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南鳥島のレアアース開発、やらない手はないと思う理由

 南鳥島沖合、水深約6000mの海底に眠るレアアースに関しては、もうずいぶん以前から取り沙汰されてきた。何故この話題が注目を集めるのかと言えば、南鳥島のレアアースは世界的に見ても極めて高品位かつ、量的にも膨大だからだ。

画像右下が南鳥島の位置(出所:海上保安庁)

 ここからはだいぶ雑だが、レアアースの話の中にレアメタルの話も含めてしまう。本当はレアアース(希土類、17種類の元素)はレアメタル(希少金属)の部分集合なので、どちらかで代表させるならレアメタルと書いた方が正確なのだが、ニュースを駆け巡る南鳥島の話はもうスタンダードが「レアアース」ということになっており、筆者だけがその流れを逸脱して、レアメタルと書くとむしろややこしいと思うのだ。正直これはちょっと悩んだが、長いものに巻かれておく。


 定義の話はともかく、現実の製造業ではレアアース、レアメタル、どちらも重要な資源であり、特に自動車産業では、電動化の一方の主役であるモーター関係でレアアースのネオジムやジスプロシウム。半導体関係には同じくレアアースのイットリウム、スカンジウムや、こちらはレアメタルのゲルマニウムなど。もう一方の主役、バッテリーの方はと言えばこっちはレアメタルが重要で例えばニッケル、コバルト、マンガンあたりは高性能バッテリーに欠かせない。なので本文ではレアアースと表記するが、その実、レアメタルの話もひっくるめてされているとご理解いただきたい。

レアアース泥の分布(出所:経済産業省)

 と、いうところでいきなりの一例として、コバルトは、すでに調査が完了している南鳥島沖の1万平方キロメートル の海域だけでも日本の年間消費量の75年分が眠っていると推定されている。詳細については東京大学基金のページが最も参考になるだろう。筆者が色々検索してみた中で、信頼できる発信者のものとしては最も詳しかったので、ぜひリンクを参照されたし。

南鳥島沖のレアアースはかなり素性がいいらしい

 品位の話をざっくり言えば、5000ppmから、局所的には8000ppmという高い含有率であり、これは中国の陸上鉱山の20倍の品位という「超高濃度レアアース泥」である(1ppm=0.0001%)。しかも、通常陸上鉱山で採掘したレアアースを含む岩石などは、精錬の前工程で機械で破砕する必要があるが、南鳥島のレアアースは最初から破砕する必要のない“泥”であることから、選鉱過程が容易かつ、特定の粒径にレアアースが集中する傾向があり、簡易な遠心分離によってさらに高品位化できる可能性もある。

■採掘から製品化までの工程(一例)

  • 採集:海底や地底から鉱物を採集

  • 破砕:岩石に鉱物が含有されている場合、岩石を破砕する

  • 選鉱・分離:不要な石などを取り除き鉱物成分だけを選び出す作業

  • 製錬:鉱石から熱や化学処理を用いて金属を抽出する工程

  • 精製:不純物を含む粗金属から微量不純物を除去、高純度化する工程

  • 残泥・残渣処理:泥や残渣を化学薬品などで無害化し、処分すること

  • 製品作成:商品原材料に整えること

 レアアースには重レアアースと軽レアアースが存在し、軽レアアースは比較的広く世界に分布するが、重レアアースは中国が生産の大部分を占めている。中国の輸出規制政策などの影響から、レアアースのサプライチェーンの脆弱性が指摘されているのはこのためだ。EVのモーターなどに利用されるのはこの“重”の方。そして、南鳥島で採掘されるレアアースは“重”である。この意味は極めて大きいだろう。

 意外に誤解されているが、レアアースがその名の通り地球上に希少なものかと言うと、それはちょっと違う。あるなしで言えばありふれている。例えばそこらの海水にも含まれている。ただし濃度は極めて低い。そういう低濃度の話であれば、海水にはわれわれが必要とするレアアース以外にも、鉛、水銀、カドミウム、ヒ素、クロム等の“有毒”重金属もまた含まれている。まあそもそもわれわれが欲しがっているニッケルやコバルトやマンガン、ネオジム、イットリウム、スカンジウムだって程度の差はあれ全部人体に有害である。レアアース鉱床で都合よく欲しいものだけが濃縮されるわけもなく(実は例外があるがそれは後述する)、濃縮はあまねく行われるだけの話で、そこに人間が勝手に利用価値を見出しているだけの話である。

