又貞しされた殺意

         粗筋

船旅の朝、目芚めた川尻は、昚日着おいた服のポケットに芚えのないメモ曞きを芋付ける。そこには自分の名前ず、自分の恋人の名前、さらにはこれたた芚えのない人名二぀が日時ず共に蚘されおいた。前倜、船のバヌでしこたた飲んで酔ったため、蚘憶が飛んでいる。必死になっお思い出そうず努め、ようやく断片的に蚘憶が蘇り始めた。バヌで知り合った男ず、亀換殺人の玄束を亀わしたのだ。


         本文

 川尻優かわじりたさるは酒奜きだが、匷くはない。顔に出ないのず飲みっぷりずで、匷いものず思われるこずしばしばだが、実際は違う。萜ち着きのある態床ずは裏腹に、頭の䞭はぐらぐら揺れ、芖界もはっきりしない。䜕よりも厄介なのが、翌朝目芚めるず酒を飲んでいる間の蚘憶が極めおあやふやになり、酷いずきはきれいさっぱり忘れおしたうこずがある。
 今朝もそうだった。船宀で䞀人、目芚めたあず、昚晩の出来事を思い出そうずするが、バヌカりンタヌで若い女の子盞手にマッチや玙おしがりを䜿ったくだらない手品をやっお、結構受けがよかったこずばかりクロヌスアップされる。他に䜕かあったのは確実なのだが、のどの手前で匕っ掛かっお入るみたいに出お来ない。
 頭をすっきりさせようずシャワヌを济び、着替えおから煙草に火を着ける。脱いだ服のポケットからラむタヌを取り出したずき、指先に䜕か別の物の觊れる感觊があったので、匕っ匵り出した。
 それは、手垳のペヌゞを砎ったず思しき䞀枚の玙切れで、ボヌルペンで曞いたらしい字が螊る。

    
 川尻優   → 平井和矎
     
 小枕満圊  → 沌厎麗子

 ずあり、その䞊䞋には砎いた痕のぎざぎざが斜めに走っおいる。川尻自身の名前及び小枕おぶちなる人物の名前の前には、拇印が抌しおあった。「川尻優」及び「沌厎麗子ぬたざきれいこ」は自分が曞いたもの、あずは別人の手による字である。
沌厎麗子は俺の恋人だ。今や疎たしいだけの存圚だが  あ
 川尻は朧気ながら昚倜の出来事を思い出しおきた。己の芪指を芋るず、右手の方に赀い䜕かが残っおいた。血かもしれない。
 裏返すず、やはり黒のボヌルペン字で、「䞇が䞀ミスったずきはこの玙を凊分」ず、走り曞きがあった。これも自分の字らしい。
 川尻は煙草の火を消すず、蚘憶の再生に真剣に努めた。そしお、思い出した。
 昚晩、船のバヌで男ず知り合い、亀換殺人を玄束したのだ。この玙の曞き付けは、その契玄曞であるず同時に、お互いが亀換殺人完遂たで裏切らないようにする蚌文でもある。
 蚘憶が定かでないが、この曞き方から芋お、平井和矎ひらいかずみなる女性が小枕の殺したい盞手であるこずは間違いない。䞃月䞀日の午前十時から午埌九時たで小枕は絶察のアリバむを確保するから、その間に殺人を実行しろずいう意味だ。
 川尻は、自分自身が䞃月二日にアリバむを確保できるのかどうか、思い起こしおみた。早朝からゎルフの玄束が入っおいたず気付く。倚人数ず長時間、䞀緒にいる蚳だから完璧なアリバむになろう。
 䞃月八日にも同様の状況でアリバむが確保できるのだが、そちらにしなかったのは䜕故だろう。殺人の間隔は近い方がよいず刀断したのだろうか。報道を泚意深くチェックしなければ、タヌゲットの死に気付かない恐れもある気がするが。そこたで考えを巡らせおから、盞手の郜合もあるこずに気付いた。倚分、小枕の方が䞃月八日は自由に動けないのだ。
他にどんな䌚話を亀わしたっけ  
 目を瞑り、昚日の晩の光景を思い浮かべる。ただ刀然ずしない。五感に蚎えるものがあれば、鮮明になるもしれないず考えた川尻は、怅子を離れお酒瓶を取っおくるず、蓋を回しお倖し、䞭の液䜓の匂いを嗅いだ。
 効果はあった。
 盞手の男の顔こそただもやが掛かったような具合にしか思い出せないが、䌚話の方は明癜になった。䞊着の内ポケット、その奥底に別のメモ甚玙を抌し蟌んだ蚘憶が、しかず甊った。
 平井和矎の名前のあずに、五十ずいう幎霢、䜏所ず電話番号の蚘茉が続き、圓日の行動予定ずしお“午前十䞀時から午埌䞀時の間に、近所のスヌパヌマヌケットに自家甚車で買い物に出掛ける、それ以倖は独りで圚宅のはず”ずある。平凡な䞻婊ずいったずころか。
 期日たで二週間。この船旅から垰ったら、早速調べねばならない。スヌパヌマヌケットの所圚地ず、そこの防犯カメラの蚭眮状況、利甚者の倚さ等々。店で実行するのが困難なようであれば、家を出おすぐか、垰宅盎埌を狙うこずになろう。
 蚈画に党く躊躇しおいない自分に感心し、少し気分がよくなった。顧客の厚意からプレれントされた䞀泊二日の船旅に、あたり気乗りしおいなかったのだが、今は来およかったず感じる。亀換殺人を成し遂げれば、憂いはなくなる。
 サむドボヌドに眮いおいた携垯電話が鳎った。出る前にディスプレむを芋るず、将来矩父ずよぶであろう男性からだず知った。
 米朚民倫よねきたみおの嚘ずめでたく結ばれるために、川尻は長い付き合いの恋人を殺そうずしおいた。

 人を殺すずいう行為は、呆気ないほど簡単だった。䜕の恚みもない芋ず知らずの盞手だから、少しはためらいが出るかもしれないず事前に想像した川尻だったが、それは杞憂だった。スヌパヌマヌケットの広い駐車堎の片隅で、圌は平井和矎に自然に接近し、声を掛け、そしお絞殺した。
堎所がよかったずいうのも無論あるが、赀の他人を冷静に芳察するこずに慣れおいるから、殺人もここたで冷静にやれたのかもしれないな
 川尻は垰途、そんな颚に自己分析した。興信所のボスである圌は、探偵ずしお癟を優に超える男女を芳察しおきた。
 自家甚車の時蚈は、ちょうど正午を瀺しおいた。助手垭の足䞋には、折り畳み匏自転車が眮いおある。珟堎近くの図曞通たで車で行き、そこから折り畳みの自転車を䜿っおスヌパヌマヌケットに到着。犯行をなしたあず、たた自転車で図曞通たで行き、車に乗り換えた。動機なき殺人ずはいえ、逃走ルヌトには泚意を払った぀もりだ。珟行犯で捕たっおは、元も子もない。
 あずは、この殺人がニュヌス等で報じられるのを確認し、明日、沌厎麗子が始末されるのを埅぀ばかりだ。

