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GHGプロトコル改定で改めて問われる「ロケーション基準」と「マーケット基準」の意味

ーなぜ“排出係数の粒度”が重要になるのかー

GHGプロトコルのScope2ガイダンス改定に伴い、
「ロケーション基準」「マーケット基準」という言業を改めて目にする機会が増えています。

一見すると基本的な根念に見えますが、
今回の改定議論では、その中身がこれまで以上に実務へ踏み込む形で問い直されているのが実情です。

本記事では、

  • まず両者の基本的な違いを整理したうえで

  • なぜ今「最も粒度の細かい排出係数」が議論されているのか

  • マーケット基準は誰が、どこで決めているのか

を解説します。

まずは一言で整理する:2つの算定基準

GHGプロトコルにおけるScope2排出量は、ロケーション基準とマーケット基準という2つの方法で算定されます。

注釈として使いやすい表現で整理すると、以下の通りです。

  • ロケーション基準
    電力を消費した地域の平均的な排出数を用いて、排出地を算定する基準

  • マーケット基準
    PPAや非化石証書など、企業が実際に調達した力の属性を反映して排出量を算定する基準

これ自体は、従来から大きく変わっていません。
変わりつつあるのは、「とこまで厳密にやるのか」という点です。

ロケーション基準で今、何が問題になっているのか

今回の改定議論で、ロケーション基準について特に注目されているのが
「最も粒度の細かい排出数を使うべきではないか」という考え方です。

日本では何が該当するのか?

結論から言うと、
現時点で日本における「正解」は明示されていません

GHGプロトコル側の定義は、あくまで次のようなものです。

 各国において一般に公開されている、
 無償で信頼できる出典に基づく情報の中で、
 もっとも粒度の細かい排出係数

つまり、

  • 国別平均なのか

  • エリア別なのか

  • 時間別なのか

は、各国の公開情報の状況に依存します。

日本で「最も粒度が細かい」と考えられる現実解

この定義を前提にすると。
現状で有力と考えられるのは、次の考え方です。

①一般送配電事業者が公開する「30分ごとの電源構成」

日本では、各一般送配雑事業者が、

  • 自社エリアにおける

  • 30分単位の電源構成

を公式に公開しています。

たとえば、東電エリアであれば、
「どの30分に、火力・赤エネ・厚子力がどれだけ動いていたか」
という情報が入手可能です。

②各電源の排出係数を掛け合わせる

次に、

  • 石炭火力

  • LNG火力

  • 石油火力

など、電源種別ごとの排出数を掛け合わせることで、
30分ごとの平均排出係数を算出する、という方法が考えられます。

ただし、ここに注意点があります

  • 石炭/LNG火力は、発電方式によって排出係数が異なる

  • 一送の公開情報では、
    どの発電所(どの方式)が動いているかまでは分からない

そのため、実務上は
保守的に、最も排出係数が高い値を使うべき
という判断になります。

③それでも残る限界

この方法でも、次の旅は考慮できません。

  • 発電所ごとの効率差

  • 揚水発電・蓄電池の充放電

  • 系統内での電力の流れ

こうした限界を踏まえ、
研究機関(例:東大岩船研究室)では、一定の前提を置いたうえで「エリア別・時刻別平均電力CO2排出原単位」を整理・公開しています。

今後、
・どの無定方法を正式に採用するのか
・どのソースを使うべきか
については、段階的に整理されていくと考えられます。

マーケット基準は「どこで」議論されているのか

資料などでよく見る
「マーケット基準は現在議論中」という表現についても、その"議論の場"を正しく理解しておく必要があります。

議論しているのは誰か?

マーケット基準の改定を含むScope2ガイダンスは、
GHGプロトコル本体に運なる
Scope 2 Technical Working Group (TWG)
で論されています。

ここでの決定事項は、単なる技術検討ではなく
GHGプロトコル本体の決定事項として扱われるという点が重要です。

つまり、
・ 一部の専門家の私見
・ 任意のガイドライン
ではなく、
今後の国際的な算定実務に直結する議論が行われています。

なぜこの議論が重要なのか(立場別の意味)

需要家(特にグローバル企業)

  • ロケーション基準が高度化すれば、
    「どこで、いつ電気を使ったか」が問われる

  • マーケット基準も、
    「何を買ったか」だけでなく説明可能性が重要になる

→再エネ調達は、重より質の時代へ。

小売電気事業者

  • 単なる年平均排出係数の提示では不十分になる可能性

  • エリア性・時間性をどう説明できるかが差別化要因に

→「排出係数を売る」から
 「算定ロジックを含めて支える」役割へ。

再エネ事業者

  • 発電した"量"だけでなく、
    いつ発電したか、どのエリアかが価値に直結

  • フィジカル性・追加性を備えた再エネの重要性が上昇

→GHG対応は、再エネの価値をより精緻に選別する。

まとめ:基準の違いは「思想の違い」

ロケーション基準とマーケット基準の違いは、単なる計算方法の違いではありません。

  • ロケーション基準:
    「その場所の現実をどう捉えるか」

  • マーケット基準:
    「企業の選択をどこまで評価するか」

GHGプロトコル改定は、
この2つをより厳密に、より現実に近づけようとしています。

おわりに

GHGプロトコル改定で起きているのは、
排出量算定の高度化であり、同時に“逃げ道の縮小”です。

  • 平均値では説明しきれない

  • 証書だけでは足りない

そんな時代に向けて、
電力・再エネ・PPAの意味が静かに変わり始めています。

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