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運動は"薬"である ― 最初の一歩が、いちばん効く


「運動しなきゃな」と思いながら、今日もできなかった。

もしあなたが少しでもそう感じているなら、この記事は、きっと肩の力を抜くきっかけになると思います。こんにちは、救急科医の「だっち先生」です。
僕は毎日、救急の現場に立っています。そこで嫌というほど見てきたのは、生活習慣病が静かに進み、ある日突然、体が言うことをきかなくなってしまった人たちの姿です。心筋梗塞、脳卒中、糖尿病の悪化。その多くは、ずっと手前で防げたかもしれないものでした。
だからこそ、今日はその「手前」の話をさせてください。テーマは、運動生理学の名著が教えてくれる一つの事実――運動は、薬である、ということ。そして何より伝えたいのは、その薬は「たくさん飲まなきゃ効かない」ものではない、という話です。

実は、あなたの健康の半分近くは「あなた次第」


少し意外に聞こえるかもしれませんが、私たちの健康と寿命を決める一番大きな要因は、遺伝でも、医療でもありません。生活習慣です。全体のおよそ4割を占めます。
遺伝は変えられません。生まれ持ったものだから、悩んでも仕方がない。でも、一番大きい「生活習慣」――つまり体の動かし方や食べ方は、今日この瞬間から、あなた自身の手で変えられます。ここに、僕はいつも希望を感じます。

まず、「座りすぎ」を少しだけ気にしてみる


運動を始める前に、ひとつだけ知っておいてほしいことがあります。それは「座りすぎ」が、思っている以上に体に負担をかけているということ。
長い時間座り続けると、お腹まわりに脂肪がたまり、そこから体の中で"静かな炎症"がくすぶり始めます。この炎症が、じわじわと糖尿病や動脈硬化、認知症の土台をつくっていく。研究では、1日8時間以上座る人は、そうでない人より亡くなるリスクが6割ほど高いと報告されています。
こう書くと少し怖いですが、対策はとてもシンプルです。「座り続けないこと」。ずっと座らず、ときどき立つ。ただそれだけで、体は違う反応を返してくれます。まずはトイレのついでに、少し歩く。それで十分な第一歩です。


いちばん伝えたいこと ― 「最初の一歩」が、いちばん効く


ここからが、今日の本題です。
「運動は薬」と言うと、「じゃあ毎日1時間走らなきゃ」と身構えてしまう人がいます。でも、実際のデータはまったく逆のことを教えてくれます。
運動の量と、亡くなるリスクの関係をグラフにすると、線がいちばん急に下がるのは最初の部分なんです。まったく運動していなかった人が、ほんの少し体を動かすようになる。たったそれだけで、リスクは大きく下がります。推奨とされる「週に150分の早歩き」くらいまで届けば、死亡リスクはおよそ3割減。しかも、そこまで届かなくても、効果はもう始まっています。
言い換えると、いちばん"おいしい"のは、ゼロを1にするところなんです。完璧を目指す必要はありません。むしろ、最初の小さな一歩こそが、人生でいちばんコスパのいい投資なのだと、僕は思っています。


こんなにたくさんのことから、あなたを守ってくれる


この「薬」が効くのは、一つの臓器だけではありません。心臓の病気、脳卒中、いくつものがん、糖尿病、認知症。さらには感染症が重くなるのを防ぐことまで。これほど幅広く、体のあちこちに良い影響を同時に与えてくれるものは、正直、薬局には売っていません。
たとえば心臓なら、コレステロールや血圧を整え、内臓脂肪を減らし、血糖を落ち着かせ、そのうえ心臓そのものを"打たれ強く"してくれます。がんに対しては、あなたの中の免疫細胞を呼び覚まし、悪い芽を早いうちに摘み取る手助けをしてくれる。運動が体の中で静かに働いてくれている姿を想像すると、少し愛おしくなりませんか。

歩くだけじゃなく、少し"筋肉"も


もうひとつだけ。有酸素運動に加えて、軽い筋トレも取り入れられると、効果はさらに積み上がります。難しく考えなくて大丈夫。週に2回、大きな筋肉をちょっと動かす。それだけで、体はちゃんと応えてくれます。
おわりに ― ゼロを1にするだけでいい
運動は、たしかに薬です。でも、他のどんな薬とも違って、副作用はほとんどなく、お金もかからず、飲むかどうかを自分で決められます。
もし今、「できていない自分」を責めているなら、どうかその手をゆるめてください。大事なのは、完璧に続けることではなく、今日、ほんの少しだけ動くこと。椅子から立ち上がる、ひと駅歩く、それで十分です。
完璧じゃなくていい。ゼロを1にするだけで、人生は、少し前に進みます。
その最初の一歩が、少し先のあなたを、きっと助けてくれます。

📖 参考:Powers & Howley『Exercise Physiology: Theory and Application to Fitness and Performance』13th Edition, Chapter 15「Exercise Is Medicine ― Part 1: Prevention of Chronic Diseases」



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だっち先生|現役救急医 ありがとうございます!みなさんのためになるように勉強を重ねていきます!