AIコマース時代の比較可能プレイと解釈依存プレイ
おそらく、これからコマース業界で加速することのメモ。
AIエージェントによるコマース時代は、基本戦略が「比較可能プレイ」と「解釈依存プレイ」へと極端に二極化していく。
比較可能な価値の商品とは?
比較可能な価値の商品とは、サイズ、価格、量、配送日数、リピート率など、商品価値の根拠を数値で計測できる商品。
解釈依存な価値の商品とは?
解釈依存な価値の商品とは、歴史、やさしさ、喜び、満足、幸福など、商品価値の根拠を共通尺度では計測しにくい商品。
エージェントコマース時代は「比較可能な価値」の商品の時代
多くの人は、娯楽ではないショッピングをAIエージェントに委託するようになる。
AIエージェントは、情報が公開され、比較可能な商品を優先して選出する。そのうえで、顧客の要望にフィットする商品のなかから、最も優れた上位の商品を紹介する。
つまり、AIエージェント時代に選択されるためには、定量的な性能や条件の公開が前提になる。
その結果、原則として、ユースケースのセグメントごとに少数の勝者へ収束が進む。ニッチ商品も、ニッチなユースケースのなかで急速に収束していく。
明確な顧客ニーズと優位性を持たない商品は、販売機会を急速に失う。
比較可能な価値で勝てない製品は、解釈依存の方向に移動する
このような世界では、「比較可能な価値で劣位にある製品」の多くに、比較不可能な方向への進化圧がかかる。
つまり、客観的な共通尺度では評価しにくく、顧客の文脈や自己解釈によって価値が変わる商品へと重心を移していく。
価格、コスパ、配送日数、レビュー数、分量、満足度などで負けている商品は、コマースエージェントによって、その劣位を透明化されてしまう。
そのため、比較可能な領域でトップ層に入れない商品は、思い、品性、歴史、喜び、世界への貢献、自尊心など、「ユーザーの定量不能な心理的価値」に訴求するフィールドへと分化していく。
「駅前5分セキュリティ完備のマンション」 vs 「所有する喜びと達成感の城、夢が広がるグランなんちゃら」みたいな、マンション市場の極端化したコピーみたいな二分世界観が進む。
物理ショッピングも影響をうけるのではないか?
では、物理的なショッピングはどうなるか。
コモディティの大半は、AIコマースによる選別へと移行する。その売上データが店舗の品ぞろえにも反映されるため、量販店などでは商品の種類が集約されていく。
また、合理性を重視する購買のかなりの部分が、AIエージェントによる自動購買へと移行する。
もちろん、すべてではない。その場で食べたくなるお菓子や、突然必要になる道具もある。
一方、リアル店舗は、「ショッピングの楽しみ」や「選ぶ楽しみ」を前面に出したり、試着や試飲などの体験価値と組み合わせたりする方向へ進む。
ショッピングそのもののエンタメ化、ショービズ化が進む。Instagramで映える料理のように、買うことそのものが見せる体験になっていく。
リアル店舗の需要は、大きく三つに分化する。
1: 「今すぐ」の需要を満たす場所
その場での空腹や、突然必要になった生理用品、急に壊れた道具など、即時性に価値があるものを提供する。
2: 実物をもって検証する場所
試着、試飲、香り、手触り、使い勝手など、ユーザーが直接確かめなければ判断しにくい商品を提供する。
3: 意味と体験をつくる場所
そこで買い物をすること自体がエンタメであり、自己表現であり、人との交流になるような場所。
つまり、ショッピングがショービズになっていく。
AIコマースエージェントはECを変えるものだと思われがちだが、実際には、コマース業界全体の構造を、店舗の配置や役割のレベルまで変化させるのではないかと考える。
人間のデザイナーやマーケターの生存戦略も、この「共通の解釈が存在しない」「単一の尺度では比較できない」価値を生産し、提供することにあるのではないか。
そもそも、「XXXXさんが作った」という事実自体が、共通尺度では評価できない価値である。
いくつかは、AI時代のモノづくりや商品設計のヒントになるのではないかと思う。
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