をは、抱きつけなさそう。
私は夢を見た。
目の前に、巨大なひらがなが並んでいた。
「あ」「い」「う」「え」「お」……
高さは、私の身長の3倍くらいある。
どうやら私は、このひらがなたちに順番に抱きつかなければ、夢から帰れないらしい。
誰が決めたのかは知らない。
夢なので、そのへんは雑だった。
最初のうちは、わりと順調だった。
「の」。
これはいい。
丸い。
抱きつく場所が分かりやすい。
真ん中の穴に体を少し入れれば、かなり安定する。
ひらがな抱きつき選手権があれば、上位に入ると思う。
次は「へ」。
これはダメだった。
近づいた瞬間に分かった。
斜めすぎる。
抱きついても、たぶんそのまま横へ滑っていく。
山の斜面に抱きついているようなものだ。
「い」も困った。
二つある。
どっちに抱きつけばいいんだ。
右に行けば左が気になる。
左に行けば右が寂しそうに見える。
結局、両方に腕を伸ばしたら、ただの準備運動みたいになった。
そんなことを繰り返しながら、私は順番にひらがなを攻略していった。
そして。
最後の方に、そいつはいた。
「を」。

私は足を止めた。
……無理じゃないか。
どこに抱きつけばいい。
上は入り組んでいる。
真ん中には輪っかがある。
下には謎の一本線が勢いよく伸びている。
右から行くのか。
左から行くのか。
正面はどこなんだ。
そもそも、これは抱きつかれることを想定した形なのか。
「の」にはあった安心感が、まったくない。
一歩近づいてみた。
輪っかに腕を通すのか。
いや、抜けなくなりそうだ。
下から行けば、もう抱きつくというより、しがみついている。
私は「を」の前で立ち尽くした。
すると、「を」が言った。
「来ないの?」
しゃべるんだ。
しかも、ちょっと寂しそうだった。
そんな言い方をされたら、行くしかない。
私は覚悟を決めた。
助走をつける。
三歩。
二歩。
一歩。
「を」に向かって、思いきり飛び込んだ。
その瞬間。
目が覚めた。
布団の中で、しばらく天井を見ていた。
なんだったんだ、今の夢は。
枕元のスマホを見る。
エッセイしりとり。
次に私へ回ってきた文字が表示されていた。
「を」
私は画面を見つめた。
なるほど。
だから夢に出てきたのか。
いや。
それにしても。
やっぱり、
をは、抱きつけなさそうだ。
マイキーさんから回ってきた #エッセイしりとり 。
今回のお題は「を」でした。
最初は「をから始まるって、どうしよう……」と思いましたが、今回も楽しく記事を書くことができました😊
マイキーさん、素敵なバトンをありがとうございました!
ただ、今回はここでバトンを止めようと思います。
ここまでつながってきたエッセイしりとりを楽しませていただき、ありがとうございました♪
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