【海外ドラマ】唯一何度も観返してしまう!豪発『プリーズ・ライク・ミー』の狂おしい中毒性
職業柄、日頃から膨大な数の海外ドラマに触れているため、基本的に同じ作品を何度も観返すことはない(というか、時間がない!)。しかし、そんな私が唯一別格として何度でも観返してしまう作品がある。それが、オーストラリア発の至高のコメディドラマ『プリーズ・ライク・ミー』だ。
20代の若者が大人へと踏み出す過渡期の葛藤を、従来のシチュエーション・コメディの枠に収まらない圧倒的なリアリティと、優しくも痛烈なブラックユーモアで描いた本作。一度観たら最後、その独特な世界観の虜になり、気づけば何度もその世界へ戻ってしまう抗いがたい中毒性を秘めている。
同性愛者であることの自覚と母の自殺未遂――衝撃の幕開けから始まる等身大の葛藤
物語は、20代の主人公ジョシュが恋人から別れを告げられたことをきっかけに、自らのセクシャリティに気づく場面から幕を開ける。しかし、彼を待ち受けていたのは更なる衝撃であった。同時期に、母が処方薬の大量摂取による自殺未遂を起こしてしまうのだ。
「メンタルヘルス(不安、うつ、双極性障害)」と「セクシャリティ」という、一見するとクラシックなコメディとは程遠い重厚なテーマ。だが、ジョシュは実生活での自身の体験――未診断の精神疾患と自殺願望を抱える親を持った記憶を背景に、20代の若者たちが抱える痛切な不安と強がりを、絶妙なブラックユーモアを交えて浮き彫りにしてみせた。
仲間たちとの他愛もないおしゃべりや軽口の裏には、リアルな痛みを隠すための防壁が存在する。くだらない会話が突如として衝撃的な本質へと転じるその鮮やかな手腕は、従来のテレビコメディの限界を遥かに超えている。
放送当初、過激な内容や同性愛要素ゆえに地元のデジタル専門チャンネルの深夜枠に追いやられる不運に見舞われた本作であったが、その圧倒的なクオリティはすぐさま世界に見出された。
ニューヨーカーやエンターテインメント・ウィークリーといった海外の有力メディアから熱烈な絶賛を浴び、国際エミー賞にもノミネート。世界的にはレナ・ダナムの『Girls/ガールズ』や『トランスペアレント』といった最高峰の海外プレステージドラマと同等レベルの感情のリアリティを持つ作品として評価されたのだ。
劇中で描かれる母・ローズとジョシュの関係性は、まさに本作の感情的支柱である。タスマニアのクレイドルマウンテンを舞台にした親子ハイキングの描写など、母を救いたいと願いながらも痛みの連鎖を防げない息子の不器用な愛は、観る者の胸を激しく締め付ける。
命の重みを感傷抜きで捉える、テレビ史上屈指の真摯な描写
本作が真に怪物的な傑作たる所以は、自死や精神的崩壊という悲劇を扱う際の「一切のセンチメンタリズムを排した演出」にある。
ドラマチックな悲しいBGMで誤魔化すような真似は一切しない。ただ静かな家と、普段通りの日常が存在するだけだ。悲報を知らずに能天気な挨拶で電話に出る親友、衝撃の知らせを受けながら途方に暮れてブリトーを注文しようとする父親の姿。不器用な人間たちが互いに支え合おうとして傷つけ合い、笑いさえも事態を悪化させるその瞬間を、カメラは冷徹かつ温かい眼差しで捉え続ける。
オーストラリアのテレビ業界において「心を破裂させるほど笑わせた後に、胸を強く引き裂く」という新たな表現のゴールドスタンダードを打ち立てた『プリーズ・ライク・ミー』。観るたびに新たな発見と愛おしさをくれる本作を、ぜひ体験してほしい。
『プリーズ・ライク・ミー』はNetflixで独占配信中。(海外ドラマNAVI)
Photoクレジット:Instagramアカウント@then_now_filming_locationsより
編集部AKN
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