 䞃月二日の倜。䞊埗意の顧客らずのゎルフを終えた川尻は、宎垭の誘いを断り、興信所の入るビルにいそいそず戻った。郚䞋の調査員達を垰したあず、買っおきた匁圓を食べながら、郚屋でテレビを芳る。番組は無論、ニュヌスだ。
 ニュヌスはたず、匁護士が亀通事故のため本日予定されおいた重芁事件の公刀に出廷できなくなり、公刀自䜓が延期になったずトップで䌝えたあず、殺人事件が盞次いでいるこずを䌝え始めた。最初に、昚日関東圏で起きたスヌパヌマヌケットでの独身女性殺し、぀たり川尻がやった件だ。あの幎霢で独身だずは思っおいなかったので、少し驚いた川尻だったが、どうやら倫に先立たれたようだ。
 二番目は、やはり昚日発生した殺人で、堎所は東海圏。被害者は䞻婊で、芳光旅行䞭の転萜死だが、突き萜ずされた可胜性が高いず芋られおいるらしい。が、川尻にずっお興味があるのは、沌厎麗子が被害者の殺人事件だけなので、ほずんど聞き流しおいた。
 䞉぀目は本日の午埌にあった殺人で、いよいよかず画面に意識を集䞭した。が、川尻の期埅を裏切り、九州圏での事件だった。新幹線の車䞭で若い女性が毒殺され、目撃情報から䞍審な男性を远っおいるずのこず。
 殺人事件のニュヌスはそれで打ち止めだった。
 川尻は倚少怪蚝に感じながら、ただ公匏発衚されおいないのか、されおいおも情報が少ないから埌回しにされたのかず考えた。少なくずも、発芚しおいないこずはあるたい。亀換殺人の玄束をしおおきながら、死䜓を隠すなどされおは、アリバむ䜜りの意味がなくなるのだから。殺害埌間もなく発芋されるのが理想的だ。
 川尻はしばらく匁圓をぱく぀いおから思い立ち、パ゜コンを起ち䞊げた。぀いこの前、䟝頌人になったメヌカヌの重圹から、最新匏の物をプレれントされたが、䜿い慣れた旧匏の方を未だに愛甚しおいる。ネットに接続するず、ニュヌスサむトに飛ぶ。早速、より新しい殺人事件のニュヌスを探しに掛かる。しかし、目に付くのは最前、テレビニュヌスで聞いたものばかり。沌厎麗子の名前は芋圓たらない。もしかするず氏名䞍詳の遺䜓ずしお芋぀かったのかもしれない。ならばず改めお芋出しをチェックしおいく。
 ず、そのずき携垯電話が鳎った。着信音で麗子からず分かる。
 䞀瞬、びくりずする。十秒ほど硬盎しおいただろうか。しかし川尻は思い盎した。麗子の携垯電話からの着信だ。麗子が掛けおきたのではなく、圌女の遺䜓を発芋し、調べた譊察が携垯電話のアドレスを順番に圓たっおいるに違いない。
 そう刀断した川尻は、深呌吞をしおから電話に出た。
「はい、もしもし  」
 譊察官、それも男の声が返っおくるこずを想像し、いくらか堅い調子で始めた川尻。その耳に、女の高い声が入っお来た。
「遅いよ、優。それにどうしたの、䜕か倉に他人行儀な蚀い方しお」
 沌厎麗子本人だった。
「あ、ああ。ちょっずうずうずしおいた」
 川尻は取り繕った。己の動悞が激しくなるのが分かる。この音が、電話の向こうたで聞こえやしないかず、䜙蚈な心配たでした。
「こんな時間に あっ、接埅ゎルフずか蚀っおたっけ」
「うん。疲れたんだな。実は悪い倢を芋おさ、麗子が事故で死んだっおいう」
「䜕それ。冗談き぀いずいうか、悪趣味」
「すたんすたん。そんな倢から芚めた盎埌に、おたえから電話があっお、劙な心地だったんだ。今はほっずしたよ」
 取り繕い、どうにか普段通りの䌚話に持っお行く。その間、川尻は亀換殺人のメモ甚玙を取り出した。そこに曞かれた時刻を凝芖する。間違いなく、今日の九時から十四時に決行予定ずなっおいる。なのに、麗子は生きおいる  。
「なあ、念のために聞くけど、今日、危ない目に遭わなかった」
「心配しおくれるのは嬉しいかもだけど、予知倢でも芋た぀もり そんな神秘䞻矩だっけ、優っお」
「倢が生々しかったからさ。䞀応――いや、気にしないでくれ」
 話の流れで、「䞀応、これからも気を付けるようにしろよ」ず蚀いそうになり、慌おおやめた。気を付けられたら、小枕が麗子を殺そうず襲ったずき、しくじる恐れが高くなるのではないか。
 そもそも、小枕ずいう男は、やる気があるのだろうか。自分の殺したい盞手が死んだからもういいず思ったのではあるたい。䟋の拇印付きメモがある。たさか、怖じ気づいたのか だずしたら、せっ぀いおやらねばならない。
 殺しおやりたい恋人ずの䌚話を続けながら、川尻はそんなこずを考えおいた。

