1枚の手紙
1枚の手紙
引き出しの奥から見つかった、
一枚の手紙。
差出人の名前はない。
宛名には、
私の名前だけが、
少し震えた文字で書かれていた。
いつ書かれたものなのかも、
誰が置いたのかも、
思い出せない。
そっと封を開ける。
中には、
たった一行だけ。
「あの日の約束を、忘れないで。」
その一文だけで、
胸の奥がざわついた。
「あの日」とは、いつだろう...
「約束」とは、何だったのだろう...
古いアルバムを開いても、
日記を読み返しても、
答えは見つからない。
けれど、
手紙の最後に、
小さく書かれた数字だけは気になった。
「17:30」
時計を見る。
偶然にも、
針は十七時二十五分を指していた。
気づけば私は、
理由もわからないまま、
あの坂道を走っていた。
五分後...
夕日に染まるバス停には、
誰もいない。
…そう思った、その瞬間。
ベンチの上に、
白い封筒がもう一枚。
震える手で開くと、
そこにはこう書かれていた。
「ちゃんと来たね。」
思わず周りを見渡す。
風が吹く。
誰もいない。
それなのに、
誰かの視線だけが、
確かにそこにある気がした。
二枚目の手紙の裏には、
また一つだけ、
見覚えのない文字。
「三枚目は、あなたが一番会いたい人の近くにある。」
私は息をのむ。
一番会いたい人は、
今もどこかで私を待っているのか。
それとも──
もう、この世にはいないのか。
夕焼けの空だけが、
何も答えず、
静かに赤く染まっていた...
By MakoCafe
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