レアアース泥のコストは20倍。それでも掘る理由
中国メディア・参考消息が「日本が採掘したレアアース泥の真相」という記事を出しました。2月19日、Record China経由で日本語でも読めます。
要旨はこうです。南鳥島沖のレアアース泥は試掘段階にすぎない。含有量分析も未済。中国産の約20倍のコスト。商業化は程遠い。衆院選の最中に発表して政治的に誇張した——。
中国のネットでは「もう日本に売らなくていい」「うちのレアアースは安すぎる、値上げだ」という声が並んでいます。
前回、前々回と「蛇口」の話を書いてきました。今回もその続きです。
黙っていればいいのに
本当に無意味な試みなら、放っておけばいい。勝手に頓挫するのを待てばいい。
それなのに国営メディアで取り上げ、「採算が合わない」「精錬技術がない」と畳みかける。
前回書いた構造を思い出してください。中国がやっているのは、日本が蛇口から離れようとする動き自体を潰すことです。バンス構想に対しては「一部許可」でした。南鳥島に対しては「無駄だ」。
手口は違いますが、目的は同じです。日本に「中国から買い続けるのが合理的だ」と思わせること。
「中国がすごい」は半分嘘
中国のネットには「高純度分離技術は中国が独占している」という書き込みもありました。
これは半分本当で、半分嘘です。
レアアースの精錬では、トリウムやウランといった放射性元素を含む廃棄物が出ます。土壌汚染、放射性廃棄物の処理、環境負荷。先進国ではこのコストが重すぎて、精錬が成り立たない。かつて日本もアメリカも精錬をやっていましたが、環境規制が厳しくなる中で撤退しました。
中国が精錬シェア9割超を握っているのは、技術が突出しているからではありません。他国が環境コストを嫌がって手放した工程を、共産党一党独裁の体制下で引き受けたからです。副産物に目をつぶれる国が引き受けた。それが実態です。
鄧小平が1992年に「中東に石油あり、中国に希土あり」と言ったのは有名な話ですが、その「希土」の優位性は、技術力ではなく環境負荷の引き受けで成り立っている。
この構造を知ると、「精錬技術は中国が独占している」という言い方の印象が変わります。独占しているのではなく、汚れ仕事を独り占めしている。そして、その汚れ仕事を人質にして蛇口を握っている。
南鳥島のレアアース泥には放射性元素がほとんど含まれていないと報告されています。もしこれが本当なら、日本国内での精錬が可能になる。中国の「精錬独占」を迂回できる可能性がある。中国が「無駄だ」と言いたくなる理由が、ここにもあります。
蛇口は一つではなくなりつつある
南鳥島だけではありません。
双日は2025年10月からオーストラリアのLynas(ライナス)経由で重希土類の輸入を開始し、2026年4月にはサマリウムを追加、2027年半ばには最大6品目まで拡大する計画を発表しました。Lynasはジスプロシウムやテルビウムといった高価値の重希土類の生産も昨年から始めています。
アメリカでは、国防総省がMP Materialsの株式15%を取得して筆頭株主になり、レアアース精錬の国内回帰を進めています。NdPr(ネオジム・プラセオジム)に対して1キロあたり110ドルの最低価格保証をつけた。採算が合わなくても国が支える、という明確な意思表示です。
そのMP Materialsは、これまで採掘した鉱石を中国に送って精錬していました。国防総省との契約で、その中国向け出荷を停止しています。
どの動きも、一つ一つは小さい。中国産の圧倒的な安さと量には遠く及ばない。でも、蛇口が一つしかない状態と、複数ある状態では、交渉の構造がまるで違います。
20倍の数字
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