ヘリウム危機5.0 〜過去4回と今回が決定的に違う理由〜
ヘリウムが足りない、という話は今に始まったことではない。
2006年、2012年、2017年、2022年。21世紀に入ってから、世界は4回この気体の不足に直面してきた。業界の集計では、2006年から2022年までの17年のうち8年が供給不足の年だったと報じられている。慢性的と言っていい。
だから今回も「またか」で済ませる人がいる。済まない理由が二つある。
過去4回の正体
危機1.0は2006年。米国の精製プラントが保守で止まった。設備が動けば終わる話だった。
危機2.0は2012年から13年。米国内外の供給制約と保守工事が重なり、価格は4倍に跳ね上がったと報じられた。科学研究用の装置が止まる事態も起きた。背景にあったのは米国の備蓄制度の運営期限問題。2013年にヘリウム管理法が成立して急場をしのいだが、この危機自体が、もとをたどればヘリウム価格制度の歪みが生んだものだった。市場より安い政府価格が新規開発の意欲を奪っていた。制度が招いた不足だった。
危機3.0は2017年。サウジアラビアがカタールとの国境を閉鎖し、陸路でのヘリウム輸出が断たれた。世界第2位の生産国であるカタールは、2基の精製プラントを停止した。これで世界供給の30%が止まった。ただし施設は無傷だった。この第3の危機は、2020年のコロナ禍による需要減で最終的に収束した。封鎖が解ければ船は出せる。輸送路の問題だった。
危機4.0は2022年。米国土地管理局の精製装置(CHEU)が1月10日に停止し、6月10日まで再開しなかった。世界の生産能力の10%以上が市場から消えた。引き金はロシアのウクライナ侵攻で、これを機に韓国はガスの供給多様化と国産化に動いた。この備えが、後で効いてくる。これも復旧すれば戻る話だった。
保守、制度、輸送路、装置停止。四つとも、いずれ元に戻る性質の不足だった。
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