第62話[倒産寸前】モールも場所が命
モールの中に出店すれば、お客様は自然に来てくださる。
館内を歩く人たちに認知され、そのまま店舗へ流れてきてくれる。
そう思っていました。
しかし、それは幻影でした。
旗艦店は、開業から約2年間、フードコートの近くにありました。
隣にはハンバーガーショップとアイスクリームショップ。
家族連れが絶えず行き交う、恵まれた場所でした。
そこで整骨院を見つけたお客様が、
「こんなところに整骨院があるんだ」
「今度、来てみよう」
と思ってくださった。
新しい整骨院ができたからといって、最初から整骨院を目当てにモールへ来る人など、ほとんどいません。
ハンバーガーを食べに来た。
アイスクリームを食べに来た。
買い物に来た。
そのついでに整骨院を知っていただいたのです。
言ってみれば、周囲の店舗のおこぼれに預かっただけでした。
それでも、約2年間にわたって新規のお客様を増やすことができました。
その後、旗艦店はモール2階の隅の奥へ移転。
通りがかりの人など、ほとんどいない場所です。
新規来院は、以前の10%程度までガタ落ちしました。
それでも店舗を維持できたのは、最初の2年間に獲得した常連のお客様が、そのまま通ってくださったからです。
いわば、売上のボトム。
最低限の売上を支えてくださるお客様が、すでにいらした。
その方々だけで、従来の売上の約6割を確保できました。
だから、隅の奥へ移っても何とかなったのです。
しかし、私はこの経験から、本当に学ぶべきことを学んでいませんでした。
「旗艦店は、隅の奥でもお客様が来ている」
「ならば新店舗も、何とかなるだろう」
そう考えてしまったのです。
決定的な違いを見落としていました。
旗艦店には、すでに通ってくださるお客様がいた。
しかし、新店舗は一からです。
常連のお客様はいない。
店舗の存在も知られていない。
しかも、人通りの少ない場所。
モールの中にあるというだけでは、お客様は来てくださらないのです。
人が歩いていない場所に店を出せば、どれほど大きなモールであっても、存在しないのと同じでした。
モールは場所がいのち。
その当たり前のことに気づいたときには、すでに出店していました。
さあ、どうする?
