第63話【倒産寸前】通行人は大事
出店した場所は、モール4階の奥。
館そのものには、もちろん集客力がありました。
誰もが知っている有名店が集まる、いわばパワーショップの集合体です。
飲食店なら、
ハンバーガー。
アイスクリーム。
牛丼。
そして、食品スーパー。
食料品は買いだめにも限界がありますから、お客様は日常的に来館されます。
では、整骨院はどうでしょうか。
健康保険を使って施術を受けられるのは、基本的にお怪我です。
腰を痛めた。
朝起きたら、首を寝違えていた。
転んで、膝を痛めた。
そんなとき、
「あそこに整骨院があったな」
と思い出して、来院されます。
つまり、怪我をしたときに選んでいただくためには、あらかじめ存在を知ってもらう必要があるのです。
一方、整体は少し違います。
家族で買い物に来た。
奥様とお子さんは、ゆっくり服を選んでいる。
しかし、お父さんは付き合うのが面倒です。
そんなとき、店頭の案内が目に入る。
「整体30分、3,300円」
「俺、整体を受けているから、ゆっくり見てきなよ」
こんな具合です。
ですから、土日の昼間には、予約なしの飛び込みのお客様が多くなります。
重なると、待ち時間が30分になることさえありました。
それもこれも、館内を回遊しているお客様に、整骨院の存在を認知してもらえていたからです。
今さらですが、認知されるためには、その前提となる「母数」が必要なのです。
たとえば、100人に1人、整骨院や整体を利用したい人がいたとします。
店の前を1日に1,000人が通れば、10人が来院される可能性があります。
しかし、1日に50人しか通らなければ、下手をすると誰も来ません。
当たり前の話です。
ところが、当時の私は、こんな簡単なことさえ分かっていませんでした。
本来であれば、出店を決める前に現地へ行き、
朝。
昼。
夕方。
そして、平日と土日。
それぞれ時間を決めて、店の前を通る人数を自分の目で数えるべきでした。
しかし、しなかった。
「これだけ売上のあるモールなのだから、お客様は来るだろう」
館全体の売上だけを見て、安易に判断してしまったのです。
モール全体に何万人のお客様が来ていても、そのお客様が店の前を通らなければ意味がありません。
館の集客力と、店の前の通行人数は別物です。
人が集まる場所に出店したつもりが、
実際には、人が通らない場所に店を構えていた。
数字を見たつもりで、
最も大事な数字を見ていなかったのです。
