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人生最後の無駄遣い

2018〜19年、度々老親の家へ出向いては
家の中の片付けをしていた
だが、どんなに片付けても
数週間後にはまた物に溢れる
どうやら母は
空間ができると埋めたくなるタチらしい

5LDKの実家
3年前に他界した父の物は1室に纏められているが
それ以外は母の物で埋め尽くされている

結論としては
実家の片付けなど焼け石に水だとわかったので
最近はもう見て見ぬふりをしている

「自分の荷物の後始末は 子どもにさせない」
それを強く思うようになり
2021年、本格的に50代の大規模断捨離が始まったのだ

そして――――
2022年の膀胱がん
2023年の膀胱癌リンパ節転移
2023年のあるじの看取りによって
断捨離は終活へ…

2021年から2025年の秋まで
物を減らすことだけを考えていた日々

だが…
2025年の夏の入院中
1冊の本を読んだのを機に
そうか…
諦めなくていいんだ
最後の悪あがき
最後の無駄遣い
最後の夢の実現

以前から秘かに燻っていた思いが
現実になり始めた

シスプラチンの副作用で聴覚過敏になり
生活には耳栓が必須になった

飲食店の食器の音がダメ
子どもでも大人でも甲高い声がダメ
スーパーのレジの自動音声が煩くてダメ
金管楽器の音がダメ
観客の拍手の音量がダメ
コンサートに行けなくなった

映画を観るにも耳栓必須になった

長年続けた合唱団への復帰も考えたが
練習も練習後の会食も
耳栓して…というのは
何とも鬱陶しく虚しく感じ
復帰に至らなかった

そんなとき
音域や音量さえコントロールすれば
なんとかなるんじゃないか…

それが『CELLO』だった

とりあえず
一度だけ弓を引いて音を出せたら満足…

そう思ってYAMAHAのショールームへ足を運んだ

だが
一度じゃ終わらなかった

ひと引きしたあと
思わず楽器に抱きついた

CELLOの音色はHealingになった


それから数日後
ママ友に背中を押され
楽器を購入した

あっという間に
リビングのインテリアになるかもしれない…
それでも
楽器がなければ
何も始まらない…と

楽器に慣れようと
毎日最低でも30分は弾くことを続けた

54年前ピアノを習い始めた自分が
こんな風にピアノに夢中になっていたら
相当上達しただろうなぁ…(^^ゞ

弾いているときは
全てを忘れて没頭できた
体調も少し整い始めていたから
とにかく夢中になれた

幸い先生も見つかり
月に2回我が家に来ていただいて
レッスンを受けている

楽器購入のとき背中を押してくれたのは
ピアノ歴56年、バイオリン歴25年
というご近所のママ友だ
月に一度集まってお茶べりしたり
今月の曲を奏でる楽しいひとときを過ごしている

まさかこの年でこんな時間が持てるようになるとは
想像もしていなかった


これもがんになったからこそ?
がんに感謝しつつ!?
今日もチェロの音に癒されている。。。

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