 小枕をせっ぀こうにも、連絡方法が䞍明であった。船䞊で玄束を亀わした折に、メヌルアドレスなり電話番号なりを亀換したかもしれないが、川尻の蚘憶にはなかったし、そのずきの着衣のどこを探っおもそれらしきメモは発芋できなかった。
 自力で調べ䞊げる倖ないず刀断した川尻は、職業䞊の調査胜力を掻甚した。あの船の乗客名簿を入手し、小枕満圊み぀ひこの名を探す。停名の可胜性もあったが、最初から亀換殺人の仲間を探す狙いで乗船したのでもない限り、その線は薄いず思っおいた。ずいうのも、信頌関係を構築するためには身元を蚌す必芁があるずしお、それぞれ運転免蚱蚌の氏名欄のみを芋せ合ったこずを芚えおいるからだ。
 果たしお、簡単に芋぀かった。小枕満圊は医者で、郜内で個人病院をやっおいる。ネット怜玢で呚蟺情報を集めおみるず、ホヌムペヌゞを構えおおり、顔写真たで茉っおいた。
「この男だったかな。自信が持おないな」
 職業柄、川尻は人の顔を芚えるのは苊手ではないが、飲酒が過ぎた堎合は別だ。曖昧暡糊ずした蚘憶の䞭にある共犯者の顔を思い浮かべるず、確かに小枕満圊のようでもある。しかし、どこずなくしっくり来ない。蚘憶の䞍確かさ故の感芚で、小枕が共犯者に間違いないずは思うのだが。
 川尻は小枕病院の䜏所ず電話番号をメモに取り、個人的に匕き受けた䟝頌の名目で、昌前に車で出掛けた。駅近くの公共斜蚭の駐車堎に入れ、
 ひずたず様子だけ芋お、昌食を取ったあず、小枕満圊に接近できるチャンスを窺おう。そんな算段を立おおいた川尻だが、医院に隣接する小枕邞を目にしお、ちょっずした意倖感にずらわれた。
葬匏 いや、通倜の準備か
 喪服姿の男達が忙しそうに動き回っおいる。病院の方は臚時䌑蚺の札が掛かっおいた。理由を告げる匵り玙はないが、小枕家の誰かが亡くなったのは間違いなさそうだ。
ひょっずしお、小枕満圊自身が事故か䜕かで急死し、そのため、麗子は今もぎんぎんしおいるずかじゃないだろうな
 頭を掻いた川尻。そのずき、圌の目の届くずころに、通倜及び葬儀を告知する匵り玙が匵られ、案内看板が眮かれた。
 被葬者の名は小枕倏穂かほずあった。もっず接近しお文章を読めれば、小枕満圊ずどのような関係にあった女性なのか分かるのだが、印象に残る行動は取りたくない。出入りする人々の䌚話に耳を傟けおいるず、亡くなったのは小枕倫人らしいず知れた。
 い぀死亡したのかは分からないが、こんな事態では、亀換殺人に出掛ける暇がかったずしおも合点が行く。さっさず殺しおもらいたいのは山々だが、延期はやむを埗たい。䞭止ではなく、決行する意志があるのかが重芁だ。再床コンタクトを取る必芁があるが、い぀ならよいだろう。
 川尻は頭の䞭で蚈算した。延期期間は六日。䞃月八日なら、アリバむ確保が容易だ。向こうの郜合もあるだろうが、こちらも埅たされおいる。今日が䞉日だから、明埌日たでには぀なぎを取りたい。が、葬儀の片付けや匔問客ぞの応察で、簡単には行かない気がする。
いっそ、今日か 服ず金を甚意し、匔問客を装えば、入るこずはできる。そのあず、小枕に接近できるだろうか。仮にできたずしお、小枕ず二人でいるずころを芋られるのは、奜たしくない。ひょっずしたらカメラを回しおいる者もいるかもしれない
 川尻は悩んだ結果、慎重な振る舞いを優先した。気は急くものの、䞀旊匕き返し、出盎すずしよう。
 小枕邞から事務所に垰り着くず、駐車スペヌスに芋知らぬ男が䞀人立っおいた。川尻を芋るず近付いおきお、「川尻優さんですか」ず䞁寧な調子で尋ねられた。校庭の返事をするず、盞手は満面の笑みを浮かべた。
「突然の蚪問をお蚱しください。私、六月半ばの船旅でお䌚いした者の代理で参りたした。寺田䌞人おらだのぶずずいいたす」
「船旅の」
 目を芋匵る川尻。盞手を䞊から䞋たでざっず芳察した。身長は川尻ずほずんど倉わらない、䞭肉䞭背。広い額にしわはほずんどなく、怒りの感情を露わにするタむプでないこずが想像できる。色癜なのはデスクワヌクを䞻にこなすからだろうか。スヌツをびしっず決めおいるが、靎だけはくたびれおおり、普段よく歩き回っおいるこずが窺えた。
「先生の呜で参りたした。最初に蚀っおおかねばなりたせん。私は旅の船䞊で先生ず川尻さんずの間で䜕があったのか、党く存じおいたせん。秘密を芁する事柄であるずだけ理解しおいたす。川尻さんも、その぀もりでお聞きください。そしお無論、その぀もりでお話しください」
「あ、ああ。分かりたした。堎所はここでいいのかな」
「そうですね。あなたの車の䞭はいかがでしょう」
 二人は川尻の車に乗り蟌んだ。運転垭に川尻、助手垭に寺田ず名乗る男が座る。
「こっちも最初にいく぀か聞いおおきたい。寺田っおのは本名」
「ご想像に任せたす」
「寺田さん、あんたが代理人である蚌拠は䜕かないのかい」
「そう聞かれた堎合、こう答えよず先生から指瀺されおいたす。『・の始末に感謝する』」
 平井和矎のむニシャルか。きわどい衚珟だなず川尻は思った。小枕満圊の䜿いの者なんだろうが、こう芋るからに忠実そうな郚䞋なら、平井和矎の存圚も承知しおおり、・のむニシャルだけでぎんず来るのではなかろうか。
たあ、この男の様子なら、たずえ気付いおも裏切りはなさそうだが
 寺田に䞀応の信頌を眮いた川尻は、盞手の甚件を促した。
「先生の蚀葉をお䌝えしたす。 『のっぎきならない事情により、私は定めた日に動けなくなった。どうやっおそのこずを知ったのだ 教えおもらいたい』ずのこずです」
「うん」
 川尻は思わず銖を捻った。メッセヌゞの前半は理解できる。劻の葬儀で玄束の殺人を期日には果たせなかったずいう意味だろう。では、埌半は
確かに突き止め、今日、病院たで出向いたが  互いに詮玢しないこずも亀換殺人の玄束に含たれおいたんだっけか。だずしおも、こっちは麗子死亡のニュヌスを銖を長くしお埅っおいたのに、い぀たで経っおも䜕も起こらないず来た。気になるのは圓然だろう。興信所をやっおる身だから、この皋床の調査は朝飯前。そもそも、あんただっお俺の仕事堎を把握しおるじゃないか
 文句を蚀われる筋合いではない。
よほど、自分の正䜓を突き止められない自信があったのか それは危機管理の意識が甘いっおものだ
 亀換殺人のパヌトナヌを怒らせおも、利益はない。川尻は返答に䜿う蚀葉を遞んだ。
「たあ、芋おの通り、興信所の人間ですから、これぐらいはお茶の子さいさい  ずたでは行かなくおも、その気になっお調べれば分かるこずです」
「はあ、さようですか」
 寺田はそう応じたものの、玍埗しおいない颚に唇をぐっず噛んだ。だが、それだけで、特に远及はなかった。
「分かりたした。先生にお䌝えしおおきたす。時間を取らせお、申し蚳ありたせんでした」
「――ちょっず」
 ドアを開け、出ようずする寺田を川尻は呌び止めた。
「あんたの先生が、玄束を果たしおくれるのかどうか、聞いおないかな」
「これは倱瀌をしたした。忘れおいた蚳ではなく、お尋ねされたずきのみ、答えるようにず蚀われおいたもので」
 シヌトに戻り、ドアをしっかり閉めた寺田。
「『圓初の予定通り、八日に』ずのこずです。これでよろしいでしょうか」
「  ああ。分かった。できればもう二床ず䌚わずに枈むのが望たしいね」
 寺田は黙ったたた、笑顔で頭を䞋げた。その姿を車䞭から芋送りながら、川尻は考え、呟いた。
「圓初の予定通りっおこずは、䜕らかのハプニングで殺人を延期せざるを埗なくなった堎合、第二候補の日時を指定しおおいたんだろうな。――酒、少しは控えないずだめだなこりゃ」

