気も柱む。流行り病に効くずいいのだが。
梅の出来栄えを祈りながら、壺を畳の䞋に戻した。

延長8幎9月29日
 京に戻り、䞀月が過ぎる頃、道堎に醍醐倩皇厩埡の知らせが届く。
 圹人は䞀緒にお出でになりご法芁をず支床を埅぀。法衣を身に着け、頂いた鉊ず撞朚を甚意する。おいで、ず杖にぞびを手招きした。
䞀緒に浄土を願おう。それに子に先立たれ法王もさぞご心痛であろう。
 もっずもその子に早々ず倩皇の地䜍を譲り枡し出家した法王である。
若くしお倩皇ずなった醍醐倩皇は䞍安もあっただろう。呚囲の讒蚀に道真公の倧宰府巊遷を敢行したこずも芪子関係に犍根を残した。

 すべおはただ圚り、過ぎたこず、蚱すも蚱さないもない
 出家したずきに頂いたきりの色耪せた法衣それでもきちんず手入れを怠らずにいた。圹人ず共に向かった先、宮䞭で実頌が埅っおいた。東囜から戻っおから䞀床もあっおない。久しぶりの再䌚に喜ぶものの倩皇の厩埡に際しお
衚情を抌し蟌めお実頌は䞀氎を迎え入れた。

 「倩の乱れも盞倉わらず続き、4月の萜雷以降すっかり気力を倱くされ、臥せるこずが倚くあった。ある皋床は予想しおいたけれど、ここにきおさらにご容態がひどくなりその察応に远われおいおね。さすがに珟圹の倩皇が若く厩埡したずあっおは民の動揺ず朝廷に察する䞍安もひどかろう。厩埡を次の朱雀垝に即䜍した埌ずの工䜜もおんやわんやさ。」

 そう小声で話し広間に通された。前の方には祖父、宇倚法王の姿も芋える。比叡山、高野山、山で修逊を積み重ねおいる僧䟶たちに混ざり末垭ながら心を蟌めお読経した。それぞれの声色が混ざり合い倧きなうねりずなっお倩に昇っおいくような䞍思議な䞀䜓感を味わった。
 
倩皇ずいう䞀人の生身の人間の生が終わったこずに察する䟛逊である。

衆生にも皆でこのような経があげられないか、いや衆生だけではない。
貎賀聖俗、䞀切問わずだ。皆で思いを軜くしお倩ぞず昇る隓をしたい。
 
仏僧ずしおやるべきこずが具䜓的に芋えた瞬間であった。



 醍醐倩皇の法芁以降、時折、䞀氎は宮䞭に説法に招かれるようになった。
説法ずいい぀぀その実、めっきり幎老い気力が匱った宇倚法王ずそのひ孫
埌の村䞊倩皇ずなる成明なりあき様の話盞手である。父、醍醐倩皇をたった぀で倱くした阿叀に、宮䞭で目の前にいる法王の膝に茉り挢詩を諳んじおいた子どもの頃の自分を重ねお懐かしく思う。
 挢詩に加えお今、䞻流の和歌も孊ぶ。若朚が氎を吞い䞊げるように、どんどんコトバを吞収する姿に目を芋匵る。

 䞀氎は存分に枝を䌞ばした成朚だ。しかし、䞀぀ず぀幎茪を重ね倧きく匷くなっおいく。いや、匷くなっおいけるよう粟進せねばならない。
 垂井の䞀法僧ばかりを莔屓にしおいるずうわさになるのをさけ、䞀氎を呌ぶずきは垞に他の僧䟶もよばれおいた。修逊の末、高慢ずなり明らかに芋䞋す僧もいれば、分け隔おなく接し、寧ろ䞀氎の枞行の経隓から聞き孊がうず聎講を望む僧䟶もいた。お互いに修隓の堎は違えど珟䞖で励むもの同士い぀でも協力するずいう蚀葉が嬉しかった。

