両親は公務員を定年退職したが、私は別の道を行く
公務員の方にお聞きします。
いつ頃から公務員を目指しましたか?
大学とか高校とか、公務員試験を受ける時期から就職先として意識することが多いでしょうか。
私の場合、両親が共に東京都庁の公務員という、公務員家庭で育ちました。
このため、私は物心ついた頃から「公務員」という職業が身近にありました。
公務員という職業は、
・男女で給料の差がない
・女性も定年まで働ける
・学歴差別もない
と、幼いころより母から聞かされていました。
「だから、あなたも公務員になった方がよい」と言われて育てられた感じです。
私は大学2年生から公務員専門の予備校に通いましたが、母は快く予備校費用を出してくれました。
何なら、公務員の申込願書も母がもらってきてくれました(汗)
両親は、共に団塊の世代です。
この世代は、公務員の大量採用があった時代です。
母自ら「入るのは簡単だった」と言っていました。
二人とも高校卒業後、公務員として採用されました。
採用枠は高卒ではありましたが、国家公務員のような「キャリア」「ノンキャリア」という区別はないのが、地方公務員の良さでもあります。
二人とも一貫して税務関係の部署で、定年まで勤めました。
父は仕事の話など全くしませんでしたが、母からは職場の話をよく聞いていました。
母の話があまりにリアルで詳細なので(同僚の中年男性が話す下ネタとか…恥)、自分が一緒に職場にいるような錯覚に陥るくらいでした。
母が語る公務員職場しかイメージできない私は、いつしか、
「自分は公務員にしかなれない」
と思うようになっていました。
私は幼いころから、両親双方に複雑な感情を持っていました。
まだ幼かったので、自分自身、その感情が何なのか、うまく説明できませんでした。
成長して、自分なりに世界が広がってくると、徐々に分かってくることもありました。
アダルトチルドレンの人が感じる「自分の家は、他の家とは少し違う」という感覚も、もちろんありました。
両親とも高卒だから視野が狭い、と言う気は全くありません。
ただ実際のところ、両親は幼い私に「労働には多種多様なものがある」ということを示すことはありませんでした。
在職中は、税務経験だけという非常に狭い世界に身を置き、定年後も地域参加することもなければ、アルバイトやボランティアをすることもありませんでした。
だから、幼いころの私は、「働く」と言えば、イコール母から聞かされる公務員の話でした。
しかも、その「公務員の話」も、職場の噂話ばかりでした。
公務員としての「使命感」とか「やりがい」とか、「全体の奉仕者」としての役割とか、そういう高尚な話を聞くことは一切ありませんでした(汗)
公務員って「公僕」と言われるように、本来は私利私欲を捨て、人の見本になることを求められる職業のはず。
なのに、自分の両親が全くそういう人物に思えないことが、幼いながら非常に違和感があったんです。
公務員の仕事しかイメージできなかったと書きましたが、もちろん、子供の目に触れやすい、
・学校の先生
・バスやタクシーの運転手
・スーパーの定員さん
などの現場仕事は、幼い私でも具体的にイメージできる職業でした。
ただ、そういう仕事は特別な技術だったり、コミュニケーション能力がないと、できない仕事だと思っていました。
今振り返っても、幼い頃のその考えは、あながち間違いではないと思います。
自分の親ができている公務員くらいしか、自分にはできない。
逆に言えば、親ができている仕事だから、自分にもできるはず、という変な自信もありました。
私の頃は親の時代とは違って、就職氷河期に入っていたので、公務員試験も倍率が20倍くらいあり、そのための試験勉強は大変だったけれど。
それでも、受かりさえすれば、何とかなると思っていました。
そんなマインドのまま入職し、29年が経とうとしています。
今年度末で早期退職する私ですが、最近になって、同じく公務員だった両親のことが頭に浮かぶようになりました。
既に父は亡くなり、母とは連絡を断っているので、両親に退職を伝えることはありません。
ただ、自分は、定年まで勤めた両親とは違う道を歩み出したんだ、という思いを強くしています。
もちろん、定年まで勤めたこと自体は「長年お疲れさまでした」と労われるべき事実です。
特に母は、産休のみで育休がなく、定年まで働く女性が少なかった時代に、祖母の協力も得ながらではあったけれど、よく最後まで頑張ったと思います。
ただ、在職中も退職後も公務員世界しか知らない、知ろうともしない「世間知らず」に私はなりたくない。
これまで「自分が公務員であること」自体が親孝行であり、知らず知らず「親の思いを継いでいる」ような感覚が身についていました。
確かに私が公務員になったのは、母の影響です。
ただ、公務員退職が見えてきた今、「親から引き継いだ公務員のタスキ」を捨てる準備をしている日々に、正直なところ、清々した気持ちを感じています。
長らく両親とは距離を取って生活していましたが、これでまた一つ、断ち切れたような気がします。
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