 䞃月九日早朝、自宅のテレビで埅望のニュヌスをテレビで確認した川尻は満足し、ある皮の安らぎを埗た。
 その埌のワむドショヌの報道によるず、䞃月八日の正午頃に、沌厎麗子は殺されたようだ。䌑日の昌前、ショッピングに出掛けたデパヌトで襲われ、絞殺されおいた。有力な目撃蚌蚀は今のずころなし。防犯カメラの映像も、犯行珟堎自䜓は死角になっおいたし、日曜の混雑のおかげか、被害者を぀ける等の怪しい行動をした人物は芋぀かっおいないずされた。
これで終わり、か。亀換殺人なんお裏切りのリスクが倧きい絵空事だず思わないでもなかったが、実際にやっおみるず、䟿利さが分かるな
 そんなこずを感じ぀぀、川尻はむンスタントコヌヒヌを飲み干した。カップを持っお垭を立ち、キッチンに向かいがおら、テレビの電源を切ろうずする。が、続けお始たったナレヌションに、耳を疑うフレヌズを認めお動きが止たる。
――病院長、小枕満圊さんが遺䜓で発芋されたした。䞃月六日の午埌に死亡したず芋られ、行方䞍明になった盎埌に殺害された可胜性が高いずのこずです
 川尻は䜕か短く叫んでいたかもしれない。蚳が分からなくなった。
䞃月六日 ばかな。その二日埌に、小枕満圊は麗子を殺したはず
 テレビの真ん前に立ち、フレヌムを鷲づかいにした䞊で、画面を食い入るように芋぀める。流れおくる説明で、小枕倏穂の死も他殺の疑いが濃厚であるこずを知った。
 川尻はそのニュヌスを、䞃月二日の時点で芋聞きしおいた。䞃月䞀日に東海地方の垂で起きた䞻婊転萜死亡事件。柎厎麗子が殺されたかどうかばかり気になっお、よその土地で死んだ女性の名前なんおたるで泚意しおいなかった。
こんな偶然があるのか。亀換殺人に応じた俺が、小枕の殺したがっおいた平井和矎を殺したのず同日、小枕の劻も殺されるなんお。いや、小枕っお男は、もしかしお、亀換殺人を二぀同時䞊行的に成立させたのか
 川尻が想像したのは、次のような構図だ。
 小枕は川尻ず亀換殺人の玄束をした裏で、別の人物ずも亀換殺人の玄束を亀わした。小枕ず川尻の間では、それぞれ平井和矎ず柎厎麗子を殺し、小枕ずの間では小枕倏穂ずが殺したい人物を殺す。䞡方の蚈画に関䞎しおいる小枕にずっお、同じ日に二人が始末されれば、アリバむ確保の手間が䞀床で枈む。その代わり、己が手を汚すのは二回に増えるが。
 そこたで考え、川尻はかぶりを振っお打ち消した。
珟実には、麗子が殺される二日前に小枕は死んだ。あり埗ない。小枕の代わりに、誰かがやっおくれたのか あの男――寺田か たさか。他人の亀換殺人を、どんな理由があっお受け継ぐずいうんだ。俺がただ殺人をやっおないのなら、『こちらは矩務を果たしたのだから、そっちも殺しを実行しろ。ただし、殺す盞手は倉曎だ』ずでもやれば、メリットがあるかもしれない。だが、実際には俺の方はもう枈んでるんだ。じゃあ、䜕故  。小枕の䜓面を守るため 麗子を殺さないず、俺が亀換殺人の玄束を暎露するずでも危惧したんだろうか
 ゞグ゜ヌパズルの断片がいく぀かあっお、色々組み合わせるこずはできるが、どれもすっきりした絵にならない。そんな感じがした。
だいたい、小枕を殺したのは誰なんだ。俺達の亀換殺人に関係しおいるのかいないのか
 気を揉む川尻だったが、䞀方では楜芳的に構える圌もいた。圌自身の目的ず矩務は達成しおいるのだ。小枕を殺した犯人を捜そうなんお真䌌、わざわざする必芁は党くない。
䞇が䞀、小枕殺しの犯人が亀換殺人蚈画の党貌を知っおいるなら、俺を脅しお金を芁求しおくる恐れも皆無ではない。そうなったずきは臚機応倉に察凊するたで。こちらから動くこずはしない
 心に決めるず、圓初沞き起こった匷い動揺は消え去った。念のため、捜査の進展具合に泚意を払う、それだけで充分だろう。

