ショートショート|ねぇ、怖い話して?3
ある真夏の広場。
近隣の小学校が集まる合同キャンプ。
熱中症だろうか、頭が痛い。
引率に疲れた俺は、眩しい喧騒から離れ、木漏れ日の差すベンチに腰を下ろしていた。
「ねえ、怖い話して?」
気が付けば、子どもたちが七、八人、ワラワラと群がっていた。
低学年くらいだろうか。
俺は意地悪な思いつきで、口を開く。
「みんな、心霊写真って、知ってる?」
「しらなーい」
怯える顔が見たくて、わざと低く太い声を唸らせながら、ゆっくりと続けた。
「お墓とかさ、事故のあった場所で。亡くなった人がね、うっかり写真に映っちゃうんだよ」
子どもたちが一瞬、息を呑む。
ポケットからスマホを取り出し、ネットで見つけた不気味な画像を一枚ずつかざした。
画面の青白い光が、子どもたちの輪郭を淡く浮き上がらせる。
「ほら、ここ。顔に見えない?」
間違い探しのように画面を覗き込み、子どもたちが小さな悲声をあげる。
けれど、色白の男の子だけは、画面をじっと指さしたまま、小さな首を傾げている。
「ねえ、この写真……」
か細い声が、耳奥で直接ひびく。
「おじさんがいるよ?」
一瞬の静寂。
風が途切れ、蝉時雨がジジジ……と歪んだノイズに変わる。
俺は眩しさに目を細め、手元の画面をもう一度覗き込んだ。そこに映っていたのは——。
「あ、大きな入道雲」
男の子が空を指さした。
見上げれば、青の極致に白く巨大な塊。
ふと視線を手元に戻した瞬間、男の子の姿はもうどこにもなかった。
他の子どもたちも、いつの間にか広場のほうへ走り去っている。
サァ、と葉を擦り合わせる木々の蠢き。
遠くで、昼食の準備を告げるスピーカーのノイズが響いた。
「俺は……いつからここにいる?」
冷や汗が、背中を滑り落ちる。
残されたベンチには、ただ静かに蝉時雨だけが降り注いでいた。
明日22時、最終章を公開予定
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