食品工場の防虫工学②|外気接触区域の植物質汚れとニセケバエ類ハエ|資材入出区域の罠|前提条件プログラム日誌⑨
卵を割らなければ、オムレツは作れない
外気接触区域・資材入出区域の内部発生系害虫は「外部侵入系混在」と諦観する前に「仮説」によるローラー作戦型洗浄と検証の計画運用
結論:社内再調査とローラー作戦型洗浄の結果、外気接触区域・資材入出区域のニセケバエ類の大規模発生を「梅雨の季節性」「外部要因」と諦観するのは誤りに繋がる。隠れた微細な植物性汚れを一斉清掃で除去することによって制御することが出来ることを確認した。
ニセケバエ科 Scatopsidaeの生態
ニセケバエ類は日本に6種分布。幼虫は主に腐敗した植物質を餌とする。堆肥、腐った果実、糞尿、腐敗した樹皮下、時にはキノコなどからも発生する。食品製造工場内では、排水溝に滞留した汚泥から発生することが多い。また、油粕や鶏糞の肥料を施した植木鉢からも発生する。
生育期間は餌や温度などの条件によって異なるが、ナガサキニセケバエの場合、25℃条件で、卵期約3日、幼虫期約12日、蛹期約4日で、成虫の寿命は数日間。羽化した成虫は1日後には産卵を開始し、200〜300個産み落とす。
参考文献
林 晃史 『実用ガイド「食」の害虫トラブル対策』(2011年:八坂書房)
前経営体制の社内要員もPCO(環境衛生会社)も「暗黙的に諦観区域」扱いであったが、再調査によるローラー洗浄作戦を策定
わたしたちの工場は地理的に見て背中側には平野川、正面側は商業と居住の隣接区域にあり、ニセケバエ科 Scatopsidaeが好む腐敗した植物質の影響を遮断するのは難しいところであります。旧経営体制における関係者も「半ば諦観」(言葉は悪いですが)の結果がありました。
しかしながらCodexが食品事業者に求める、「学習・改善型」の食品安全文化の組織になるには、全体的な問題を理解としての作業環境・パターン・数値及び現象傾向の文脈を読み解き、コミュニケーションするのが大切になります。属人主義的に「犯人捜し」をするのが非科学的意思決定です。
事務局・品質管理部門は社内再調査をし、入出荷区域に①外部から微細な植物性汚れ(湿った粒子状の土埃)が開閉時に侵入し、②構造物と床面の隙間等で腐葉したものが微粒状態のまま固着(普段の掃き清掃の目視では発見および除去出来ず)、③ニセケバエ科 Scatopsidaeの潜伏源になっている、との仮説を立てました。策定した対策は、ローラー型(全面)洗浄作戦です。
発泡性アルカリ洗剤散布の高圧洗浄➡対象区域の汚れの変化と捕獲数変化の検証サイクルを2回実施…高成果を達成。


発生源が腐葉土・堆肥・植物残渣・排水系・床下など目視で特定困難なケースは「仮説立案 → サンプリング → 区域洗浄 → 区域の汚れ等現象の変化と捕獲数推移で検証」が効果的な探索方法と思います。洗浄前にプラスティックスプーンで構造物隙間にある汚れをサンプリングしたところ湿潤な堆積物の粒が検出され、部門リーダー/TQM推進リーダーとの協議になりました。
画像①②の通り高圧洗浄を実施しましたところ、洗浄で流出した汚れの色は1回目洗浄後が赤茶系の色で、2回目洗浄後:淡い透明な灰色に変化。湿潤系(ニセケバエ科)捕獲数も対前月比推移で1回目洗浄後:77.6%減少、2回目洗浄後:85.0%減少の高成果になりました。
食品害虫制御・防除にも応用可能な「逆説的戦略理論(Paradoxical Logic of Strategy)」の示唆する「失態は学習型になる」
Edward N. Luttwakの理論で照射して、外気接触区域・資材入出区域のニセケバエ科の防除における上記一連の活動を検証しますと同氏の「成功した戦略よりも、失敗しても再構築できる戦略のほうが優れている」(逆説的戦略の理論)の応用性がここにもあることが見えました。
われわれは(恥ずかしながら)同件で諦観した失態があったことが、Codex.の「食品安全文化の組織は、全体的な問題を理解するのに作業環境・パターン・数値及び現象傾向の文脈を読み解き、コミュニケーションをする」の原則に逆説的に繋がり、部門リーダー(TQM推進リーダー)とメンバーを巻き込んだ衛生改善の活動と検証サイクルを形成した、と自省しております。
