服が売れたら洗剤も売れる?実際の市場データを比べてみた
先日、
服が売れると、衣料用洗剤も売れるのではないか。と思ったわけです。
でも前回考察してみると、
「服をたくさん持っているからといって、洗濯回数まで増えるわけではない」
という、ごく当たり前の事実にぶつかりました。
そこで今回は、
実際の市場データを並べてみることにしました。
果たして、
アパレル市場と衣料用洗剤市場は本当に連動しているのでしょうか。
まずはアパレル市場の推移を見る
矢野経済研究所によると、国内アパレル総小売市場は、
2020年 7兆5,158億円
2021年 7兆6,105億円
2022年 8兆591億円
2023年 8兆3,564億円
2024年 8兆5,010億円
と推移しています。
2020年は新型コロナの影響で大きく落ち込みました。
外出しない。会社にも行かない。
イベントも減る。
そうなれば、
「新しい服を買おう」
という需要も弱くなります。
実際、2020年の市場規模は前年比81.9%まで縮小しました。
ところがその後は、
2021年。2022年。2023年。2024年。
と、4年連続で市場が拡大しています。
(市場調査とマーケティングの矢野経済研究所)
外出機会が戻る。会社に行く。旅行する。
イベントに参加する。
すると、
「そろそろ服を買おうかな」
という需要も戻ります。
ここまでは分かりやすい。
では、その間に洗剤はどうなったのでしょうか。
洗濯用洗剤も並べてみる
日本石鹸洗剤工業会の統計から、洗濯用の液体洗剤と粉末洗剤の販売金額を合計してみました。
ざっくり計算すると、
2020年 約1,940億円
2021年 約1,993億円
2022年 約2,077億円
2023年 約2,054億円
2024年 約2,045億円となります。
ここでアパレル市場と並べてみると、
2020年
アパレル 7.5兆円
洗剤 約1,940億円
2021年
アパレル 7.6兆円
洗剤 約1,993億円
2022年
アパレル 8.1兆円
洗剤 約2,077億円
2023年
アパレル 8.4兆円
洗剤 約2,054億円
2024年
アパレル 8.5兆円
洗剤 約2,045億円
という流れです。
確かに2020〜2022年までは、
アパレル市場が回復するとともに洗剤販売額も増えています。
なんとなく、
「服が売れる
↓
洗濯する
↓
洗剤も売れる」
という私の仮説が正しそうに見えます。
ところが。
2023年以降を見ると少し違います。
アパレル市場は、
8兆591億円
↓
8兆3,564億円
↓
8兆5,010億円と伸びています。
一方、洗剤は、
約2,077億円
↓
約2,054億円
↓
約2,045億円。むしろ少し減っています。
「服が売れるほど洗剤が売れる」なら、
2024年を説明できない
2024年のアパレル市場は前年比101.7%。
4年連続のプラス成長です。
ところが洗濯用液体洗剤の販売数量は、
2023年 約62.3万トン
2024年 約59.1万トン。減っています。
粉末洗剤も、
2023年 約8.2万トン
2024年 約7.3万トン。
こちらも減少しています。(日本石鹸洗剤工業会)
つまり、
服は売れているのに、洗剤の使用量は増えていない。むしろ減っています。
この時点で、
「アパレル市場↑=洗剤市場↑」
という単純な式は崩れます。
なぜ洗剤の販売量は増えないのか
洗剤メーカーにとって重要なのは、
服の販売枚数ではなく、
人口や世帯数、洗濯回数。
こちらなのだと思います。
もう一つ重要なのが、洗剤そのものの進化です。
現在の液体洗剤は濃縮化が進んでいます。
少量でも洗える。
すすぎ1回で済む。
コンパクトなボトルになる。
つまり、
同じ回数洗濯しても、
使う洗剤の量そのものを減らすことができます。
実際、日本石鹸洗剤工業会も、液体洗剤のコンパクト化や高機能化について長く言及しています。(日本石鹸洗剤工業会)
