今はまだ、想像もできない何かに出会えると信じて
金曜日、無性にナンが食べたかった。
仕事帰りに、カレー屋さんに寄ってみた。
大きいナンがでてきた。大きすぎて、バスケットから大幅にはみ出していた。
圧のある見た目に反して、ホットケーキみたいな甘い匂いがしていた。
パリパリでふわふわで、美味しかった。
美味しくて、次の日も、ナンの味と食感を思い出しては食べたくなった。
今日も食べに行こうかな。
だけど、私は新社会人。初給料は5月末。
そんな頻度で外食していたら、お金がなくなってしまう。
そうだ、自分で作ってみよう。
今までに、ナンを手作りしたことはない。
ナン作りの実績を解除できるいい機会だ。
そう考えて、ナンを作ることに決めた。
まず、強力粉とドライイーストを買いに、スーパーに行った。
300円ちょっとする強力粉をカゴに入れ、惣菜パンコーナーを通ると、128円で2枚入のナンが売っていた。
ちょっとだけモチベーションが下がった。
まあ強力粉があればナン以外のパンも作れるし、となんとか自分を励ました。
家に帰ってレシピを調べると、「フライパンで作れるナン」のレシピがたくさんでてきた。
フライパン?うちにはオーブンがありますけど、と変なプライドを持って、頑なにフライパンで作れるレシピをクリックしなかった。
だけど、どれだけスクロールしてもオーブンで作るレシピは出てこない。
もしかして、オーブンで作らないの?
YouTubeで本場の調理方法を調べたら、でかい釜みたいなのの内側に生地を貼り付けて焼いてた。さすがにそれは持ってない。
大人しくフライパンで作ることにした。
思えばパン自体作るのが初めてで、生地を捏ねる作業の間ずっと、「え、すごいねちゃねちゃなんだけど?」「指についてるやつまとめられなくない?」「生地を叩きつけるって何!?」「そもそも捏ねるってこれで合ってる!?」とずっと不安で、そんな自分がおかしくて、笑いが止まらなかった。
そんな私を見ていた生地もきっと不安だったと思うけど、なんとかまとまってくれた。
ナンの細長い形を作ったあと、生地を指でふにふに押して、たくさんのへこみを作った。
ナン作りにはこんな工程があるんですね。初めて知った。
もしかして、ナンの薄かったり分厚かったり膨らんでたりするあの形は、職人たちがひとつひとつ指で押して意図的に作っていたのか。知らなかった。
というか、あの形がどうやってできているかなんて、考えたこともなかった。
新たな発見。ひとつ、世界の解像度があがった。嬉しい。
こんな発見があるなら、いろんなものを作ってみても楽しそうだな。
ナンを作る前に、店で食べた方が美味しいに決まってるじゃないかと決意を揺らいだり、スーパーのお会計でお金が足りなくて、近くのコンビニまでお金を下ろしに走ったりして、なんで休日にこんな大変なことしなくちゃいけないんだと思ったりしたけど、新たな発見があったし、作ってよかったな。
やってみないと出会えないものって、やっぱりあるんだね。
私はよく、何かを始める前に、やる意味あるのかなとか、他のことに時間使った方がいいんじゃないかとか考えてしまう。
だけど、やってみたら、想像もできなかった何かに出会えることがある。
それが何か、本当にあるのかは出会えるまで分からなくて、不安はあるけどきっとそれで大丈夫。
せっかく芽生えた気持ちを大切に、そして、何かがあると信じて、やりたいと思ったことはやってみるようにしたい。
これから、普段はお店に食べに行くような料理、色々自分で作ってみよう。
ピザとか、ドリアとか、おしゃれなカレーとか。
でもまずは、ナン作りをリベンジしたい。
次やるときは、もっと薄くして、形をちゃんと作って、強火で焼いて、この水餃子みたいな見た目を改善したいな。