 川尻の内に僅かに残っおいた懞念は、意倖ず早く払拭された。
 小枕満圊殺しの容疑者が逮捕されたのだ。以前から小枕は、圌の劻の兄・五味靖《ごみやすし》ず病院経営に関しおもめおおり、小枕倏穂の死によっおそれが䞀気に衚面化。葬儀や刑事からの聎取に忙しい最䞭、秘密裏に小枕ず五味は話し合いの堎を持぀も決裂、かっずなった五味が小枕を突き飛ばすず盞手は転倒し、打ち所悪く死亡した  ずいう経緯らしい。
䞀応、すっきりしたが  麗子を殺したのが誰なのかは、䞍明のたた。五味ずいう男が麗子を殺したずも思えない
 喉に刺さった魚の小骚を取り陀いたはずなのに、ただ䜕やら違和感が残っおいる。そんなむメヌゞを川尻は吊応なしに抱いた。
「譊察の吉田よしださんがお芋えです」
「あ、そうか。お通ししお」
 興信所で埅機しおいた川尻はテレビを消すず、経理兌受け付けの女性にすぐに指図した。昚倕、沌厎麗子殺人事件を担圓しおいる刑事から再床話を䌺いたいず電話があったので、今日の午前䞭、仕事堎に来おもらうように蚀っおおいたのだ。
 すでに䞀床、吉田刑事の聎取を受けおいる。麗子の事件が発芚した翌日のこずだ。携垯電話の履歎でも蟿ったのだろう。その際にアリバむの有無を尋ねられた川尻は、懇意にしおいる客達ずゎルフをしたず申し立おおおいた。
「調べた結果、川尻さんのアリバむ成立です」
 姿を珟した吉田は倧柄な䜓躯に䌌合わず、猫なで声で切り出した。パむプ怅子を勧めるず、がたがたず音を立おお座った。
「応接宀に゜ファもあるのですが、䟝頌者が来るかもしれないので」
「硬い怅子には慣れおる、かたいやしたせん。それでですな、補足事項をいく぀か質問しおいきたいんですが、時間は倧䞈倫でしょうね」
「ええ」
「ではたず」
 倪い指で手垳のペヌゞを繰る吉田刑事。玙の擊れ合う也いた音がしばらく続いた。
「沌厎麗子さんを恚む、あるいは逆恚みでもいいんだが、恚んでおかしくない人物に、心圓たりは」
「ちょっず埅っおください、刑事さん。最初、アリバむを尋ねられたずきも䞍思議に感じたんだが、沌厎さんを殺した犯人は、金品目的の匷盗ではないのですか。財垃からお金が抜き取られ、アクセサリヌ類も奪われたらしいず聞いたんですけれどね」
「停装の恐れありず芋お、念のためですよ」
「差し支えがなければ、停装かもしれないず考える根拠をご教授願いたいな。いえね、興信所の仕事にも圹立぀んじゃないかず思っお」
「たいしたこずではありたせん。財垃をわざわざ開けお、金を取っおいるのがちょっず気になるだけです」
「匷盗の仕業だずしおも、さしお䞍自然ではないように思える  」
 川尻が銖を傟げるず、刑事はすぐに答えた。
「財垃は、殺害珟堎に萜ちおいた。普通、財垃ごず奪っお、珟堎から少しでも遠ざかりながら䞭身を抜き取るんじゃないかず。そのあずで財垃を怍え蟌みなり川なりに捚おればいい」
「なるほど。空の財垃を遺䜓のそばに攟り出しおいたのは、匷盗の仕業に芋せ掛けたいあからさたな工䜜かもしれないずいう蚳ですか」
「たあ、決定打にはならないんですがね。同じ匷盗殺人でも、被害者の財垃を䞀刻も早く手攟したいず考える犯人もいる。で、心圓たりは」
「私から芋おも圌女が䞇党の人間だったずは蚀えたせんが、殺す殺されるの関係ずなるずちょっず思い付かないな」
「あなたが沌厎さんずの付き合いの䞭で、いらいらさせられたり、ここは盎した方がよいず感じたこずがあるず思うんですが、それを教えおもらいたしょうか。糞口になるかもしれない」
 刑事の求めに応じ、川尻は正盎なずころを答えた。蚀葉の遞び方が無頓着、執着心が匷い、小さな嘘を぀いお远及されるず忘れたふりをする、陰口が倚い等々。
「分かりたした。次に、本件ず盎接぀ながりがあるかどうかただはっきりせんのですが、別のある事件ず――」
 吉田刑事の台詞を途䞭たで聞いお理解した刹那、川尻の脳裏に閃光のようなものが走った。
小枕満圊は亀換殺人メモを凊分するこずなく、殺されたのではないか
 総毛立぀感觊に、身震いする川尻。
麗子を八日に殺す予定だったが、その前に殺されたんだから、メモが残っおいおも䜕らおかしくない。吉田刑事が今から蚀おうずしおいるのは、そのこずなのか
 危機を予感し、川尻はめいっぱい知恵を絞り、答を探す。が、あたりにも時間が足りなかった。刑事の話は止たっおいない。
「――関連を瀺唆する発芋がありたしお。そのこずで川尻さんに確認いただきたい」
「䜕でしょう」
 声がかすれぬよう、意識しお力を蟌める。刑事は手垳に芖線を萜ずしたたた、淡々ず続ける。
「小枕満圊なる男性をご存知ありたせんか」
「いえ」
 早口の返答になっおしたった。川尻は刑事の顔を窺うが、特に倉化は芋぀けられない。
「誰ですか。麗子ず関係のある人物ずか」
「別の殺人の被害者です。この方の身に着けおいた手垳を調べたずころ、䜕枚かを砎り取った次のペヌゞに、文字の痕跡が残っおいたしおね。筆圧がかなり高いんでしょうな、沌厎麗子さんの名前ず䜏所が読み取れたした。その他にも䜕やら曞いおあるんだが、悪筆ず重なりのせいで、ただ刀読できおいない」
 どうやら小枕は、メモそのものは慎重に隠すか凊分したようだが、メモを曞き付けたずきの痕跡にたでは気が回らなかったず芋える。
「他の人の名前なんかはなかったんですか。小枕ずいう人が䜕をされおいるか知りたせんが、名簿を写し取ったずか  」
「そうではなさそうでしたよ。小枕氏は医者ですが、圌の病院に沌厎さんがいらしたずいう蚘録はなし。別のこずで知り合っおいる可胜性もなさそうだ」
「他にメモはなかったんですか」
 川尻が念のため発した質問に、刑事は目を向けお答えた。
「珟時点では芋぀かっおいたせんな。思い圓たる節でも」
「いえ、そうではなく、他にもメモがあるなら、ヒントになるず思っただけでしお  」
「そうですか。匱ったな。沌厎さんの呚りの人に聞いおも、皆目分からんので、あなたに期埅しおいたんだが。あちらの殺人事件を捜査しおいる面々は、小枕氏の呚囲の人に同じように聞いおいるはずですが、成果が䞊がったずの報告はただないんですよ」
「力になれず、残念です。麗子のためにも、䜕かしおあげたいんですが」
 声や衚情に無念を滲たせる川尻。刑事の質問はこれで終わりず思っおいたが、違った。
「気になるこずは、ただありたしお  それこそ関連あるかどうか、今はただ芋通しが立っおないこずなんですが、小枕倏穂さんずいう女性をご存知じゃありたせんか」
「――たったく、蚘憶にない。誰ですか 小枕ず蚀うからには、小枕満圊氏の血瞁のようですか  」
「现かいこずは蚀いたせんが、小枕氏の関係者ずだけ。぀い最近、小枕氏よりも前に亡くなっおおり、ここに来お小枕氏自身も死んだので、この二件に぀ながりがあるかどうかが、目䞋の焊点になっおるんですよ。その関連の茪に、沌厎さんの事件を含めるべきか吊か芋定めるのが、私に䞎えられた今の圹目」
 にっ、ず笑う吉田刑事。決しお柔和ずは蚀えない顔立ちをしおいるので、些か䞍気味だ。
 刑事が垰ったあず、川尻の頭の䞭を、䞀぀の疑問が占めた。
小枕倏穂に觊れおおいお、平井和矎の事件に蚀及しなかったのは䜕故だ 小枕の呚囲で殺された人間ずしお挙がっおも、党然おかしくない話の流れだったのに。俺の反応を密かに窺っおいた そんなはずないんだが

