ゴッホとテオ~たゆたえども沈まず|原田マハ
こんにちは。
はじめまして。
綿毛です。
暑い日が続きます。涼しい部屋でゆっくり過ごす1日もいいですね。
夏の読書は進んでいますか?
お気に入りのお茶とお菓子を用意して読書の日はいかがでしょう。
今回は読み応えバッチリのとびきりの1冊を紹介させてください。
『たゆたえども沈まず』原田マハ
フィンセント・ファン・ゴッホ
日本で、いや世界中でもっとも人気のある画家のひとりと言っていいでしょう。
オランダの画家
精神的に不安定
ひまわり
耳切事件
ピストルで自死
この本を読む前の綿毛がゴッホについて知っていたことです。ゴッホの絵も美術の資料集で見たひまわりだけでした。
著者は原田マハ
アート小説のトップランナーです。ご自身も美術史を学びフリーのキュレーターを経て作家デビューをなさった、筋金入りのアートガチ勢。(すいません語彙が……)
アート小説のほかにも旅を題材にした作品(旅したくなる!)、女性の仕事と生き方に焦点をあてた作品(胸熱!)、旅と美味しいもののエッセイ(やっぱり食べに行きたくなる!)など。
映像化された作品も多数。押しも押されぬ超人気作家です。大好きな原田マハさん。心からの敬意をこめてマハ先生と呼ばせていただきます。
ゴッホを題材にしたこの作品。
19世紀後半パリ万博後のパリが舞台です。
ゴッホとゴッホの4歳下の弟、テオドロス・ファン・ゴッホ( テオ )を中心に物語は進みます。
この兄弟に深く関わっていく2人の日本人。
林 忠正(はやし ただまさ)。実在の人物で、パリ10区 オートヴィル通りに店を構える『若井・林商会』の支配人。日本美術を扱う美術商です。
加納重吉(通称シゲ 架空の人物)。忠正の開成学校(幾度かの改変の後、最終的には東京大学と総称)の後輩で忠正を追いかけ渡仏。『若井・林商会』で助手となる。
実際にファン・ゴッホ兄弟と忠正たちに交流があったという記録はありません。
しかし、同じ時代に同じパリで美術に関わり、ゴッホは日本と浮世絵に深く興味と羨望を持っていたことから、お互いを知っていても不思議ではありません。そんな4人の物語です。
ファン・ゴッホ兄弟
綿毛が少し引くくらい兄弟の関係は濃密で、お互いに対して拗らせた想いを抱いています。
兄であるゴッホは望んでいた神職につけず、不器用な人柄で何をやっても中途半端、精神的に不安定な状態でした。
弟のテオに経済的に支えられ、28歳で画家になることを決心し、画家として創作活動を始めます。
弟のテオは伯父の口利きで、伯父と同じ画廊勤めを始めます。『グーピル商会』世界的に大成功を収めている人気画廊です。ゴッホとは対称的に人当たりがよく、情況の把握も的確。画廊の上客である富裕層のマダムへの対応も申し分なく、24歳の若さにしてモンマルトル大通り支店の支配人になりました。
テオはゴッホの才能を微塵も疑いません。
なぜでしょう。経済的・精神的に献身的にゴッホを支えます。
テオに画商としての優れた審美眼があったことは確かだと思います。
フランス・パリというあの時代の世界の中心でフランス人ではない、異国民としてこの国の高揚を斜めに見ていたのかも知れません。
仕事柄か時代の流れや新しい画風にも、とても敏感だったのだと思います。自分が仕事で扱う普遍的価値の古い絵画に、未来を見いだせないと感じて、それでも家族をゴッホを支えるために自分では魅力を感じない絵を毎日売り捌く。徹底的に支えます。
兄弟ですから喧嘩もします、些細な口論は日常的で、ストレスも感じます。それでもやはりゴッホの才能を疑わず、支え続けるのです。
大切な人を支える、支え続けるのって、とても永い終わりの見えない旅だと思うのです。いつ、どこへ辿り着くのかわからない、もしかしたら旅に終わりはないのかもしれない。そんな毎日。それでもテオはゴッホに画材を送り、生活のすべてを支え続ける。
逆を言えばゴッホはテオに対して負い目を感じる。晩年アルルであの有名な作品『アルルの寝室』を描いた部屋はとても質素な部屋だと言われています。家賃の安い部屋を選んだのだと。アルルの部屋だけではなく、おそらく生活のすべてに負い目を感じていたのでしょう。
同時に苛立ち。
画商としてとても有能なテオ。古くさい、いわゆるアカデミーの画家の絵を飛ぶように売るテオ。
自分の才能を認めているなら、なぜ自分の絵を売らないのか。苛立ちは募ります。
そんな拗れた兄弟。
テオが結婚したのは明るい出来事です。テオと妻のヨーには長男も生まれます。幸せな時間です。
しかしテオ!自分の息子に何で兄ちゃんの名をつける!?どんだけ兄ちゃん大好きなんだよ。ヨー、止めろ!!
ゴッホは甥の誕生を喜び有名な『花咲くアーモンドの木の枝』を描き贈ります。
兄弟の物語に深く関わっていく忠正とシゲ。
忠正は日本国内では美術品として認知されていない浮世絵をパリで広めます。
パリ万博でジャポニズムが注目を浴び、浮世絵は流行の最先端へ。西洋画とは全く違う構図、色使い、表現が新しいもの好きなパリの富裕層に大人気。忠正は画商として高く評価され多忙を極めます。
現在でも日本美術、浮世絵は世界中で人気を集めています。フランスだけではなくイギリスの大英博物館やアメリカのコスモポリタン美術館にも数多くの名作が収蔵展示されています。
しかし日本国内では忠正を「貴重な浮世絵を国外に売り捌いた売国民」と罵る風潮があったそうです。
忠正がひとり異国のパリで奮闘したから、浮世絵の美術的価値が世界で認められたんだ。マハ先生はこの本の中で忠正の名誉を回復させたかったんじゃないかと、どこかで目にしました。同感です。もっと評価されていいと思います。朝ドラか大河ドラマでもいけると思っています。
飛行機なんてない明治の時代。
東洋人だからと笑われるフランスの地で、忠正は日本美術を高く売ることで日本の価値や名誉を欧米列強に知らしめる。優秀な外交官です。高く売るだけではなく、買い求めるひとを見極める。「この絵はこの人のもとにあるべきだ」美術品の審美眼だけではなく、ひとを見る眼が長けていたからこそパリという異国の戦場を生き抜いていけたのでしょう。
日本に憧れ、浮世絵を愛したゴッホ。
テオと2人で駆け抜けたその生涯は、恵まれたものではなかったけれど、多くの作品を遺してくれた。
物語の最後にゴッホが遺したテオへの手紙。
この手紙がすべてを語ってくれています。
テオがゴッホを支え続けた理由はきっとこの手紙をテオがちゃんと受け取っていたからなんだなぁ。
そう想ってゴッホの絵をみると、胸が熱くなるのです。何度でもみたいと想うのです。
きっとあなたもゴッホとテオに会いに行きたくなりますよ。そんな1冊です。

空の上でもテオと一緒かな
画家ゴッホの夢は家族がつなぎ
後生へ世界へと伝わっていきました
あなたのとびきりの1冊はなんですか?
綿毛にぜひ教えてください。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
また次回お会いできると嬉しいです。
