いつも美しいあわれを人の心に「伊勢物語」
絵画で「見る」ことの多い「伊勢物語」。各段の歌とともに。自分のための備忘録。都度、アップデート。
第6段 白玉か
「もののけ」今村紫紅 明治30年代後半 横浜美術館蔵

白玉か なにぞと人の 問ひし時 露と答へて 消えなましものを
真珠かしら何ですかとあの人がたずねたとき、あれは露だよと答えて、私は消えてしまえばよかったのに(そうすればこんな嘆きはみないですんだのに)。
第9段 から衣
「伊勢物語図 宇津山」酒井抱一 19世紀・江戸時代 MOA美術館蔵

「宇都乃山」酒井抱一 江戸時代後期 横浜美術館蔵

「宇津の山路」今村紫紅 明治45年 静岡県立美術館蔵

駿河なる 宇津の山べの うつつにも 夢にも人に あはぬなりけり
駿河の国にある宇津の山のあたりに来ていますが、この辺りまで来てしまうと現実に人気もなくもちろん、あなたに会うこともなく寂しいし、夢の中でもあなたにお逢いしたいのですよ。
「業平東下」今村紫紅 明治45年/大正元年頃 横浜美術館蔵

時知らぬ 山は富士の嶺 いつとてか 鹿の子まだらに 雪のふるらむ
時節を弁えない山は富士山だ。今をいったいいつということで、子鹿の背の白斑のようにむらむらに白く雪がふりつもっているのであろうか。
第23段 筒井つの
「雪月花」上村松園 1937(昭和12)年 皇居三の丸尚蔵館蔵

筒井つの 井筒にかけし まろがたけ 過ぎにけらしな 妹見ざるまに
丸井戸の上に組んである井戸枠の高さに及ばなかった私の背丈も、あなたにあわないでいるうちに、井戸枠より高くなったろうと思われますよ(しばらくおあいしない間に私もすっかり大きくなりましたよ。あおいしたいと思います)。
くらべこし ふりわけ髪も 肩すぎぬ 君ならずして 誰かあぐべき
あなたとどちらが長いか、ずっとくらべっこしていたおかっぱの髪も今では肩の辺りを過ぎてずっと長くなってしまいました。でもあなたでなくて、誰が私の髪上げをしてくださることができましょうか(あなただけが私の成人式をして結婚してくださることができる方です)。