企業からすると少し不思議な話です。
性能のいい商品を作れば作るほど、
1回の洗濯で必要な洗剤量は少なくなる。
つまり数量だけを見ると、
技術革新によって自分たちの販売量を減らしてしまう可能性すらあります。
では、どうやって成長するのでしょうか。
ここで出てくるのが、高付加価値化です。
「たくさん売る」から「高く売る」へ
日本石鹸洗剤工業会によると、2024年の洗濯用液体洗剤は、
販売数量 前年比95%
販売金額 前年比ほぼ100%
でした。
つまり、
売れた量は減ったのに、売上金額はほぼ維持されています。
その背景として、抗菌・防臭などを訴求した高付加価値商品が挙げられています。(日本石鹸洗剤工業会)
企業が成長する方法は、
数量を増やすだけではありません。
単価を上げる。
高機能商品へ移行させる。
プレミアム商品を売る。
という方法があります。
衣料用洗剤はまさに、
成熟市場でどう単価を上げるか
というビジネスなのだと思います。
そして「消臭」という別の市場が伸びている
さらに興味深いデータがあります。
マクロミルの購買データを見ると、2015〜2024年の10年間で、
衣類用の消臭専用剤に使われる金額の割合が上昇
しています。
背景には、
ニオイへの意識。汗。部屋干し。
スメルハラスメント。
などがあります。(マクロミル)
つまり、昔は、「汚れを落とす」だけだった
衣類ケアが、
今は、
汚れを落とす。菌を防ぐ。ニオイを防ぐ。
香りをつける。シワを取る。服を傷めない。
という方向に広がっています。
服そのものの市場が伸びなくても、
一着の服にかける「ケア費用」を増やすことはできる。
ここに洗剤メーカーの成長余地があります。
「ライオンを見ると、この市場の大きさが分かる」
たとえばライオン。
2025年の国内一般用消費財事業の外部売上高は2,237億円でした。
そのうち、
ファブリックケアが25.1%。
単純計算すると約560億円規模になります。
NANOXなどの洗濯用洗剤やソフランなどの柔軟剤を含む分野です。(ライオン株式会社)
ライオンというと、
歯磨き。歯ブラシ。バファリン。
などを思い浮かべます。
でも売上構成を見ると、
衣類を洗う市場もかなり大きい。
私たちが毎日何気なく洗濯していることが、
一企業の数百億円規模の事業になっています。
今回データを見て、私なりに出した結論は、
アパレル市場と洗剤市場は、直接的にはそれほど強く連動していない。
です。
人間の生活行動を通じてつながってはいます。
「服が売れたから洗剤株を買う」では少し短絡的。
むしろ見るべきなのは、
人口。世帯数。共働き世帯。洗濯頻度。
衛生意識。
高付加価値商品の比率。
単価。そしてブランドシェア。
なのだと思います。
今回、一番印象に残ったのは、
販売数量が減っても、売上を維持できる
というところです。
2024年の洗濯用液体洗剤は販売量が減っています。
それでも販売金額はほぼ変わりません。
これは、
「たくさん売る会社」ではなく、
「1回の買い物でどれだけ価値を感じてもらえるか」
という競争に変わっていることを意味します。
アパレルも洗剤も、成熟した日本市場では、
数量の成長より、付加価値の成長
を見るべきなのかもしれません。
結論
実際のデータを見ると、
アパレル市場は2020年から2024年にかけて大きく回復しました。
一方で洗剤販売額は2022年ごろからほぼ横ばい。
販売量にいたっては減っています。
つまり、
服の販売量と洗剤需要が、そのまま連動しているわけではない。
でもその代わり、
抗菌。防臭。消臭。香り。衣類保護。
といった高付加価値市場が広がっています。
そして今回、アパレル市場と洗剤市場をわざわざ並べてみた結果、
服をたくさん買ったからといって、
洗濯機をたくさん回すわけではない。
という、
またしても非常に当たり前の事実にたどり着きました。

