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ミニチュアみたいな靴を履いていた頃の思い出。あの歩幅とスピードと広げてくる手を守りたかった


家の片付けをしていたら、クローゼットの奥から、子ども達に初めて買った靴が出てきました。すっかり古びてしまっていましたが、ファーストシューズと言われるものです。


歩き始める頃にはけっこう足が大きくなっていて、赤ちゃん用の靴売り場ではなく、キッズコーナーで買ったことを覚えています。


長男は1歳前、次男は1歳過ぎてから、時期は違えどファーストシューズのサイズはたまたま同じでした。


靴って、本人も視界に入るから気になるのかもしれません。小さいながらも靴へのこだわりは大きかったように思います。


ファーストシューズもそれぞれの好みで選んだし、何足か買ってみても結局お気に入りの靴をずっと履いていました。片方落としてしまっても、やっぱり同じ靴がよくて同じものを買いに行ったこともあります。


歩き始めの頃は、まだたどたどしい足どりなのに、靴がやけに立派で、足元だけが大人びて見えました。そのアンバランスな様子が可愛らしく、心に残っています。


おぼつかない足取りなのに、走ると案外速くって、追いかけるのも大変でした。二人とも慎重だったのか、危ないところで急に走り出すことはあまりなかったけど、ずっとご機嫌で歩けるわけでもありませんでした。


さっきまで元気に走り回っていたのに、ちょっと困ったような切ないような真面目な顔をして、こちらに向かって臆することなく手を広げてくる。


抱っこしての合図。


えー今?って思うこともたくさんあったけど、「仕方ないなぁ」って抱き上げる。


ピンとばんざいしたまま、されるがままに持ち上げられて、小さなおしりが腕に乗っかる。同時に足や手を巻き付けてきたり、顔を近づけてきたり。そういえば、靴が腰のあたりに当たっていました。


小さいのに、やたら存在感のある靴。


ギュッとしがみついてきたこと、安心して眠ってしまったこと、それぞれにたくさんの場面があるから全てを覚えてるわけではないのだけれど、当然のように、そこが自分の居場所であると信じて疑わない、その堂々とした佇まいは共通していたように思います。


守りたいと思いました。


いつでも振り返れば、手を広げれば、応えてくれる人がいるのだと、抱っこしてもらえるのだと。その揺るぎない信頼の気持ちを、とにかく守りたかった。


だから、いつも優しくなんてできなかったけど、たくさん抱っこしました。


もう要らないって言われるまで、抱っこしたいと思っていました。


実際には、もう要らないとは言われません。物理的に無理になったり、気がつけば抱っこすることは無くなっていきます。今日で最後にするね、なんて言われるわけじゃないから、本当にいつが最後かなんてわからなかったです。


今、二人が履いている靴の大きさは、初めて履いた靴の約2倍。


いつの間に、こんなに大きくなったんだろう。


抱っこ紐で抱っこしながら靴を脱がせたり、ベビーカーに座らせたまま靴を履かせたり、家や保育園の玄関で、かかとを押さえて履くのを手伝っことやマジックテープを留めたこと、あのミニチュアみたいな靴と共に過ごした時間が懐かしい。


靴を変えれば速く走れるとか、あの子と同じ靴がいいとか、蛍光色や派手なカラーの靴を欲しがることもありました。お下がりの靴を嬉しそうに履いていたり、靴紐が履けるようになったと喜んだり。


もう一度、あの小さかった二人に会いたいなと思います。


小さな靴を履かせる。
手を繋いでトタトタ歩く。
手を広げてきて「だっこ」って言う。
よいしょって抱っこする。


永遠に繰り返されると思っていた時間は有限で、戻ることはできない。広げた小さな手も、「だっこ」って言う甘えたような可愛い声も、もうここにはない。


それでも、離れる時間が増えていく日々の中でも、「振り返ればいてくれる」「話しかければ応えてくれる」その信頼感は、ちゃんと残っているのではないかと思うのです。


履く靴が大きくなるにつれて、抱っこは必要なくなっていくみたいです。抱っこを求めてくれる時間の多くを一緒に過ごすことができて、幸せだったなとあらためて思います。


小さな靴でペタペタとまとわりつくようにして、時には抱っこをせがみながら歩いてたのが、そこからスルリと離れていって、けっこう遠くまで自由に歩いて行けるようになる。


小さな歩幅やスピードに合わせてゆっくり歩いたり、走り出すのを追いかけたり、いつもそばにいて一緒に歩んできたのに、気づけば彼らの方が歩くのが早くなっている。


ファーストシューズは手放すことにしました。最初の歩みを残しておきたかったのだと思うけど、思い出よりも、今の彼らにスペースを空けたいから。


あの小さな足で、あの小さな靴で、歩んできた道の先に今の彼らが歩いている。


靴をどんどん変えながら、歩いてきた道。


守りたい、守らなきゃと必死だったけど、もう過剰に守ろうとしなくてもいいのかもしれない。


自分の歩幅で、自分のペースで、どこまでも歩いていくことができると、今度は私が彼らを信頼していく番なのかもしれない。


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