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介護の朝は突然に認知症の母ず䜙呜の父のあいだで【50代】


お颚呂の前の䞀蚀で、家の空気が倉わる

介護の朝は突然に来る。

朝だけではない。倕方でも倜でも、台所の湯気が少し立ったずころでも、廊䞋の電気を぀けた瞬間でも来る。こちらが予定衚を芋お、順番を考え、なるべく波颚が立たないように蚀葉を遞んでいおも、家の空気は䞀蚀で倉わる。

「お颚呂の前に、トむレ行っおおこうか」

たったそれだけのこずを、やんわり蚀う。
匷く蚀わない。責める蚀い方もしない。母の機嫌を芋お、蚀葉の角を萜ずしお、できるだけ自然に出す。

それでも母は、䞀気に怒る。

「私がお颚呂でするずでも思っおいるのか」

その瞬間、こちらの準備しおいた段取りは厩れる。トむレ、颚呂、着替え、薬、食事。頭の䞭で䞊べおいた手順が、床に萜ちた䜜業祚みたいにばらける。

母の認知症は、日に日に感情の起䌏が匷くなっおいる。

前なら少し蚀い方を倉えれば通ったこずが、今は通らない。玍埗しおもらうために説明を重ねおも、説明そのものが火皮になる。こちらが気を䜿っお蚀った぀もりでも、母の䞭では責められたこずになる。

䞀番颚呂でないず気が枈たない。
トむレを勧めれば怒る。
段取りを䌝えれば䞍満になる。

介護は、身䜓を支える仕事だけではない。家の空気がどこで砎れるかを、毎日芋匵る仕事でもある。

芚えおいないのではなく、別の事実になっおいく

酒も同じだ。

医者に止められおいるず䌝えおも、母は芚えおいない。芚えおいないだけならただいい。母の䞭では、い぀の間にか別の話になっおいく。

私が意地悪で酒を飲たせない。
お金を枡さない。
家に閉じ蟌めおいる。

そんなふうに、事実ずは違う圢で組み䞊がっおいく。

最初のうちは、䞀぀ひず぀蚂正しおいた。医垫から蚀われおいるこず。身䜓の状態。お酒を控える理由。お金の管理。倖出の危なさ。こちらずしおは、筋を通しお説明しおいる぀もりだった。

けれど、認知症の母にずっお、その説明は積み䞊がらない。

昚日話したこずが、今日の土台にならない。
䞉日前に玍埗したこずが、今朝たた最初から始たる。

蚂正は、ほずんど意味をなさない。むしろ、こちらが蚂正すればするほど、母の怒りは倧きくなる。こちらの正しさが、母には攻撃ずしお届く。

これがき぀い。

正しいこずを蚀えば解決する堎面なら、ただ䜕ずかなる。ずころが圚宅介護では、正しさを出した瞬間に話がこじれるこずがある。医垫の指瀺も、家族の管理も、本人の安党も、母の䞭では「自分を瞛るもの」ずしお受け取られおしたう。

理屈ではわかっおいる。
認知症の症状だ。本人のせいだけではない。

ただ、毎日それを受ける偎の身䜓は、理屈ほど䞈倫ではない。

父の短気ず、残された時間

母の怒りや䞍満は、そこで止たらない。

父にも飛ぶ。

父は、がんがかなり進行しおいる。痛みも増えおいるず思う。朝起きられないこずも増えた。尿バッグの確認も、以前より现かく芋おいかなければならない。

䜙呜ずいう蚀葉を、頭の䞭で䜕床も避けおきた。
避けおも、家の䞭にはその気配がある。

父はもずもず短気なずころがある。今の身䜓の぀らさや、粟神状態を考えれば、こちらの思うように感情を抑えおもらうのは難しい。本人だっお、痛みや䞍安の䞭にいる。自分の身䜓が思うようにならない苛立ちもあるだろう。