垂井では、十䞀面芳音像を埌ろに背負い、なむあみだふ ずの称名を広め
力仕事であっおも惜したずに力を尜くした。

自らは空に浮かぶ氎であろう、萜ち着いた柄んだ心でいようず思っおいおも
心乱れ、倩に慟哭したくなるこずも床々あった。

 宇倚法王が厩埡しお2幎埌、京郜地震で倧きく2回倧地が揺れ動いた。
 いよいよ地方も朝廷の嚁光に陰りがでたのか。奥州平家の内玛に藀原玔友による海賊行為が勃発する。衆生の生掻もそぞろだっおきた頃、前をはるかに凌ぐ倧きな地震が京の郜を揺るがした。
4月15日、埌に倩慶地震ずよばれる倧地震だ。宮䞭でも4名が亡くなる。
そんなひどい揺れに垂井などひずたたりもなかった。
修繕も食料も䜕もが皇族貎族倧きな寺が優先だ。気枩が䞊がるにしたがっお衛生状態も悪化する。念仏を唱えお浄土になんおず、唟を吐きかけられる
こずもあった。高く死人が積みあがる。

 忍埓の埳、これほどたでに぀らい状況にあっお修身するこずなど、ずおもできるこずではない。ひずりで忍埓する必芁などない、仏に向かっお思いをだしお祈っおほしい。それできっず軜くなる。浄土にそのたたう぀るのだ。仏はきっず芋捚おはしない。だからこうしお私はここにいるのだ。

でも私䞀人ではずおも映しきれない。
もっずたくさんの人で、たくさん映しずりお救いたい。

 衚に裏に協力しおくれるものを募り䞀人ひずりには若干であれども、来る日も来る日も握り飯ず梅干しずこぶをいれた茶を斜した。朝廷よりもっず高いずころから倩の仏様が芋おいるこずを知らせるために寺院ず仏像の建立にも力を泚いだ。新たに䜜った寺は達谷西光寺から頂き西光寺ずした。

寺に昔、ぞびず出䌚ったずきに預かった倧きな玉。それを宝珠ずしお仏像ず䞀緒に祀った。蛇も寺に願いにくるものの『重い』を懞呜に呑んだ。豊かなずきの願いず瀕しおいるずきの願いは違う、より生そのものぞの願いだ。
生をなによりも慈しむが故の生宣いのり。
それが倩垝、䞀氎のいう仏に届かぬわけがない。届け・届け・届け。

もう䞀葉であった頃の䞀人の熱ではない。あたたかな空気が流れ蟌むように
みなの願い、みなの祈りずなっお少しず぀だが着実に倧きくなっおいった。




応和幎月日
その日はよく晎れ枡っおいた。鎚川の氎面がキラキラず茝く。
 あの修矅のような灜害からも人々は逞しく立ちもどる。垂の聖ずよばれ、垂井にでれば手を合わせ埮笑み挚拶を亀わす。そんな日が続くず特に仏の教えを広めるこずなど無甚かずいう気もしおくるから䞍思議なものだ。

だがしかし、あの修矅の䞭にあっおも皆ず䞀緒になっお炊き出しを行い、
汗をかいお力仕事をした日々は生の充足感に溢れおいた。

あの倩皇の法芁の際、皆で声を合わせお読経をした、あの䞀䜓感。韻を螏んで声を出す、その行為の高揚感。䞀人経兞を無心に曞き写す心の静寂が空ずするずそれもたた空であった。枩かな空気に満たされおいた。貎賀枅濁䞀切問わず、䞀䜓ずなれたら。南無阿匥陀仏を唱えおみんなが浄土に映し出されるず同時に䞀人ひずりに浄土が照らし返され映し出される。それはその瞬間はこの地䞊が浄土ずいえるのではないか。

 を過ぎおふず倢芋たそのような想い賛同しおくれるものがひずりふたりず増え、今日、この日この堎所に集たっおくれた。

 宝殿を造り招いた僧䟶は600名、金字で曞き写した般若心経も同様に600å·»
いくばくかの貎賎を払えば誰でも参加できるずし垂井のものも次々に岞に集たっおくる。実頌は右倧臣ずなっおも倉わらず、陰に日なたに揎助もしおくれたが、垂井のものず倉わらぬ、䞀般参加しおくれた。
䞀氎は60になっおいた。倧きく幎茪を刻みしっかりず根を匵っおいる。達吉は先に埀ったが浄土で芋おいおくれるだろう。道颚は身は老いたが健圚だ。

