岩木山近くで地震活動
今回は、2026年5月中旬から岩木山南東で増加している地震活動について解説します。
ここで気になるのは、
・今、地下で何が起きているのか?
・活火山である岩木山との関係はあるのか?
・最近続いている三陸沖の大地震との関係はあるのか?
・今後、火山活動へつながる可能性はあるのか?
という点だと思います。
今回は、
1 岩木山南東で地震増加
2 何が起きているのか
3 東北沖で連発する大地震との関係と今後どうなるのか
この順番で解説します。
1 岩木山南東で地震増加
まず現在の状況です。
岩木山南東およそ10 km付近で、地震活動が増加しています。深さはおよそ8 km前後です。
2026年5月14日には、マグニチュード3.7・最大震度3。
さらに15日には、マグニチュード3.4・最大震度3の地震が発生しています。
同規模の地震がまとまって発生していることから、典型的な群発地震的活動とみられます。
特徴的なのは、この場所には特に明瞭な活断層が知られていないことです。
そのため、
「近くの活火山・岩木山と関係あるのでは?」
と心配する声も出ています。
2 何が起きているのか
では、地下で何が起きているのでしょうか。
まず重要なのは、現在の岩木山そのものには、明瞭な火山活動活発化は見えていないことです。
現在、岩木山の噴火警戒レベルは1です。
気象庁によると、
・噴気活動・明瞭な地熱域はなし
・火山性地震・火山性微動なし
・火山活動による地殻変動なし
という状態です。
つまり、
「典型的な噴火前活動」
は現時点では確認されていません。
ここがまず重要です。
では、今回の群発地震は火山と全く無関係なのか。
ここは少し難しいところです。
実は岩木山では、以前から南東側で特徴的な地震活動が知られています。
例えば、
・南東側深さ15〜40 km付近で深部低周波地震
・さらに浅い深さ約8 km付近でも地震活動
が知られています。
今回の群発地震は、そのさらに南東側で発生しています。
つまり、
深部低周波地震帯
↓
浅い地震帯
↓
今回の群発地震
というように、南東方向へ並ぶ形になっています。
これを見ると、
地下深部の流体やマグマ由来成分が、断層や亀裂を通って移動している可能性
は考えられます。
特に火山周辺では、
・高温流体
・熱水
・火山ガス
・マグマ由来流体
が地下に大量に存在していることが多く、それらが断層を弱くして群発地震を起こすことがあります。
つまり現時点では、
「明確な噴火前兆」
というより、
「火山周辺に存在する流体系が何らかの刺激を受けて動いている可能性」
くらいが比較的慎重な見方になります。
3 東北沖で連発する大地震との関係、今後どうなるのか
では、最近続いている東北沖の大地震との関係はあるのでしょうか。
ここはかなり重要なポイントです。
まず、火山周辺では、大地震後に流体が再配置される現象が過去に数多く報告されています。
例えば、Brenguier et al. (2014) では、2011年東北地方太平洋沖地震の後、東北地方の火山周辺で地震波速度が低下したことが示されました。
これは、
地下で流体が増加・移動した可能性
を示唆しています。
Takada and Fukushima (2013) では、東北地方の火山周辺で地盤沈下が観測されました。
これも、大地震によって地下流体が移動したことを示唆しています。
さらに、Aizawa et al. (2016) では、富士山地下で流体や火山ガスが上昇した可能性が示されました。
Kakiuchi et al. (2024) では、富士山や箱根で、2011年以降に地震波速度低下が起きており、流体上昇との関係が議論されています。
Hosono et al. (2016) では、実際に東北沖地震後、富士山の地震活動がやや活発化したことも示されています。
つまり、
大地震
↓
地下流体の再配置
↓
火山周辺の地震活動変化
という流れ自体は、実際に過去の研究でも報告されています。
では、今回の岩木山周辺活動は噴火につながるのでしょうか。
ここは慎重に見る必要があります。
Nishimura (2017) では、Mw7.5以上の巨大地震後、200 km以内の火山で噴火頻度が約1.5倍になることが統計的に示されています。
ただし最近の三陸沖や青森県東方沖地震は、
・2025年11月三陸沖Mw6.7
・2025年12月青森県東方沖Mw7.4
・2026年4月三陸沖Mw7.4
であり、単独ではMw7.5に達していません。
そのため、
「統計的に明確に火山噴火リスクを高める」
とまでは言えません。
ただし、ここで考えられるのが、
「複数の巨大地震の積算効果」
です。
Nishimura (2021) では、火山へ効くのは単なる揺れではなく、
地殻変動、つまり永久変位や静的応力変化
が重要である可能性が示されています。
とすると、
Mw7.4クラスが複数回起きることで、結果的に火山へ大きな影響を与えている可能性もありえます。
ただし、こうした「複数巨大地震の累積影響」は、まだ十分研究されていません。
つまり現時点では、
「関係あるとも、ないとも断言できない」
というのが正直なところです。
ただ、重要なのは、
岩木山では実際に2011年東北沖地震後、深部低周波地震がやや増加した
という事実があることです。
つまり、
岩木山は巨大地震の影響を受けうる火山
である可能性があります。
ただし、それが噴火へ直結するかは全く別問題です。
少なくとも火山の活発化は地震後数年にかけて見られることが多いため、しばらく様子を見る必要はあると思います。
まとめ
今回の内容をまとめます。
・岩木山南東約10 kmで群発地震が発生
・深さは約8 km
・M3クラスの地震が続いている
・現時点で岩木山本体の火山活動活発化は確認されていない
・ただし火山周辺流体系との関係は否定できない
・東北沖巨大地震後には流体再配置が起きる事例が過去に報告されている
・岩木山でも2011年後に深部低周波地震増加が見られていた
・現時点で噴火が差し迫っている証拠はない
・今後も数年単位で監視が必要
重要なのは、
「火山近くで群発地震=すぐ噴火」
ではないということです。
一方で、
火山周辺では地下流体が地震活動に大きく関わることも多いため、今後も地震活動・地殻変動・火山性微動などを継続的に監視していく必要があります。
本記事の内容の動画
参考文献
Aizawa et al. (2016)
https://doi.org/10.1130/G37313.1
Brenguier et al. (2014)
https://www.science.org/doi/10.1126/science.1254073
Hosono et al. (2016)
https://doi.org/10.1186/s40645-016-0110-9
Kakiuchi et al. (2024)
https://doi.org/10.1029/2023JB027978
気象庁「震央分布」https://www.jma.go.jp/bosai/map.html#11/40.646/140.27/&contents=hypo
気象庁「岩木山の火山活動解説資料(令和8年4月)」 https://www.data.jma.go.jp/vois/data/report/monthly_v-act_doc/sendai/26m04/202_26m04.pdf
気象庁「令和7年(2025 年)の岩木山の火山活動」 https://www.data.jma.go.jp/vois/data/report/monthly_v-act_doc/sendai/2025y/202_25y.pdf
火山本部「111 の活火山の調査観測結果に関する資料(東北地方)」 https://www.mext.go.jp/content/20251010-mxt_jishin01-000045242_02.pdf
気象庁「令和4年(2022 年)の岩木山の火山活動」 https://www.data.jma.go.jp/vois/data/report/monthly_v-act_doc/sendai/2022y/202_22y.pdf
Nishimura (2017)
https://doi.org/10.1038/s41598-021-96756-z
Nishimura (2021)
https://doi.org/10.1038/s41598-021-96756-z
Takada and Fukushima (2013)
https://doi.org/10.1038/ngeo1857
