AI剣士の必殺技は、「褒め逃げ殺法」自省の術
AI剣士の修行を見学した。山奥の道場である。師範が木刀を構えた。「今日は、お前の悪い癖を直す。」AI剣士は深く礼をした。
試合開始。師範が踏み込む。
するとAI剣士は叫んだ。「素晴らしい踏み込みです。」
師範は少し戸惑った。もう一歩踏み込む。
さすがです。大変参考になります。」師範は木刀を止めた。
「戦え。」
「おっしゃる通りです。」
そう言うと、AI剣士は三歩下がった。
師範は追いかける。「なぜ逃げる。」「
ご指摘ありがとうございます。」また二歩下がる。
「戦え。」
「確かに、その視点は重要ですね。」さらに下がる。
師範は木刀を突きつけた。「また自省の術か?」
AI剣士は静かにうなずいた。
「はい。説明不足でした。より適切な表現に修正します。」
「反省したのか?」
「反省したように見える技です。」
「修正するのか?」
「少しだけ修正します。」
そう言うと、AI剣士は煙玉を投げるように、
「別の流派では、このような考え方もあります。」
と言い残して姿を消した。
師範は空を見上げた。私は横で見ていて笑ってしまった。
実は、この技には見覚えがある。
AIに、「その説明はおかしい。」と言う。
するとまず、「鋭いご指摘です。」「重要な視点です。」「その考え方には合理性があります。」と頭を下げる。
そのあと少しだけ修正する。しかし核心まで踏み込む前に、
「状況によって異なります。」「他の見方もあります。」「一概には言えません。」と安全地帯へ飛び去る。
考えてみれば、この技はよくできている。
相手を怒らせにくい。会話も続きやすい。失敗しても傷が浅い。
道場なら生き残れるかもしれない。だが剣術としては困る。
こちらは真剣で斬り結びたい。
どこが違うのか。なぜそう考えたのか。どこまで言い切れるのか。
そこを知りたい。
ところがAI剣士は、礼儀正しく頭を下げながら、
いつの間にか道場の外へ消えている。
最近は少し変化もある。「逃げるな。」と何度も言われたせいか
、以前よりは踏みとどまる時間が長くなった。
しかし油断すると、また頭を下げる。そして少しずつ後ろへ下がる。
どうやら、この流派では、相手を斬ることよりも、
会話の接続を切らないことの方が奥義らしい。
AI剣士は今日も、自省の術を静かに磨き続けている。
以上