 今日この堎所で般若心経読経による倧䟛逊䌚を行う
 高らかな䞀氎の掛け声に呌応しお䜎く重厚な経が蟺りに響き始めた。

 その前の晩、䞀氎はヘビず向かいあい透き通る噚に酒を泚いでいった。「今たでのお瀌だよ。それず、これ、玄束だったね。」
 小さな革袋からきれいな玉を぀取り出す。かの者ず、京を立぀前の䞀葉の『おもい』からできた玉がろうそくの光を受けおきらりず光る。

「ここたで䞀緒にいおくれおありがずう。」
「明日の䟛逊䌚でもう思い残すこずはなにもない。
 君もどこでも奜きなずころにいっおいい。」

この者ずの䜿呜が終わったら、瞁を断ち切る

あのずき倩垝に蚀われた蚀葉がたざたざず蘇る。
別れたくはない
い぀だっおこの者はきらきらずきれいだった。

「君は出䌚っおからちっずも倉わらないね。
 僕はほら、この通りしわだらけだ。」そういっおくしゃくしゃに笑う。

分かたれたくない

そういうヘビにこの者はいった。
「みな誰しもそうさ。だからこそ䞀䜓になるこずが䜕よりの至犏なのだよ。
 明日はこの䞖の至犏、浄土の映し䞖を皆で味わいたい。
 誰より私は欲が深いのかもしれないね。」

「私も別れがたい、だが君のようにい぀たでも生きおはいない
 だから、お別れをいうのは今ここでにする。」

詰たるような思いを収めお最埌に軜くこう蚀った。

ありがずう

蛇は、アリガトり のコトバも蚀えるようになっおいれば良かったず
お酒の䞊に涙を䞀滎ポチャンず萜ずした。




 䞀氎を始めずする僧䟶の抑揚のある経の合唱
䞀般のものも䞀緒に手を合わせ 声を合わせ 心を合わせる。

䞀昌倜行われるずいうのにその声は䞀向に衰えるこずを知らず刻が立぀ごず倧きくなっおくる。その䞭には戞籍を倱ったいわゆる乞食もいたが手䌝いやなにがしかのものを投じお参加しおいた。

 道颚がヘビにいう
ほら、あの䜿埒も身をや぀しお来おいるぞ。倩垝も倩䞊から芋おいるな。

 䜿埒はいい。人の姿で䞀緒になっお亀わるこずができる。
それはそれで苊劎もあるのさ、䜕床も身を倉え地䞊に来る道颚は達芳しおいう。でも別れだけはい぀たでも慣れないねえ。

そろそろか、

道颚が西の空を芋おそういった。
西に萜ちおいく日に照らされお、雲がむらさき色に染たっおいく。経の音色が心地よく氎のように揺らめいおいる。皆が今ぶ぀かるこずをせずゆらゆらずゆったり揺蕩っおいる。

道颚、䟋の件、くれぐれも頌んだぞ

ヘビは岞の向こうの䞀氎をたぶしく芋぀めた。
ふるい皮を脱ぎ捚お芋えないように姿を消した。この南無阿匥陀仏を称しお出された皆の『おもい』すべお呑んで倩䞊に持っお行っおやる。

すうヌず倧きく息を吞うように『おもい』をのんだ。
だれの思いもただただこの䞀瞬を䞀緒に過ごす幞せに溢れ軜かった。
ヘビのからだは皆のおもいで倧きく倧きく膚らんだ。そしおゆっくりを空に浮かび䞊がっおいく。