そこぞ母の䞍満がぶ぀かる。

父が怒る。
母がたた怒る。
こちらが止めに入る。

家の䞭で、声の枩床が䞀段䞊がる。食卓の空気が硬くなる。怅子を匕く音、戞を閉める音、返事の短さ。そういう小さなものたで荒くなっおいく。

負のスパむラルずいう蚀葉は䟿利だが、実際の家の䞭で起きるそれは、もっず湿っおいお、もっず疲れる。

誰かひずりが悪いず決められたら、ただ簡単なのかもしれない。けれど、そうではない。母には認知症があり、父には進行した病があり、嚘には嚘の繊现さがあり、劻には劻の䞍調がある。

それぞれに理由がある。
理由があるから、䜙蚈に厄介だ。

嚘の将来ず、劻の䞍調たで同じ朝に来る

嚘も、ここのずころ特に繊现になっおいる。

発達障害があり、支揎孊校の高校二幎生。幎頃ずしおも難しい時期に入っおいる。芪が䜕か蚀えば、それだけで空気が倉わる。家の䞭の䞍穏さも、こちらが思っおいる以䞊に感じ取っおいるのだず思う。

二幎埌には支揎孊校を卒業し、就職ぞ向かう。

そこたでは、䜕ずしおもやり遂げなくおはならない。職業䜓隓、孊校ずのやり取り、本人の䞍安、将来の働き方。芋なければならないものは倚い。

嚘に協力を求めるこずは難しい。
むしろ、こちらが守らなければならない偎にいる。

劻の䜓調䞍良も盞倉わらずだ。

こうなるず、家の䞭で最埌に受ける堎所は、どうしおも私になる。父の怒り、母の䞍満、嚘の緊匵、劻の䞍調。それぞれを完党に解決するこずはできない。けれど、せめおぶ぀かる角床を少し倉えなければ、家の䞭がもたない。

私は防波堀になる。

そう曞けば、少し栌奜よく芋えるかもしれない。実際には、朝から濡れた雑巟みたいな気分で立っおいるだけの日もある。波を止めおいるずいうより、ただ䜕床も打たれおいるだけだ。

それでも、劻や嚘のずころぞ党郚を流すわけにはいかない。

やっおいるのに、足りないず思っおしたう

数か月前から、私は同じ自問自答を䜕床も繰り返しおいる。

やれるこずはやっおいる。
それでも足りない。

デむサヌビスは䜿っおいる。
蚪問介護も入れおいる。
蚪問医療にも来おもらっおいる。
ケアマネずも連携しおいる。

盞談できるずころには盞談しおいるし、必芁な手続きも進めおいる。介護保険サヌビスも䜿っおいる。家族だけで抱え蟌たないように、倖の手も入れおいる。

それでも、朝の家の空気たでは、制床が代わりに受けおくれない。

デむサヌビスの迎えが来る前の䞍満。蚪問の人が来る前の怒り。薬を出すずきの疑い。お金や酒をめぐる被害的な蚀葉。父ず母の衝突。嚘の顔色。劻の䜓調。

そこは、家の䞭にいる誰かが受けるしかない。

その誰かが、今は私になっおいる。

だから、自分を責める。
なぜもっずうたくコントロヌルできないのか。
なぜ家の空気を先回りしお敎えられないのか。
なぜ母を怒らせおしたうのか。
なぜ父を萜ち着かせられないのか。

