星の王子さまと幸福の王子、婚活査定したらどっちもムリだった
もしも星の王子さまと幸福の王子が婚活市場にいたら、幸せになれるのはどちらだろうか。
ふと、そんなことを考えた。
私はずっと、星の王子さまと幸福の王子は同一人物だと思っていた。
しかし、たまたまプレゼントにいただいた『星の王子さま』を読んでみると、どうやら私の知っている王子とは様子が違う。
金箔の銅像でもないし、ツバメも飛んでこない。
よくよく調べてみると、
『星の王子さま』=サン=テグジュペリ
『幸福の王子』=オスカー・ワイルド
作者も内容もまったく違った。
私なりに読み解いてみると、どちらの王子も「己の愛し方」について書かれているように感じる。
恋愛リアリティーショーが大好物の私としては、この2人の愛を恋愛、そして婚活対象として想像せずにはいられなかった。
私は既婚だが、婚活に苦労した人間でもある。
大名作を俗物的に考察して申し訳ないとは思うが、普遍的な愛を語るよりも、身近な愛に落とし込んでみたほうが、その物語に寄り添える気がする。
まずは星の王子さまから、婚活市場でのアピールポイントを書き出してみた。
星の王子さま⭐︎自己PR⭐︎
僕は好きな人のためなら、毎日ご飯を作ったり、世話を焼いたりすることを厭いません。
でも、度が過ぎると逃げ出したくなるので、家事の分担は相談したいです。
僕は世界を旅することが好きです。一度旅に出たら、なかなか戻ってきませんが、そんな僕を理解してくださる人がいいです。
僕は絶対に浮気をしません。
一度この人と決めたら、死んでも愛し続けます。
言葉の裏を読むことは苦手ですが、一緒に過ごした時間が、2人の絆を作ると考えています。
「愛する人を、特別な存在として大切にしたいです」
婚活査定
優しさ:★★★★★
ロマンチック度:★★★★★
一途さ:★★★★★
生活力:★★☆☆☆
安定性:★★☆☆☆
連絡のマメさ:★☆☆☆☆
放浪リスク:★★★★★
総合評価:★★★☆☆
こう見ると、星の王子さまは、なかなか結婚生活に向いているのではないだろうか。
放浪癖はちょっと困るが、同じ趣味の女性であれば、一緒に楽しむことも可能だ。
終の住処を早々に整えたい私としてはお断りしたいところだが。
そして、このタイプは「いるべき時にいない」のがセオリー。
私が瀕死の時には、必ずすぐには戻ってこられない場所にいるのだろう。
気づいた時には私は星になっていて、深すぎる愛ゆえに、今度は星まで追いかけてくる。
「今さら遅いよ」
私だったら、そう言って呆れてしまうかもしれない。
絶対に浮気をしないと断言できるのは素晴らしい。
ただ、愛が深すぎるあまり、元カノを忘れられないとか言い出しかねない。
自分が最初で最後の恋人になれれば安泰か。
では、続いて幸福の王子で考えてみよう。
幸福の王子⭐︎自己PR⭐︎
親元で何不自由なく暮らしていました。
しかし今は独り立ちをし、自分がどれだけ恵まれていたのかを知りました。
貧しい人、病気の子ども、困っている人の助けになりたいと考えています。
実家は裕福ですが、お金があれば自分のためではなく、困っている人のために使いたいです。
パートナーになる方には、同じ志を持った方を望みます。
一緒にボランティアなどに参加し、私の慈善事業を手伝ってほしいです。
パートナーの方が困っていれば、全力で助けます。
あなたが幸せになれるのなら、それで私は幸せです。
「愛する人のためなら、自分のすべてを差し出します」
婚活査定
優しさ:★★★★★
慈愛:★★★★★
献身度:★★★★★
資産:★★★★★
資産防衛力:☆☆☆☆☆
自立度:★☆☆☆☆
自己犠牲リスク:★★★★★
パートナー依存度:★★★★★
総合評価:★★☆☆☆
これは……ちょっと問題だ。
まず、王子と同じ志を持つことが難しい。
困った人を見つけては、自分の物を売っぱらってしまうのだ。
しかも!
