サプリメントでドーピング違反になる、その仕組み
【連載1/5】
競技を続けている人なら、一度は聞いたことがあると思います。「サプリでドーピングに引っかかることがある」。
でも、具体的にどういう経路で起きるのかを説明できる人は、意外と少ない。私自身、栄養補助食品を服用また、選手へ提供をしていて、この話を正確に説明できる日本語の資料が驚くほど少ないことに気づきました。
この連載では5回に分けて、サプリメントのドーピングリスクと、自分で確認する方法を調べました。特定の製品を勧める内容ではありません。むしろ「どの製品であれ、自分で確認する方法を持っておく」ための話です。
1回目は、そもそもなぜ意図しない混入が起きるのか。
「知らなかった」は通用しない
前提として、これを先に言っておきます。
アンチ・ドーピング規則では、体内から禁止物質が検出されたこと自体が違反になります。摂取が意図的だったか、混入を知っていたかは、違反の成立そのものには影響しません。事情によっては制裁の程度が調整されることはありますが、「知らずに飲んでいた」が自動的に免責になるわけではない。
つまり、口に入れるものの管理責任は競技者本人にあります。だからこそ、仕組みを知っておく価値があります。選手への提供する側なので責任も伴います。
経路1:製造ラインの共用
いちばん多いとされているのがこれです。
サプリメントの製造工場は、複数のブランドの製品を同じ設備で受託製造していることがあります。あるロットでホルモン系の原料を扱い、洗浄後に別の製品を製造する。このとき、設備に残った微量の成分が次の製品に持ち越されることがあります。
問題は「微量」の意味です。日常の食品衛生では無視できる量でも、ドーピング検査の分析精度から見れば十分に検出されます。健康被害がまったく想定されないレベルの残留でも、検査には出る。ここに落差があります。
経路2:原料段階での混入
製造工場が清潔でも、仕入れた原料そのものに問題があることがあります。
植物抽出物やアミノ酸の原料は、複数の国をまたいで流通します。その途中で、原料メーカー側の設備や保管環境を通じて混入が起きる可能性がある。最終製品の工場がどれだけ管理していても、入ってくるものが汚染されていれば防げません。
だから、後の回で扱う認証プログラムは、最終製品の分析だけでなく原料と製造施設の審査をセットにしています。
経路3:意図的な無申告添加
これは事故ではなく、製造側の判断による混入です。
「効果を感じてほしい」という動機で、ラベルに書かれていない成分が加えられているケース。減量系、増強系、睡眠系の製品で報告されています。当然ラベルには載っていないので、成分表示をどれだけ丁寧に読んでも見つかりません。
海外通販で入手した製品や、正規の流通経路をたどれない製品では、このリスクが上がります。
経路4:そもそもラベルが正しくない
混入とは逆の問題もあります。書かれている成分が、書かれた量だけ入っていない。
これは直接ドーピングにはつながりませんが、「表示と中身が一致していない製品を作る体制」という点では地続きです。表示管理がゆるい工場は、混入の管理もゆるい可能性がある。
だから、次回以降で扱う認証や情報公開の枠組みでは、禁止物質が入っていないことと表示通りのものが入っていることの両方を見ています。
「ドーピング検査済み」と書いてあれば安心か
ここが本題です。
パッケージに認証マークがついている製品は増えました。ただし——マークがついていることと、あなたが手に持って口に入れるその1袋が検査されていることは、同じではありません。
マークの種類によって、検査する物質の範囲も、検査の頻度も、製造施設を見るかどうかも違います。同じマークでも、ブランドや商品によって中身が違う場合すらあります。
次回は、この「認証マークは安全の保証ではない」という話を、もう少し踏み込んで書きます。おそらくこの連載でいちばん大事な回になります。
この連載を書いている人について
私は高校で陸上(長距離・駅伝)の指導をしております。栄養補助食品を自分自身も服用し、選手にもおすすめとして提供しています。特定の製品を勧める目的でこの連載を書いてはいませんが、書いてある内容は、必ず一次情報(各認証機関、JADA、WADAの公式資料)でご自身で確認してください。この連載でも一次情報へのリンクを都度示します。
連載の予定
サプリメントでドーピング違反になる、その仕組み👈
認証マークは「安全の保証」ではない
5つの認証プログラムは、何がどう違うのか
日本には日本の枠組みがある — JADAガイドラインと情報公開サイト
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