【スリランカ】パスポート盗難事件(2)警察署本署編
前回の続きから。
パスポートスラれてシャングリラでアフタヌーンティーランデブーしてからの警察署本署到着のところから。

スラれてすぐに駆け込んだ交番近くの寺院の写真。本署はここから少し距離がある。
建物の入口には銃を携帯した警備員が座っているだけで、警察署本署といっても想像していたよりもずっと小規模で寂れた建物である。
館内もまた、蛍光灯は暗く空気も澱んでおり、どこぞの大の男の泣き声が反響している。何が起こっているのか、大変悲壮感のただよう泣き方である。
アジアでは人々が感情的に泣いたり怒鳴ったりしていることは日常茶飯事なのでこんなことはもう常識の範囲内レベル、むしろ、
どした?なんかあった?
話聞こうか?
などと好奇心に任せてうっかり話しかけてしまいそうになる。
そんなに世を嘆くほどの一体何が起こっているというのだろう。
しかしながら、響き渡る男の泣き声は一旦忘れなければならない。
なんといっても今日のミッションは大真面目にパスポートの盗難届をだし大使館に提出するためのレポートを警官に作成してもらうことなのだ。
男が世を嘆く対象について考察などしている場合ではないのだ。
小走りで2階へ上がると、左右に2部屋に分かれており、部屋の上部に「何室」との表記がある。
それっぽい方に足を踏み入れ、そこにいた警官にパスポートを盗まれたのでレポートを作成して欲しいと伝えると、違う方の部屋へ行け、と示された。
そこでもう一方の部屋へ入り、また同じことを話す。
すると、担当の警官は面倒くさそうに英語がわからない、と言う。
エッ、エイゴワカラナイノ?
交番じゃないよ、ここ本署だよ。
外国からの観光客も多いはずだよね?
うろたえた。大変うろたえた。
しかしうろたえたのは警官が英語が話せなくてどうしよう、という理由よりもむしろ、警官の座る椅子の足元で男が赤子の如くひっくり返って泣きじゃくっていたほうに大変うろたえたのである。
そう、館内に響き渡る泣き声の主は彼であった。
本当に文字通り大の男が床をかきむしって大泣きしているのだ。
呆気にとられ、どのくらいの時が経過したのか私にはもはやわからなかった。
気づいたら隣のビルの会社に勤めるスリランカ人が隣の椅子に座っており、「Hello. Why are you here? Is there anything I can do for you?」とかなんとか、英語で話しかけてきてくれた。助かった、英語が話せる人がいた・・・。彼はDilanさんという方で、彼とはまたのちにひと騒動起こる。
それは別の機会に後述するとしよう。
しかしそんなことよりも、何よりもまず私は床の男について教えてほしかった。
この異常な状況について、何から指摘すべきなのかもはや優先順位もつけられないほど、この空間のすべてが大変異常であるとしか形容のしようがない。
彼は誰なのか?一体何が彼をこうさせているのか?
Dilan さん曰く、床の男の正体は隣のビルの従業員で、事務所の物を盗んだ(と思われる)容疑者の証人としてここへ来たとのことであった。
なんでも彼は、容疑者は盗みをやってないという主張のためにここまで自身を投げうって、夢中で彼の無罪を訴えていたのである。
嘘だろ!?まさかの自分のためではなく他人のために、ここまで・・・・・
世間体とか、プライドとか、そんなことは彼にとっては些末な問題なのである。赤の他人のため(赤の他人かどうか知らんけど)、ここまでなりふり構わず無罪を主張するとは・・・・・
こんなに正義感あふれる、友人思いの(友人かどうか知らんけど)彼を笑って、心から謝罪したいと思った。
人に迷惑をかけないとか、常識がどうとか、人前で泣くのは恥ずかしいとか、狭い価値観の中で生きてきた自分を心から恥じた。
果たして自分は他人のためにここまでできるだろうか。
彼の友情(知らんけど)と、正義感に圧倒され、胸が熱くなった。
こんな友人がいたらどんなに素敵だろう。心強いだろう。
私にも彼のような熱い友人が欲しい・・・・・
・・・わけないだろ!!!
こっちの話がすすまないからさっさとそこどいてくれよ。
そんな何時間も床に転がって泣くような話じゃないだろ。
主張したいことだけさっさと要点かいつまんで調書取ってもらって帰って仕事しなさいよ。ビジネスアワー真っ只中だよ。日本だったらとっくにクビだよアンタ。
本当にばかばかしい。
大泣き野郎は私が調書を取ってもらい始めてすぐに相手にされなくなり、早々に退室して行った。やっと静かになった部屋で、私はDilan さんを通訳として無事調書を書き進めることに成功したのである。
今後パスポートをスラれる予定の方々のために、下記残しておく。
少しでも何かのお役に立てれば幸甚である。
しかしあくまでも2026年2月時点で、私の場合はこのような対応をされたということなのでそこは注意願いたい。
・警察の調書は、警官が記入してくれるスタイルではなく用紙を渡され自分で記入するスタイルである。
・記入後、警官のチェックが入り、捺印され、先方のほうでコピーを取り、原本を渡される。それを持って、大使館へ行くこと。
・先客がいればかなり待たされる可能性がある。
・扇風機の風がもろに書類にあたってくるので、必死で押さえないと書類が飛ぶ。大変書きにくいことを覚悟の上で対応されたい。
・スリランカ内でつながる連絡先があればbetter。
私のSIMでは、なぜかWhatsAppの電話は受けられなかったので、Dilan さんの携帯番号を調書に記載してもらい、万が一パスポートが見つかったときには彼を介して連絡をもらえることとなった。
警察署を出るころにはもう17時を回っていた。
長い一日だった。大使館はもう閉まっているので、明日朝一で行くことにした。(続く)