自分で売りに行くのではなく、私を大黒屋へ走らせる気だ。
ツバメが王子の手足となったように、私がその役割を担わされるのだろう。
だって王子は動かない。
結婚なんてしたら、毎朝起きるたびにテレビを売り、冷蔵庫も売り、しまいにはカーテンすら売るように申し付けられるかもしれない。
生活破綻まっしぐらである。
それでも、とろけるように優しく、自分を頼り、労ってくれる王子から離れるのは至難の業かもしれない。
異性からちょっとでも優しくされると好きになってしまった若かりし頃の私であれば、どんなにお金に苦労しても、どんなにパシリに使われても、そばにいたいと思ってしまうかもしれない。
博愛主義なので、自分以外の人にも同じ優しさを向けてしまう王子様だということも知らずに。
破滅願望があるなら、止めはしない。
改めて2人の王子を婚活目線で比べてみると、「結婚」という枠にはめるには難しい人物像であることがよくわかった。
そりゃそうだ。
どっちも極端すぎるのだから。
とはいえ、2人の王子はきっとモテる。
王子という肩書き。
一途な人。
優しい人。
それだけで、多くの女性の心を掴むのではないだろうか。
星の王子さまは、
「遠くにいても必ず戻る。キミと過ごした時間が宝もの、深い愛」
幸福の王子は、
「キミの幸せが僕の幸せ。その他大勢も含む、広い愛」
波風の立たない、安定した幸せを求める私としては、どうしてもこの2人から選ぶことはできない。
私が望むのは、ふらっといなくなったりせず、私が風邪を引いたら薬やゼリーを買ってきてくれる人。
優しい人であってほしい。
でも、その人から一番の優しさを向けられるのは、自分でありたい。
そのうえで、安定した衣食住を整え、穏やかに暮らしていきたいのだ。
これは高望みなのだろうか。
婚活をしていた時、私はこの壁に何度もぶち当たった。
自分が望む幸せは、もう手に入らないのかと。
そんなことを思い出していたら、ふと『星の王子さま』のある場面が頭に浮かんだ。
物語の中で、飛行士が王子と一緒に水を求めて井戸を探しに行く名シーンがある。
飛行士と、婚活時代の私は同じだ。
手っ取り早く喉を、そして心を潤したい。
その気持ちが強すぎると、肝心なものが見えなくなる。
井戸は、必ずどこかにある。
そう信じて砂漠を歩き始めることに、価値があるのだ。
井戸にあるのが水なのか、サイダーなのか、緑茶なのか。
それはわからない。
もしかしたら、自分の好みの味ではないかもしれない。
それでも、苦労して歩いて、ようやくたどり着いた井戸の飲み物はきっと、喉と心を潤してくれる。そして、そこへ至るまでの過程でさえもかけがえのない思い出として心に残るのだ。
かつて私がやっとの思いで辿り着いた井戸で喉を潤したのは麦茶だった。
夏は冷やして、冬は寝る前に温めて飲む。
私の日常には麦茶が欠かせない。
おしゃれじゃないけど、毎日当たり前のように寄り添ってくれる麦茶は私の生命線だ。
星の王子さまと幸福の王子。
どちらを選べば幸せになれるのか。
そんな目線で始めた考察は、いつの間にか、自分にとっての幸せの基準を考えることになっていた。
生きていれば、人生のあらゆる場面で砂漠に放り出されることがある。
仕事や人間関係、家族のこと。ときには自分自身の価値がわからなくなったり。出口の見えない迷路に迷い込んでしまうこともある。
そんな時、私たちは喉を枯らした飛行士のように、必死で自分を救ってくれる何かを探して彷徨う。
婚活じゃなくても、人生には何度も、砂漠の井戸を探しに行くような場面があるのだ。
そんな時は、この『星の王子さま』を片手に思い出したい。
砂漠が美しいのは、どこかに井戸を1つ隠しているからだよ。