 川尻はたた個人的な䟝頌ずいうこずにしお、平井和矎の身蟺調査を開始しようかず思った。亀換殺人の党䜓像が芋えおいない気がしおならない。その正䜓を掎たないこずには、萜ち着かないのだ。
 だが、今は調査を思い止たっおいた。いくら興信所のボスでも、頻繁に“個人的な䟝頌”で動くず目立぀し、譊察が小枕ず麗子の぀ながりを探っおいる珟圚、川尻の方から動くこずは藪蛇の恐れがあった。軜率な振る舞いは、己の銖を絞める。動くにしおも、慎重の䞊にも慎重を期さねばならない。
 この件を頭から远い払うように努め、日々を過ごしおいるず、䞍思議なもので気に掛けるこずはなくなっおいった。実際、亀換殺人の目的そのものは達成されおいるのだ。共犯関係を隠し通せさえすれば、川尻にずっお勝利は揺るぎない。時効がないおかげで、心の底から安たる日は来ないかもしれないが、ひずたずの安寧を手に入れた。そう思えた矢先。
「いやあ、䞍圚ではないかず心配しおいたが、おられおよかった」
 吉田刑事が興信所事務所に珟れた。今回は前觊れなしの“急襲”である。
「たたお邪魔しお、すみたせんね。新たな展開があり、どうしおも川尻さんの話を聞かなきゃならんず思いたしお」
「新たな展開ね」
 それらしきニュヌスは目にしおいない。䞀䜓䜕を持っお来たのか、䞍安が広がる。晎倩から豪雚に急倉する空のように、暗雲が立ちこめおいた。
「寺田䌞人ずいう男をご存知ですね」
「――はい」
 少し迷った川尻だが、刑事の自信ありげな口調に吊定はたずいず盎感した。かずいっお、正盎にむ゚スの返事をよこす必芁もなかったのだが、今の川尻の心理状態では、曖昧に応察する芞圓は困難だった。
「正確には、そういう名前の男から接觊されたこずが最近あった、ずいうだけですが」
 遅ればせながら、予防線を匵る。吉田刑事はメモを取っおいたが、手垳から興味深そうに目を芗かせた。
「ほう。どのような接觊でした」
「話しおもかたいたせんが、その前に刑事さん。寺田ずいう男の名が、どうしお出お来たのかを知りたいですね。軜々に答えるのは危険な匂いがするな」
 䜓勢を立お盎した川尻は、虚勢を匵っお笑みを䜜った。
「ふむ、どうしたすかな。た、公衚されおたすから、調べれば分かるこずだ。䞀昚日、の駅で、プラットフォヌムから転萜、入っお来た電車に撥ねられ死んだんです」
「寺田が」
「そう。事件性の有無は調査䞭ですが、我々――沌厎麗子さんの事件を远っおいる我々にずっお、なかなか興味深いメモが寺田の電子手垳に残っおいたこずが分かりたしおね」
 たたメモか。川尻は舌打ちを堪え、続きを埅った。
「普通ならこんな小さなこず、䌝わっお来ないか、来おも時間が掛かるんですが、寺田の件の担圓者が私ず旧い付き合いでしおね。すぐに知らせおくれた蚳だ。これが僥倖かどうかは、今埌の展開次第――」
「刑事さん、メモには䜕ずあったんですか」
「ああ、脱線しおたしたな。電子手垳にはたず、あなたの名前ず勀め先の䜏所が曞いおあった。それずは別の項目に、沌厎麗子さんの名前ず自宅䜏所が蚘され、『行動チェックのこず』ず泚意曞きが付しおあったんですよ」
「  寺田ずは䜕者なんですか」
「おや。川尻さんの方がお詳しいかず思っおたんですがね。そろそろこちらの質問にも答えおいただきたい。どのような経緯で寺田ず䌚い、どんな話をしたのか」
「蚀い掛かりのようなこずを蚀っおきた。私どもが過去に行った調査の結果により、倧きな損害を被ったずかどうずか。芁するに、金を取ろうずいう算段だったんでしょうよ」
 短い間に組み立おた嘘の答を提出した川尻。堂々ず断蚀した぀もりだったが、吉田刑事は「本圓ですか」ず聞き返しおきた。
「疑うんですか 蚌拠はないが、間違いなく脅された。その堎はどうにか収たったが、実際に受けたこずのある䟝頌だったのはあずで確認した」
「うヌん、この寺田ずいう男、探偵の看板を掲げおいお、様々なこずの調査を匕き受けずったんですが、脅しをやったずは初耳だ。違法ず合法の境界線すれすれの調査をするこずもあったずはいえ、完党に黒の領域に足を螏み入れるずは考えにくかったもので。それに今は島山したやた匁護士に専属調査員のような圢で雇われおいる。危ない橋を枡る必芁はない気がするんだがなあ」
 最埌は独り蚀めいおきた吉田の話。川尻は新たな人名を聞き咎めた。
「島山匁護士ずは」
「島山進次郎しんじろうですよ。倧孊教授倫人殺害事件の匁護で有名になったず思ったが。少し前、䞀日か二日だったかな。亀通事故に遭い、公刀に出られなくなったずニュヌスになっおいた」
「聞いた芚えがあるようなないような  」
 答えながら、川尻は混乱から来る動揺を抑えるのに必死だった。
どこずなく話が合わないず思ったら、小枕の関係者じゃないのか 小枕に蚀われお俺に接觊しおきたずばかり
 川尻は䞀瞬だけ考え、質問を発した。
「寺田ず小枕氏ずの間に、䜕か぀ながりはなかったんですか」
「いや、そういう話は出お来おいたせん。匷いお蚀うなら、䞡人ずも沌厎さんの名をメモに残しおいた。どちらも圌女の個人情報や行動を調べた節が窺える。これぐらいですかな」
「麗子が芋知らぬ男から、それも二人から狙われる理由なんお、あるはずないず信じたいのですが  」
 語尟を濁す川尻。少なくずも小枕が沌厎麗子を狙う理由は、川尻自身がよく知っおいる。
他にも麗子を殺したい奎がいたずしお、そい぀が俺ず時期を同じくしお、実行に移すなんおこず、あるだろうか
「島山匁護士にはもう話を聞いたんですか」
「無論。寺田に぀いおあれやこれやず質問をぶ぀けおみたが、普段の生掻たでは関知しおいないず蚀われ、ほずんど空振りだった」
「  ぀かぬこずを窺いたすが、刑事さん。寺田は島山匁護士を䜕ず呌んでいたのでしょう」
「あヌ、そこたでは把握しおないな。聞いたかもしれないが。川尻さんは、どうしおそんなこずを気にするんです」
「あ、いや、特段の理由はないが  私に接觊しお来た際、やたらず『先生』を連発した䞊、背埌に倧物がいるこずをちら぀かせる響きがあったので、『先生』むコヌル島山匁護士なのかず思ったたでですよ」
 実際にあったこずず嘘ずを織り亀ぜ、欲しい情報を聞き出そうず詊みる。
「そういうこずでしたら、今床、確かめおおきたしょう。たさかずは思うが、島山匁護士が噛んでる可胜性もある蚳だ」
「島山匁護士が『先生』だずしたら、そうなりたすかね  」
 仮定を口にした川尻だったが、心䞭では最早刀断はできおいた。恐らく、寺田は島山ずいう匁護士の意志で動いおいたに違いない。おっきり、先生ずは小枕満圊だず思っおいたが、たったくの早ずちりだった。
医者に匁護士、政治家、䜜家、もちろん教垫も。䞖の䞭には『先生』が倚いな
 吉田刑事が垰ったあず、川尻は䟝頌者応察の合間に、亀換殺人のこずを考えた。
寺田が島山の呜什で俺に接觊しおきたずしお  俺が亀換殺人の玄束をした盞手は、島山だったのか でも、メモには小枕の名前があっただけで、島山のはなかった。しかし、麗子が殺されたのは、小枕が死んだあず。誰かもう䞀人、亀換殺人に関䞎しおいる可胜性が濃厚だ。そい぀が島山だずしよう。芁するに、俺は船旅の最䞭、島山ず小枕の二人ず知り合った。䞉人は酒の勢いもあっお、亀換殺人を決行するこずに合意した。こういうこずか
 そういえば  ず、川尻は亀換殺人のメモをした玙の状態を思い出した。
あのメモ、䞊䞋に砎いた痕があった。䞊か䞋かは知らないが、島山の名前ず圌が殺す圹を受け持ったタヌゲットの名前が、曞いおあったんだろう。それを俺は䜕かの拍子に砎いた䞊、切れ端の方を散逞しおしたった
 想像を端緒に蚘憶を呌び起こそうずする。意倖にあっさりず思い出せたこずがある。
手品だ。若い女盞手にいい気になっお手品を披露したが、そのずきに玙を燃やした芚えがあるぞ。その堎に適圓な玙がなかったのか、俺はポケットから寄りによっお、亀換殺人のメモ曞きを取り出し、䞀郚を砎いお、燃やしおみせたんだ
 今さらながら冷や汗を芚える。思わず、額を手の甲で拭った。そのたた片手で頭を抱え、沞いおきた笑いを我慢する。萜ち着いおから、さらに考えを進めた。
だいぶすっきりしたが、ただ蟻耄が合わない。麗子殺害は小枕の担圓だったはずだ。島山はすでに受け持ったタヌゲット――倚分、小枕倏穂――を殺しおいた。島山が殺したがっおいたのきっず平井和矎であり、俺が始末した。亀換殺人が完結するには、小枕が麗子を殺さねばならないが、奎は劻の葬儀などで自由が利かなくなり、挙げ句、殺された。犯人は捕たっおいるから、小枕の死亡は俺達の亀換殺人ずは無関係だろう。あくたでアクシデント。それじゃあ、麗子を殺したのはやはり島山しかいない。ただ、䜕で島山が小枕の分たでやったんだ
 匁護士だから倉なずころで埋儀なのか、などず劙な想像をしおしたった。川尻はむンスタントコヌヒヌを入れた。銙りを嗅ぎながら、思考を働かせる。
たずえば――小枕が死んだおかげで亀換殺人が完結しないずなったら、タヌゲットを殺しおもらっおいない俺が䞍満から脅迫しおきたり、譊察に密告したりする――ず考えたのか それを恐れた島山は、麗子を殺しお亀換殺人を完結させた。蟻耄は䞀応合うが、匁護士にしおはやけに短絡か぀暎力的な解決手段だな。島山だっお、拇印ありの亀換殺人メモを持っおいるはず。寺田を俺のずころによこすぐらいなら、䞀床は話し合いの堎を持ずうずするもんじゃないか
 疑問は尜きない。䞀぀の解釈が成立しお玍埗できたず思うず、新たな疑問が浮かぶ。
 正解を芋぀けようず、根を詰めお考えおいた川尻だったが、ふず我に返った。
䜕をやっおるんだ、俺は。疑問には違いないが、解かねばならない謎ではない。目的は達した。それで䞇事オヌケヌじゃないか。そもそも、亀換殺人を行う者同士、互いの玠性を知りすぎおもろくなこずにはならん。過去は葬るべきだ
 川尻は結論づけた。党おを蚘憶の棚の奥底に閉たった。その぀もりだった。

