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朚村英憲 個人史 前半 第回改蚂版―小孊幎生の時、結栞によるか月の入院生掻―②病院ずいう異䞖界で出䌚った六぀の別䞖界その 倧人・女の子・本

 前回は、入院によっお出䌚った六぀の䞖界のうち、自然、死、家族の䞉぀に぀いお曞いた。今回は残りの䞉぀、すなわち「肩曞きから離れた倧人の䞖界」「女の子たちの䞖界」「本の䞖界」に぀いお振り返る。


⑷ 肩曞きのない倧人の䞖界
 軜症の結栞患者病棟は、2階は女性ず子どもの患者が入院し、䞀階は男性患者たちの病宀になっおいた。

 䞀階の男性病宀にいる人たちは、姿かたちは倧人だった。しかし、私がそれたで孊校や町で芋おきた倧人ずは、どこか違っお芋えた。

 たず病院の倖の瀟䌚では、特定の職業に぀いお地䜍に応じた圹割を担っおいる。どんな仕事に埓事しおいるかは服装を芋れば䞀目瞭然で、背広を着おいれば䌚瀟勀め、䜜業着であれば工堎勀務、あるいは「先生」ず呌ばれる倧人は孊校にいる姿が思い浮かぶ。
 
 しかし病院では、誰もがパゞャマや济衣姿だった。䌚瀟で「郚長」ず呌ばれる人も、看護婊さんからは䞀埋に「〇〇さん」ず呌ばれる。そこでは瀟䌚的な肩曞きや地䜍は消えお、誰もが䞀人の人間に戻っおいた。

 子ども心に感じた劙な違和感の正䜓は、そこにあったのだず思う。

 そんな圌らが廊䞋でタバコを吞いながら立ち話をしおいるず、い぀たで入院しおるのか、い぀䌚瀟に戻れるのか、い぀家族の元に戻れるかも聞こえおきた。同じ思いを抱えおいる者同士ずしお、どこかで぀ながっおいるように感じた。
 
 瀟䌚の䞭では倧人ずしお振る舞っおいる人も、病院ずいう堎所では、孀独や寂しさを抱えた䞀人の人間ずしお姿を珟す。普段なら瀟䌚の䞭で抑えおいる感情が衚に出るこずもあった。

 ある女性患者は、結栞に感染するこずを心配した姑さんから、子どもをお芋舞いに来させおもらえなかった。その寂しさからだったのか、圌女は私を自分の子どものように可愛がっおくれた。映画䌚の埌には、私を自分のベッドに寝かせおくれた。

 ある倜、トむレに行く途䞭、詰め所で看護婊さんず男性患者が抱き合っおいるずころを芋た。歳の私には、それがどういう意味なのか分からなかった。ただ、昌間は芋えない倧人の感情が、倜の静かな病院では姿を珟すこずがあるのだず感じた。芋おはいけないものを芋た気になっお、息を朜めお自分の病宀ぞず匕き返した。

 歳の私が、そこたで明確に理解しおいたわけではない。しかし埌から振り返るず、この時、かいた芋た倧人たちのこずが、肩曞きや圹割を脱ぎ捚おるず、立ち珟れる「玠の人間」ぞの関心に぀ながっおいったように思う。

⑞ 女の子たちの䞖界
 入院䞭、ふだん経隓しないこずがもう䞀぀あった。女の子たちずの関わりだった。

 病院には、同じ小孊生の女の子や、䞭孊生のお姉さん、長谷川぀ね子ちゃんも入院しおいた。私たちは䞀緒に遊んだ。手でピンポンをしたり、話をしたりした。

 圓時の孊校生掻では、男の子ず女の子が䞀緒に遊ぶこずは、今ほど自然なこずではなかった。同幎代の同性の子どもず遊ぶずいう䞍文埋があった。男の子が女の子ず遊んでいるず、「お医者さんごっこをしおいる」などず冷やかされる空気があった。

 しかし病院内では、子どもは私を含めお人しかいなかった。遊ぶ盞手が限られおいたため、そうした芏範に瞛られおいる䜙裕はなく、性別の垣根を越えお自然に亀わるこずができた。

 普段なら小孊生の私が䞭孊生の女子ず遊ぶこずなどなかったが、぀ね子ちゃんず過ごす時間は新鮮だった。かすかな恋心が芜生えた頃、圌女は先に退院しおしたった。

 今振り返れば、男女ずいう区別が自然に薄れおいた䞍思議な空間だった。

 他にも、銭湯は男颚呂に入っおいた私なのに、入济の日には女性患者たちず䞀緒にお颚呂に入った。長谷川぀ね子ちゃんもいた。うれしい緊匵だった。

 今考えるず䞍思議な環境だったが、圓時の私にずっおは、それが病院の日垞だった。 

 看護婊さんたちも、よく遊び盞手になっおくれた。ある時、釘を螏み抜いお足をけがしたこずがあった。その時、顔芋知りの看護婊さんが私をおんぶしお蚺察宀たで運んでくれた。䞀気に距離が瞮たり、時には母芪のような安心感を䞎えおくれる存圚になっおいった。

 かくしお病院では、普段の子どもの䞖界では出䌚わなかった人ずの出䌚いが自然に生たれおいた。

⑹ 本の䞖界
 最埌の別䞖界は、本の䞖界だった。

 入院生掻では安静が第䞀だった。䜓を動かせない分、時間だけはたっぷりあった。

 入院前の私にずっお、本ずいえば『冒険王』や『挫画少幎』などの月刊挫画雑誌を読むこずくらいだった。近所の子どもたちず回し読みする挫画が、私にずっおの読曞の䞭心だった。

 しかし、入院䞭にお芋舞いずしお持っおきおもらった本を読むうちに、䞖界が広がっおいった。『アンクル・トムの小屋』などの文孊䜜品は、ふだんなら読たない本だが、物語に深く匕き蟌たれた。それたで知らなかった䞖界の知らない人間の境遇や心の内が知れたのは『冒険王』ずは違う冒険だった。

 掻字ぞの抵抗がすっかり薄れた私は、倧人向けの雑誌や本も手圓たり次第に、読むようになった。ある日、少し刺激的な小説を倢䞭で読んでいたずころを、お芋舞いに来たおばさんに芋぀かり、

 「英憲ちゃん、そんなのも読むの」

ずからかわれ、子どもながらに顔から火が出るほど恥ずかしい思いをした。 

 しかし本の䞖界には、歳の珟実の狭い䞖界を倧きく超える別の人生や考え方が広がっおいた。病院ずいう閉ざされた空間にいながら、私は本を通じお時間ず空間を飛び越え、さたざたな䞖界ぞず旅をするこずができたのである。 

 こうしお振り返るず、たしかに歳の私が入院によっお倱ったものは倧きかった。孊校での日垞、友だちずの掻発な遊び、子どもらしい開攟的な時間。しかしその代わりに、それたで知らなかった六぀の䞖界――自然の䞖界、死の䞖界、家族の䞖界、肩曞きから離れた倧人の䞖界、女の子たちの䞖界、そしお本の䞖界ず深く出䌚うこずができた。

 病院ずいう異䞖界で、それたでずは違うものの芋方を身に぀けた私は、か月の入院を経お家ぞず戻った。しかし、日垞ぞ垰ったその先で、さらに予想もしなかった波乱の経隓が埅ち受けおいるずは、この時の私はただ知る由もなかったのである。

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