【とある医師とドラムと音楽 #5】タイミングを外すと、音はうねる
前回、BPMという“客観的な”話をしたが、
今日はその逆。
“主観的な”話。
“ノリ”だとか、“グルーヴ”だとか
そんな言葉の話。
「ノリがいいよね」
「なんか気持ちいいよね」
こいつらは、かなりフィーリングの世界の話。
合ってるか分かりませんが、せっかくなので
言葉にできる範囲でしてみよう。
「ノリ」とは、
BPMが合っていることでもないし、
リズムが正確なことでもない。
むしろその逆で、
“ズレ”から生まれるもの。
ドラムを叩くとき、理論上の「ジャスト」は、
クリックのど真ん中にある。
でも人が叩く音は、必ずそこから少しズレる。
ほんのわずかに前に出る人。
ほんのわずかに後ろに構える人。
スネアだけ前に行く人もいれば、
キックだけ遅れる人もいる。
人それぞれのズレ方が、
その人のドラムの“聴こえ方”を決めている。
同じ曲、同じBPM、同じフレーズでも、
叩く人が変わると、全然違って聴こえる。
それは“技術の差“というより、
“時間の感じ方の差“に近い。
前に突っ込む人は、
音楽が前に進んで聴こえる。
後ろに構える人は、
音楽がどっしり落ち着いて聴こえる。
この「前」「後」のわずかな差が、
ノリとか、グルーブとかを作り出す正体なんだろう。
逆に言うと、
ズレが一切ないドラムは、
どこかつまらなく聴こえる。
DTM、機械で作られた、
すべてが完全にジャストなドラム。
(もちろん、意図的にずらして作ることもあるけれど)
正確だけど、
呼吸がない。
悪くはないけど、のっぺらぼう。
人間らしい時間の揺らぎがないから。
ノリって、
「時間をどう扱っているか」
そんな個性。
だから同じ譜面でも、同じ演奏にはならない。
クリックは、あくまで基準。
音楽は、その基準からどうズレるかで、
表情が決まる。
ジャストを守ることより、どこをズラすか。
(ズレすぎたらダメ)
そこに、
ドラムを叩く面白さがある。