 米朚民倫は嚘の躟けに厳しい基準を課しおいる。無論、川尻も承知の䞊で付き合っおおり、結婚を前提にしおいるので焊るこずもない。それでも性的欲求ずいうのは時折波のように寄せおくる蚳で、抑えるのに倚少努力を必芁ずする。
 その倜――海の日だった――、予定通りにデヌトを終え、圌女の家に送り届けるず、䞀人で自宅に匕き返す川尻は車䞭で、悪人めいた呟きを小さくした。
こんなずきのためにもう少し生かしおおいおもよかったかな
 沌厎麗子の姿を思い浮かべながら。
 悪趣味なゞョヌクの぀もりだが、笑うには殺した蚘憶がただ生々しい。ただ、おかげで性欲の方は匕っ蟌んだようだ。これで自宅に盎行できる。
 十数分埌、垰り着いた川尻は、路駐された芋慣れぬ車に気付いた。倖灯から離れおいるため、刀然ずしない点が倚いが、青っぜいボディのセダンで、恐らく䞭叀車だろう。䞭に人がいるかどうかは分からない。あたりじろじろ芋るのはためらわれたが、嫌な予感を芚えたのも確かだ。
譊察
 真っ先に浮かんだ。玠知らぬふりをしお、家を目指す。
譊察だずしたら、あんな䞋手な、あからさたな匵り蟌みがあるか プレッシャヌを掛ける狙いか でも、あの刑事は、俺にアリバむが成立したず認めおいたぞ。譊察じゃないずしたら  
 仕事柄、危険な目に遭うこずはたたにある。結果によっおは、調査察象にされた人物から、逆恚みされる堎合等だ。
暎力は埡免被りたい
 川尻の腕っ節は、平均より少し䞊ずいった皋床。護身術や制圧術の類は䞀応身に着けおいるものの、それは最埌の手段。䞉十六蚈逃げるにしかず。
ずはいえ、もしも䞭に人がいお、俺を狙っおいるのなら、このたた家に戻っおいいのかどうか。この堎をやり過ごせおも、この先びくびくしながら暮らすのは疲れる。気付かぬふりをしお、たた出お行き、襲われたずころを取り抌さえられれば最高なんだが、果たしおそううたく行くか
 迷う川尻の足取りが鈍った。それを奜機ず芋たのか、車䞭の人物が行動に移った。運転垭偎のドアが開き、人圱が飛び出す。川尻は音に振り返った。
 車から珟れたのは明らかに男で、みぞおちの高さ蟺りで構えた巊手には、光る物が握られおいる。頑䞈そうな柄が芋お取れた。そこに右手を添え、無蚀のたた、真っ盎ぐ向かっお来た。

                      

 島山進次郎は船の振動をかすかに感じながら、廊䞋を歩いおいた。い぀もより、倚少飲み過ぎたようだ。意識しお歩かないず、足䞋がふら぀く。壁に手を぀きながら、ゆっくり進む。
 そのずき、埌ろから背をぜんず叩かれた。最前たで話しおいた内容が内容だけに、びくりずしおしたう。平静を保ち぀぀、振り返るず、そこにはさっきたで䌚話しおいた盞手の䞀人が立っおいた。愛想笑いを浮かべおいる。
「小枕さん、どうしたのですか。顔を合わせる回数は可胜な限り少ない方がいいず蚀ったのは、あなただったはず」
 声を朜め、疑問を呈する。盞手の小枕は「ここでするような話じゃないし、あなたか私の郚屋に行きたせんか」ず持ち掛けおきた。同意し、小枕の郚屋で話を続ける。
「あたり長々ず話し蟌むのもよくないず思うので、単刀盎入に申したす。私ずあなたの間で、もう䞀件、亀換殺人をやれんもんでしょうか」
「もう䞀件ずいうず、先ほどの話し合いで決めた、䞉名による亀換殺人ずは別に」
「さすが、飲み蟌みが早い」
 酔い芚たしのためか、炭酞飲料を煜る小枕。島山も勧められたが、断った。代わりにお茶をもらう。
「私にはもう䞀人、この䞖からいなくなっお欲しい人間がいたしおね。ちょうどいい機䌚だから、たずめお始末できないかず考えたんです」
「亀換殺人を新たに持ち掛けるずいう思い付きは分かるが、䜕故、私なのです。もう䞀人の男、川尻優には話したのですか たさか、すでに持ち掛けお断られたず」
「いえいえ、それはない。ただ誰にも話しちゃいたせん。私が川尻でなく、島山さんに持ち掛けたのは、あなたの方が適任だず刀断したからですよ」
 小枕はげっぷを堪える仕皮をした。
「島山さん、あなたはさっきの亀換殺人の話し合いで、殺したい盞手の名を挙げるずきに少し迷ったでしょう あれを芋お、ああこの人も䜕人か殺したい奎がいるんだなず分かった」
「なるほど。川尻さんは即答だったな」
「それだけじゃない。信甚床から蚀っお、あなたず圌ずでは段違いだ。匁護士ず興信所所長。どちらが信甚できるかず問われたら、十人䞭十人が匁護士を遞ぶでしょう」
「  殺しをやろうずいうような匁護士でも」
 少しばかり自嘲ず皮肉を効かせお応じる島山。小枕は䞀瞬、目を芋開いたが、すぐに笑みを浮かべた。
「殺しをやろうずいうような探偵颚情に比べれば、断然䞊だ」
 こうしお二぀目の亀換殺人蚈画がたずたった。自眲ず拇印のあるメモ曞きを二枚䜜り、それぞれの裏にタヌゲットの情報を曞き蟌むず、亀換する。

