#16 俺、面接を受ける パパ、いんせーになる
○月×日
面接は、
自分の前の受験生が不在だったらしく、
待つ間もなく、
突然呼ばれた。
心の準備は、
まったくできていない。
「どうぞ」
そう言われて、
面接室に入る。
そして、
まず驚いた。
面接官が、
思っていたより多い。
たぶん、
10人弱はいたと思う。
……こんなにいるの?
一瞬で、
緊張が跳ね上がる。
その中には、
希望していた
指導教員の先生もいた。
この時、
初めてお会いした。
40歳くらいで、
メガネをかけた、
いかにも知識が広そうな先生。
優しそうな雰囲気で、
自分の研究計画の説明に、
何度か頷いてくれていた。
……と思う。
ただ正直、
このあたりから
記憶が少し曖昧だ。
面接が始まると、
とにかく緊張していた。
手は汗ばんでいるし、
頭も、
あまり回っていない。
もしこの時、
上空からカメラで撮影していたら、
完全にテンパっている
中年男性
が映っていたと思う。
しかも途中から、
なんだか酸素が足りない気がしてきた。
……あれ、
空気が薄い?
そんな状態だった。
準備してきたことは、
話した。
……と思う。
ただ、
頭がうまく働いていない。
答えられない質問もあった。
その時は正直に、
「申し訳ありません。
勉強不足です」
と答えた。
先行研究についても、
完全にど忘れしてしまい、
一つ、
答えられないものがあった。
とりあえず最後は、
「全力で研究に取り組む所存です」
と答えた記憶はある。
ただ今思えば、
根拠のない決意だった。
面接が終わると、
一瞬、
妙な「間」があった。
「……以上です。
ありがとうございました。」
数秒、
誰も何も言わない。
…あ、やらかしたな。
そんな気がした。
面接室を出た瞬間、
一気に力が抜ける。
その時、
気づいた。
手のひらも。
背中も。
スーツの中も。
とんでもない量の汗をかいている。
「これ……
風邪ひくんじゃないか……」
本気で、
そう思うレベルだった。
大学の門を出て、
とりあえず妻に電話をした。
「たぶん、
ダメだと思う。
全然、手応えがない。ごめん。」
そう言うと、
「まぁ、気をつけて帰ってきな。」
と言われた。
……気がする。
正直、
面接の内容よりも、
自分が何を話したのか、
ほとんど思い出せないことの方が不安だった。
肩を落としながら帰る。
大学院の壁は、
やっぱり高いなぁ。
そう思いながら、
家路についた。
そしてその日。
汗をかきすぎた私は、
本当に
風邪をひきかけていた。
(…つづく)
