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久我邦太郎③ ― "開拓狂" エピソード編 (入新井特別出張所) #260

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開拓狂のエピソード

變り者の拙速事業の一つとして、
尚語るに足る事がある。

それは明治三十年頃、
久我の使用人の一人である
既記植定の家が、
新井宿の春日神社の脇の所に有って、
其家から火事を出して丸焼になった。

勿論當時は空地が澤山あったので
ドコへも延焼などなくて済んだが、
久我は親方筋丈に鎮火した頃
見舞に行って、
大勢の者を労ひ、
且つ跡片附を命じたりした最後に、
四、五の親方連に對し
チョクラ己らの家へ来て呉れと、
言ひ残して歸ったので、
其連中も顔見合わせつつ何事かと思ひ、
八景坂の久我方へ行って見ると、
久我は曰く、
『植定の家も案外の出来事で驚いたらう。
 お前もご苦労であったが、
 此儘に捨てても置けず、
 幸ひ山の納屋に材料は幾らでもあるから
 今から総掛りで仕事に掛り、
 明日の夕方迄に十坪(十ニ坪?)の家を
 拵へて、明日の晩は植定の者が
 寝られる様にして遺っておくれ』
と言ひ渡されたのには
何れも聊(いささ)か面喰ったが、

”イヤとも云へず、是非なく、
ソレと斗りに手分けして活動を開始し、
其翌日の夕方までに仕上げた。

未ダ地面にほとぼりのある内に、
建築落成を見た。

其晩ソコデ型計りの落成祝に酒宴を開いて、
四五十人の者がシャンシャンシャンと
締めたと云ふ事である。”

(本文のまま)


なぜ人は邦太郎に惹かれるのか

思い立ったら即行動 
豪快で、
どこか子どものような
無邪気さを持つその姿に、
人々は驚きながらも、
引き寄せられて
いったのかもしれない。


出典 雑誌『武蔵野』三月號 
 (大田区立郷土博物館 学芸員様より提供資料)

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