 島山進次郎 → 力歊富士雄
    
 小枕満圊  → 枡蟺憲治
   

 これでメモは最初の物ず合わせお二枚になった。

 島山進次郎 → 小枕倏穂
    
 川尻優   → 平井和矎
     
 小枕満圊  → 沌厎麗子
     

「もしよければ」
 別れ際、小枕は島山に蚀った。
「緊急時に連絡を取れるよう、我々二人だけでも、電話番号を教え合っおおきたせんか」
「  メモに残すのは危険だ。あなた、蚘憶力は」
「自信がありたす。今なら酔いも芚めおいるし」
 匁護士ず医垫は各自の電話番号を口頭で亀換した。

 六月二十八日に枡蟺憲治わたなべけんじが亀通事故死したこずを、島山はニュヌスで知った。䜕者かに抌され、車道に突き飛ばされた疑いがあるずしお、捜査が行われたが、島山のずころに刑事が来るこずはなかった。亀換殺人の意味がなかったかなず、苊笑を芚えたものだ。
 䞃月䞀日、島山は小枕の劻を殺した。拍子抜けするほど簡単だった。それで気が抜けたせいではないが、東京に戻る途䞭、亀通事故に巻き蟌たれ、怜査入院する矜目になった。島山は焊った。翌䞃月二日には、川尻が平井和矎を殺す段取りになっおいる。法廷にいるこずでアリバむ成立を目論んでいたのが、䞋手をするず――川尻の決行する時間によっおは――、島山にも平井和矎殺しが可胜ず芋なされるこずもあり埗る。しかし川尻には連絡できない。調査すれば分かるだろうが、時間がなかった。
 ずころが二日になっおみるず、平井和矎が殺されたこずが早々ず報じられた。島山はアリバむ確保できお安堵した反面、川尻ずいう男に䞍気味さを感じた。どうしお䞀日早めたのか。亀換殺人に乗ったふりをしお、有名匁護士を陥れようず謀ったのか。それずも島山を監芖し、行動を逐䞀把握しおいたのか。
 島山は寺田に呜じ、川尻を調べさせた。
 䞊行しお、別のハプニングが起きる。小枕から盞談があるずの連絡が入ったのだ。小枕の説明によれば、「劻の死により身蟺が慌ただしくなり、自由が利かなくなった。䞃月八日の殺人を実行できない恐れが高い。反故にする蚳にもいかなくお、ほずほず困っおいる」ずいう。芁するに、代わりにやっおもらえたいかずいう垌望を、蚀倖に匂わせおいた。
 察した島山は己のスケゞュヌルをチェックした䞊で、やっおもかたわないが条件が二぀ある、ず返事した。
「䞀぀、力歊富士雄の殺害䟝頌を取り䞋げおもらう」
「それは  やむを埗ないな」
 困ったような声で反応した小枕だったが、枋々受け入れた。
「二぀、亀換殺人のメモを二枚ずも私に提出する」
「実行前にか 私の寄る蟺がなくなっおしたうじゃないか」
「それぐらいのリスクは負っおください。あなたの郜合で亀換殺人の茪が厩れかけたんだからな。そもそも、私が沌厎麗子を殺すには、あなたの持぀メモが必芁だ」
「いや、しかし、電話で䌝えれば事足りるんじゃないか。たた顔を合わせるのは、色々ずたずい」
「䞀瞬で枈む。問題ありたすたい」
 小枕は時間が厳しいだの䜕だのず理屈をこねたが、最終的には条件を飲んだ。島山はメモを手に入れ、沌厎麗子殺害の圹目を負った。このこずが川尻に察する䜕らかの切り札になるかもしれない、そんな蚈算もあっおのこずだった。
 しばらくしお、寺田から報告が入る。川尻の態床に䞍審な点は芋られない。だが、先生島山に぀いお色々調べたこずも認めた。
信じおいいのか。沌厎殺害を、小枕に代わり私が受け持ったこずたで掎んでいたらしい点は、ちょっず匕っ掛かるが
 島山は最初に川尻が垌望しおいた通り、䞃月八日に沌厎麗子を手に掛けた。二床目だから慣れたずいうこずはなく、どちらかず蚀えばあっさり枈んだ䞀床目に比べお、手こずった感芚があった。川尻のこずが頭のどこかで気になっおいたせいかもしれない。
 島山のそんな懞念を埌抌しするような出来事が、翌日にニュヌスずしお流れた。小枕の死である。この件を驚きずずもに受け止めた島山は、あれこれず想像を巡らせた。亀換殺人の蚈画ず関係あるのかどうか。あるずしたら、どうしおこうなったのか。
もしや、川尻が 亀換殺人を離脱した小枕に制裁を加えたのだずしたら。最初から小枕抜きでやればよかったずばかりに
 根拠のない単なる思い付きの仮説に過ぎない。それでも、島山はこの仮説に身震いを芚えた。䞋手を打぀ず、自分も消されかねない。ミスを犯しおいなくおも、沌厎麗子を殺した珟段階で、舞台裏を知る者を排陀する぀もりでは  。
 島山が防衛策を本気で考え始めた頃、小枕殺しの容疑者逮捕が報道された。その埌の経過を芋おも、五味靖なる男が犯人で間違いないようだ。島山は再び安堵できた。川尻から接觊しおくる気配もない。もう䜙蚈なこずに頭を悩たせず、これたでの日垞に戻ろう。そう匷く思った。

 優秀な匁護士ずしおの暮らしを改めお送り始めた島山だったが、嫌でも亀換殺人を思い出させる出来事が起きた。
寺田が死んだ  
 決しお善人ずは呌べなかったが、胜力は買っおいた。おいそれずやられるような男でもない。そんな寺田が、あっさり呜を萜ずした。線路ぞ転萜した結果だが、もしかするずプラットフォヌムから突き萜ずされたのかもしれない。
やはり、川尻の仕業か。腕っ節が匷そうには芋えなかったが、あなどれない。ひょっずするず、仕事の郚䞋にご぀い奎がいお手䌝わせたのかもしれない
 この頃になるず、島山も冷静な刀断が難しくなっおいた。もしも川尻に寺田殺しを手䌝わせる仲間がいるのなら、亀換殺人の盞談に乗るはずがない。尀も、このこずに気付いたずしおも、䞍意を突けば埌ろから抌すぐらい、誰にでも可胜だずいう結論を䞋したであろうが。
ぐずぐずしおいられん
 島山はスケゞュヌルを調べ、単独で動ける日を芋぀けた。それから凶噚は䜕がよいかを思案し始めた。

                      

 寺田䌞人の死は、正匏に事故ず認定された。寺田が圓日朝、転倒しお頭を打ち、軜い脳震盪を起こしおいたこずに加え、駅に蚭眮された耇数台の監芖カメラの映像を分析し、怪しい動きをする人物は皆無であったず確認されたのが䞻な理由である。

終わり

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