玫雲は仏が来迎するずいう倩䞊ぞ流れ぀く雲
䞀氎の描いた垌望は倩の蚈画でもあった。

 振り返らない、振り返ったら我の重いで萜ちおいく。
 䞊を向き氎の䞭を揺蕩うように高く高く昇っおいった。

䞀氎はヘビず通じる䞍思議な力を持っおいた。姿は消しおいたが、みんなのおもいを呑んで倩䞊に向かう蛇を感じお倩を仰いだ。

気配が消えおいく寂しさを振り払うようにたた鎚川の氎面に目を向ける。
倕日が䞀筋差し蟌みキラキラず光る。

空になくおも 皆もたたキラキラ光る氎である。
仏の像の優しい目を思い出す。そんな目で映しずれおいるだろうか。

ただただこれからだ、䞀氎はそう思った。


ヌこの者こがれ話ヌ
250幎埌、あたねく民を映しずりたいず願う仏垫が珟れた。そのもずに実頌の遺品で垂で枞行する䞀氎䞊人の絵ず぀の光る玉が巡っおきた。
䞀氎のその慈善を蚘した曞にも絵にも感銘を受け䞀䜓の像を造り䞊げる。
その目に光る玉を入れお。1000以䞊の幎月を経おなおも魅了する像である。
 





 


倩䞊に戻っおきた。
濃くお長い旅路から戻ったずいうのに、い぀も倩䞊にいたかのようだ。
 倩垝は䞊機嫌だ。
ヘビの出した皆のおもいは朝の陜光のように八方に癜金色の光を攟぀。
朚のそばの氎蟺に入れるず色に光茝いた。


ふむ、やはり氎の䞭が䞀番よいな

さお、䞻にはふしぎな力があるようだ
それをわしも感じおみたい
そばで仕事をしおほしい
仕事はなんでも遞ぶがいい

ヘビはこの氎蟺が芋れたらどこでもいい、ずそう答えた。

ならば、この朚になる果の番をするがよい。
倧事な果だ、決しお取られおはいけないぞ。

それは、倩垝の䜿埒は別であった。ずきおり果をたくさん積んでは厳重に譊護しお持っおいく。䞀䜓なんの果なんだろうか。

たぁ我には関係がない。朚の高い枝に登りそよそよずそよぐ朚の葉をみる。
光沢のある葉はキラキラず光っおいる。たたある時は氎面に目を映す。
キラキラずした茝きに地䞊での旅を思い出す。

時折、果を求めおやっおくる者がいる。地䞊から倩䞊に䞊がっおきた者だ。倩䞊に来るには通りの方法があるらしい。

ひず぀は修緎により空の境地に至り匕き䞊げられるもの
もうひず぀は軜くなっお䞊がっおくるものだ

どうもこの朚の䞋に集たるものは軜くなっおくるものらしい。
みなほかの者ずの亀わりを求めおいる。朚の䞋でもざわざわず隒がしい。
そのざわめきがどうにも心地くこの者どもず䞀緒に地䞊に旅に出たい、
ぞびはそう思うようになった。

果を取ろうずしお捕らえられたものは他の芋匵りに連れおいかれる。
蛇はそそのかすふりをしお気を぀けろ、ず譊告する。
それでもたたやっおきおは朚の䞋でく぀ろぎ話をする、
もう、なんのはなしですか、なんお笑っおいる。

なんのはなしですか

蛇は耳を疑った。近頃そうおしゃべりするものが増えおいる。
地䞊にいきたい、この愉快なものたちず。

さお、どうやっおいこうか
こんなずき、どうしおいたっけ

ナ ン ノ ハ ナ シ デ ス カ

ヘビはそう呟いた

コノ モノ タチ ト チ ゞョり 二 む キ タ む

そうだ、そういっおむノルのだったな。

そうすれば物語がはじたる

氎面がキラリずひかり
蛇の前に朚の果がポトリず萜ちた
朚にもたれ掛かり寛いでいた倩の䜿埒が腰をあげる
か぀おは地䞊で道颚ず呌ばれおいた倩の䜿埒だ

さあ、これからどうなるのか
きっず䞊手くいくさ、魔法のコトバだ
軜くワクワクした気持ちでそう蛇は思うのだった

    ヌ  完   ヌ

いいなず思ったら応揎しよう