【美術展】空海と真言の名宝/東京国立博物館(東京都台東区)
洋の東西問わず、宗教画や仏像を積極的には見にいかない。教義を知らないので、その素晴らしさや、作品に込められている意味が分からないから。この美術展も見に行く予定はなかったのだが、白桃ゆめのさんのNHK「日曜美術館」の記事を読んで、俄然行ってみたくなった。
「如意輪観音菩薩坐像」の優美な曲線を見たい、
「二間観音」の爪楊枝の太さに彫られた仏像が見たい、
「日曜美術館」では取り上げられていなかったが、国宝「信貴山縁起絵巻」が見たい。
★天皇陛下、そりゃあなただって気になりますよね-重要文化財「弘法大師行状絵詞 巻第十」
弘法大師空海の生涯を描いた全12巻の絵巻。巻第十、最初の場面は承和2(835)年に始められた「後七日御修法」の様子を描く。仁明天皇が修法を気にする様子を御簾を切り抜く描写とした点が興味深い。
この記事を書くのに、仁明天皇をググったら、ウィキにこの画像があった。そう、そう、まさに、これ!

この絵巻には金銅の舎利塔を供の僧に持たせて御修法の道場に入る空海も描かれていた。この美術展の入口で迎えて下さった「弘法大師坐像」(金剛峯寺蔵)そのものの、お顔立ちだった。
★重要文化財「聖天図(密教図像のうち)」13世紀・鎌倉時代 東寺蔵
聖天(歓喜天)の姿を描く。描線は繊細、顔貌には暈が施され、艶めかしい雰囲気をかもし出す。
へぇ、と足を止めたくなった一幅。頭がゾウで体は人間。原型は、インドのガネーシャ神と言われていて、単身像と双身像があるが、双身像の方が多い。
展示されていて掛軸では、聖天様が、立ったまま抱擁している。夫婦和合、安産、子宝、商売繁盛、学業成就、厄除け等々幅広くご利益がある、とのこと。
★重要文化財「聖観音菩薩・梵天・帝釈天立像《りゅうぞう》(二間観音)」13世紀・鎌倉時代 東寺蔵

画像は「紡ぐプロジェクト」公式サイトから
中央、聖観音の青い髻の前に、爪楊枝の先の大きさの仏様がいらっしゃる。
この日は、14:30頃にこの展覧会の部屋に行ったがまだまだ人が多く、単眼鏡で見るのは憚られた。閉館17:00間際の16:45頃に行ったら、同じような考えの方がいらして、その方が終わったのを待ち、単眼鏡で拝見。「日曜美術館」で放映されたほどはっきりは見えなかったが、「いらした」。
「日曜美術館」で東京国立博物館の保存修復室・児島室長がおっしゃってらした「本気の祈りが本気のかたちになっている」そのものの、繊細で、美しくて、目に見えない「祈り」を具現化したお姿だった。
★重要文化財「深沙大将立像 快慶作」1197(建久8)年 金剛峯寺蔵
深沙大将は、玄奘三蔵がインドへ旅した際、砂漠で玄奘を守護したと伝えられる神様。
お坊さんの窮地を救うだけあって、その猛々しさに圧倒される。
眉をつりあげ、目をカッと開いた威嚇の表情。ドクロの連なったネックレス(瓔珞)を下げ、腕に蛇を巻き付け、膝にゾウの頭、お腹に赤子の顔をつけている。
この像の後ろ(次)に、やはり金剛峯寺が所蔵する、重要文化財「執金剛神立像」が展示されていたが、この2体の仏像の胎内から、陀羅尼(経典の一つ)が見つかったそうだ。

日本の古い物を見ると、これいったいどこで切って読むんですか!が多いが、これもそう。まぁ、今回の美術展はそんなんばかりだったが。
この仏像2体、(見るところはそこじゃないでしょうと思いつつ)胸筋が盛り上がり、腹筋がバキバキに割れていて、ウエストがすごく細かった。(羨ましい体型だ。だから、見るべきところが違うって。)
★国宝「信貴山縁起絵巻 延喜加持巻」朝護孫子寺蔵
美術史家・辻惟雄氏が「日本絵画史上の二大表現」と表した内の一つ「信貴山縁起絵巻」。
この本で「延喜加持巻」を詳しく述べてらして、その面白さにいつか見たいと思っていた。それが、東京で見られるなんて、有難い。

文化庁広報誌から
この美術展の後期で展示されている「延喜加持巻」は、信貴山に住む高僧・命蓮上人が法力で護法童子を遣わして、醍醐天皇の病を治してしまうエピソードが描かれている。
護法「童子」というくらいだから、子ども子どもした護法童子をイメージしていたら、結構しっかり目の大人。
辻氏の記述に導かれるまま、その楽しさ、生き生きさにこの絵巻全部見せて下さい!な気持ちが沸き上がった。
★重要文化財「如意輪観音菩薩坐像」11世紀・平安時代 大門寺蔵

「日曜日美術館」でそのお姿を見て、なんと優し気で美しいのだろうと魅せられた。本物を目にし、曲線美の美しさ、やさしい眼差し、たおやかな美しさに自然と手を合わせたくなる気持ちになった。
ここからは自分自身への備忘録でもある。
如意輪観音とは、観音菩薩の変化身の一つ。変身していない本来の姿の観音様を「聖観音」という。(「二間観音」様の「聖」にはそのような意味があったんですね!)
観音様は、救う相手や状況に応じて、いくつもの姿に変身する。その姿や持ち物にも、観音様ならではの法則がある。
如意輪観音様は、1つの顔と6本の腕をもつ、一面六臂の姿が一般的。右手を頬に添え、人々を救う方法を考えている(なんと、有難い)。
片膝を立てたポーズは、輪王座という座り方。
如意輪観音様は六道衆生の苦しみを取り除き、福徳を与えるという任務があるので、六道の中でも最高位の天道を担当している。
★重要文化財「愛染明王坐像」12世紀・平安時代 放光寺蔵

放光寺は1184(元暦元)年、源平合戦で功績をたてた安田義定が一ノ谷の戦いの戦勝を記念して創建したお寺。
★国宝「五智如来坐像」9世紀・平安時代 安祥寺蔵

見る人が見れば、手だけでも、その仏さまが何であるか分かるのだろうな。

五智如来とは、大日如来が備える5つの智慧を象徴する仏。本群像は空海の孫弟子・恵運(798~869年)が建てた安祥寺の創建期にさかのぼる初期密教彫刻の代表作。5体揃って伝わる五智如来像の現存最古例としても貴重である。
心に眼福を、正にその通りの美術展だった。
弘法大師は、密教は至極深遠なので時として絵図や尊像・色彩等を借りて理解を深める必要があると仰せられました。その為に多くの仏像や曼荼羅が製作され、現代に名宝として数多く残されています。
いにしえ人の深く篤い信仰に想いを廻らし、お心に眼福を満たしていただければ幸いに存じます。
合掌
真言宗長者
中村元信
総本山根來寺座主