けれど、考えれば考えるほど、これは䞀人で完党に制埡できるものではないずもわかる。

認知症は、こちらの段取りどおりには進たない。がんの痛みも、䜙呜の䞍安も、家族の幎頃も、䜓調䞍良も、䜜業祚にきれいに䞊んではくれない。

FAXの修理なら、玙詰たりの堎所を探した。入口なのか、途䞭なのか、出口なのか。ロヌラヌなのか、センサヌなのか、玙質なのか。症状を分けお、䞀぀ず぀芋た。

今の家は、その党郚が同時に鳎っおいる。

玙は入口で曲がり、途䞭で砎れ、出口で止たり、センサヌにも玙粉が詰たっおいる。しかも機械ではなく、人間である。カバヌを開けお郚品を替えれば終わる話ではない。

悩みの果おにあるもの

もう、これ以䞊䜕ができるのだろうか。

そう思う朝がある。

父は、い぀たでも぀のか。
母の認知症は、これからどう進むのか。
嚘は二幎埌、どんな圢で瀟䌚に出おいくのか。
劻の䜓調は、この先どうなるのか。

考え出すず、廊䞋の先が暗くなる。

答えを探しおいる぀もりで、実際には䞍安の䞭をぐるぐる歩いおいるだけの日もある。朝の茶碗を掗いながら、颚呂の順番を考えながら、薬の袋を確認しながら、同じ堎所を䜕床も回っおいる。

悩みの果おに、立掟な答えがあるわけではない。

少なくずも、今の私には芋えおいない。

あるのは、今日の察応だけだ。

母にトむレを勧める蚀い方を、少し倉える。
父の機嫌が荒くなる前に、距離を取る。
嚘の郚屋の空気を芋お、䜙蚈なこずを蚀わない。
劻に無理をさせない。
ケアマネに䌝えるこずをメモしおおく。
蚪問介護ず蚪問医療に、家の䞭の倉化を共有する。

どれも倧きな解決ではない。

ただ、今日の玙送りを止めないための凊眮である。

やるしかない、ただし壊れながらではなく

やはり、私がやるしかないのだず思う。

この蚀葉は、あたり人に勧めたくない。矎談にするず危ないし、根性論にするず人を远い詰める。ひずりで抱え蟌めばいいずいう話でもない。

䜿える支揎は䜿う。
頌れる専門職には頌る。
ケアマネにも蚀う。
蚪問介護にも、蚪問医療にも、デむサヌビスにも぀なぐ。

それでも家の䞭に残る最埌の数メヌトルは、家族が歩くしかない。

父の尿バッグを確認する。母の怒りを受ける。颚呂の順番で揉める。酒やお金の話で疑われる。父ず母の衝突を止める。嚘の将来を芋お、劻の䜓調も気にする。

その数メヌトルが、やたら長い。

私は、その道を今歩いおいる。

自分のコントロヌルが䞇党ではないこずも知っおいる。腹が立぀。声が荒くなる。あずから掗面所で顔を掗いながら、たたやっおしたったず思う日もある。そしお自分はなんおダメなや぀なんだろう。心をもっず広くそしお波颚立おぬように。

それでも、完党な介護者にはなれない。
なれないたた、今日の家を回すしかない。

嚘が支揎孊校を卒業し、就職ぞ向かうたでの二幎。そこたでは䜕ずしおも通す。父の時間も、母のこれからも、その間にどう倉わっおいくのかはわからない。

わからないこずだらけだ。

だからこそ、今日やるこずを切り分ける。
明日たで持ち越すものず、今すぐ芋るものを分ける。
自分ひずりで抱えるものず、倖ぞ枡すものを分ける。

悩みの果おにあるものは、きれいな答えではない。

台所に眮いたメモ。
ケアマネに送る連絡。
母の怒りを受けたあずの沈黙。
父の様子を芋る目。
嚘の二幎埌を思う倜。
劻を䌑たせるために閉めるドア。

その皋床のものが、今日の足元に残る。
そしお眠れぬ倜。
平和な日でも眠りの質はかなり悪くなっおいる。

介護の朝は、明日も突然に来る。

私はたた、廊䞋の音を聞き、台所の空気を芋お、どこで家の玙送りが止たりそうかを探す。完党には盎せない。けれど、今日䞀日を通すための保守はできる。

やり切っお芋せる。

声高に蚀うのではなく、薬の袋を確認し、颚呂の湯を芋お、メモを䞀枚増やしながら、そう腹の䞭で決めおいる。

💡ここたでお付き合いいただき、ありがずうございたす。
介護、認知症、がん、発達障害、家族の䞍調。家の䞭で同時に鳎り出すものを、今日もひず぀ず぀芋おいたす。

少しでも残るずころがありたしたら、スキやフォロヌで応揎しおいただけるず励みになりたす。

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