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順番を間違えなければ未来は(だいたい)予測できる

「なぜ流されなかったんですか?」

 ここ数年、自動車業界では「日本メーカーはEVで出遅れた」「EVシフトに乗り遅れた日本は終わる」「SDVの時代になればソフトウェア企業が自動車メーカーを駆逐する」といった論調が繰り返されてきた。そうした報道に対して、筆者は比較的早い段階から違和感を表明してきた。結果として、その後市場環境は大きく変化し、中国メーカーの過剰生産問題やEV需要の伸び悩み、各国の政策修正、マーケットのハイブリッド回帰などが相次いだため、「どうしてあの時点でわかったのですか」と聞かれる機会がずいぶん増えた。もちろん、それはありがたい評価ではある。しかし正直に言えば、その質問には少し困ってしまう。なぜなら、筆者自身には「未来を予測した」という認識がほとんどないからだ。

 世の中には、「池田はメーカーの内部情報をたくさん持っているから分かるのだろう」という見方をする人もいる。あるいは、「メーカー寄りだからそういう結論になる」「逆張りを狙っている」と考える人もいるらしい。しかし、どれも少し違う。

 もちろん筆者は長年この仕事をしているからそれなりに人脈はあるし、取材でしか得られない情報も少なくない。でも、それが結論を左右する決定的な要因だったことは、実はほとんどない。むしろ、メーカーから詳しい説明を受けるより前に、自分の中ではおおよその見立てができていることの方が多いし、その見立てがあるからこそ、取材でも何を聞けばよいのかが見えてくる。つまり、情報が結論を作っているのではなく、考え方が情報の集め方を決めているのである。

 これはよくメディア批判で言われる「最初から結論を決めつけて、それに合った話だけを取り上げる」こととはまったく違う。見立て=自分の仮説を事実と並べて比較検証して、これは違うと思ったら、すぐにバラして立て直す、というものだ。

 では、その見立て、仮説をどうやって立てるのか。筆者が20年以上、取材でも執筆でも意識してきたことは、おそらく読んだ人が驚くほど単純である。

 ただ、単純なのだが、多くの人は順番を逆にして考えている。その違いが、結果としてまったく違う景色を見せることになる。筆者は未来を予測していたのではない。少なくとも、自分ではそう思っていない。やっていたのは、もっと地味で、もっと時間がかかる作業だった。

 その思考の工程そのものを、一度きちんと言葉にして残してみたいと思う。


最初に順番を間違えると全てが狂い出す

 ここで難しい理論や独自の分析フレームワークを期待されたら申し訳ないのだが、実際には拍子抜けするほど単純である。筆者が常に意識してきたことは、何か出来事が起きた時、まず目の前のリアリティを確認することだった。そして、次のステージで「この意思決定には理由があるはずだ」という前提を置き、その理由を探す。最後に、その出来事が何を意味しているのかを考える。この順番を変えない。ただ、それだけである。

 当たり前の話ではないかと思われるかもしれない。しかし実際には、多くの議論がこの順番とは逆に進む。いや、本当なのだ。

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