 理屈としては海水に含まれる微小濃度のレアアースをどんどん濃縮していけば、レアアースは取れる。そこで思い出して欲しいのだが世界的に良質な鉱床ですら8000ppm(0.8%)なのだ。それが濃縮目標。標準的な海水中での含有量は鉱床の1億分の1レベル。濃縮と一言で言っても、とてつもない量の海水を人為的に加温・蒸発させねばならず、当然膨大なエネルギーが必要で採算が合わないし、仮に濃縮できたとしても、副産物として先に挙げたような海水が含有する有毒物質が一緒に濃縮される。もっと言えば、放射性物質も。こちらも言うまでもなく有害。

 つまり海水の微量成分が極度に濃縮され、高濃度になればそれは危ないものだらけなのだ。簡単な話、「レアアースの濃度が高い」ということは「危ないものの濃度が高いかもしれない」と考えた方が良い。「かもしれない」について説明しよう。

採掘が環境に与えるダメージの違い

 レアアースについて回る「危ないもの」の問題は、レアアースの生成パターンによってヤバさが異なる。レアアースにはいくつかの生成パターンがあるのだ。

 以下の部分は国立研究開発法人海洋研究開発機構の記事をベースにまとめている。基本的な部分では間違わないように真摯にまとめたつもりではいるが、専門家から見たら、間違った用語の使い方や乱暴な説明があるかもしれないのでそこはご容赦のほど。残念ながら力及ばずご指摘があれば、後日でも修正を加える。

1. 溶岩が対流しながら、徐々に鉱物が部分的に結晶化して離脱する。その後で残った残留液体 ─ ─ それが冷えて固まると岩石になる。レアアースはこの岩石の中に残留する形で生成される。このパターンでは軽レアアースが残留しやすく、また放射性物質の含有量も比較的多いため、精製プロセスでの環境問題解決のハードルは高い。米国や豪州などでも産出される。

2. 花崗岩が風化後(石もさまざまな理由で風化する)、粘土質鉱物になり、この粘土質がレアアースを吸着する性質によってレアアース鉱床を生成する。重レアアースを豊富に含み、多くが中国南部の広東省、江西省などで産出される。

3. 地形の隆起などによって膨大な海水が長い年月の間に干上がると塩湖を形成する。レアアースは海中に薄く広く遍在しているため、こうした塩湖の泥などにレアアースが含まれている。当然海中に溶けているあらゆる物質が凝縮されるので環境負荷のハードルが高い。南米などで開発が進行中。

4. 海水中の微量のレアアースは、同じく海水中の酸化鉄と化合して沈降し堆積する。そこで深海に溜まった魚類の骨や歯に含まれるアパタイトに取り込まれて鉱床が生成される。化合によって選択的に生成されるため、トリウムやウランなどの放射性元素の含有量が極めて少なく、さらに、ヒ素や水銀などの有害金属を含んでいない「クリーンな重レアアース」となる。

 つまりこの4番に該当するのが南鳥島のレアアースである。現在中国がほぼ寡占し、サプライチェーンのレジリエンス低下が問題になっている重レアアースが、高品位(高濃度で有毒物質や放射性物質の含有が少ない)かつカントリーリスクが極めて少ない日本で採掘できるインパクトは大きい。

海底の資源、右端がレアアース泥(出所:経済産業省)

 「そんなに有望ならば、とにかく早くやれ」と言いたいところだが、実はこのプロジェクトには反対派がかなり多い。検索すればいくらでも記事は出てくるが、目に付いた記事を2つ挙げておく。(記事1記事2

反対派の主張「難しい」「成り立たない」

 まず採掘に関わる技術的なハードルだ。レアアース泥が存在するのは深度約6000mと、極めて深い場所にある。深海に空気を圧送し、パイプ中の泥を空気の浮力で押し上げる。石油採掘などですでに確立された方法ではあるが、一般的に石油は深度2000m程度、最大例では5000mクラスもあるが、それは地上の油田の話。海中に限定すれば現在の最高深度が3000m程度という。今回の深度は従来比でかなり深いのは確かだ。

 当然未知の部分はあるだろうが、一方で既存技術の延長線上にあるのも事実。この深度ひとつをもって完全否定する意見には賛同できない。

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