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「スタジアムは最高、交通だけ惜しい」③ ― サッカー観戦の「ラストマイル問題」を、現場主義で考える

はじめに

砂森和也(すなもり かずや)です。AC長野パルセイロで現役を引退した元サッカー選手です。クラブの外側から、クラブの成長に貢献できることを探しながら活動しています。

これまで、サポーターアンケートをもとに、サッカー観戦の交通アクセス問題について書いてきました。

  • 第1弾:交通経済学の観点から、なぜ「わからない」が観戦をやめる理由になるのか

  • 第2弾:地方プロサッカークラブの構造的な制約と、それでも打てる一手は何か

記事を書いて、伝わったことがあります。

1,005件のアンケートで集まったサポーターの声を、整理して言葉にする。記事を読んでくださった方が、リポストや引用コメントを通じて対話を広げてくださる。20以上のクラブから「うちも同じです」という共感も届きました。

書いて、整理して、共有する。このプロセスがあったから、見えてきた景色があります。

その上で、僕にできることがもう一つあるとしたら何だろう、と考えました。 そして、自然と出てきた答えがありました。

現場に立つ。自分の足で確かめる。

書くことと、足を運ぶこと。両方を、自分のやり方として織り交ぜていきたい。 そう思って、5月9日のFC岐阜戦の前、篠ノ井駅から長野Uスタジアムまで、自分で歩いてみました。

この第3弾は、その実走レポートです。


これまでの話 ― 「ラストマイル問題」とは何か

第1弾、第2弾で扱ってきたのは、サポーターアンケートに毎回必ず届く声でした。

「駐車場が心配だから、次は行かない」 「試合後のシャトルバスが全然シャトルじゃなくて、いつ来るのかわからず1時間は待った」 「子連れには地獄でした」

声を整理すると、すべては駅から、あるいは駐車場から、スタジアムまでの最終区間で起きていることでした。

物流や交通の世界では、こうした「最終区間」をラストマイルと呼びます。荷物が物流センターから自宅に届くまでの「最後の1マイル」が、最もコストがかかり、最もボトルネックになりやすい区間です。

サッカー観戦の世界でも、同じことが言えると思います。

  • スタジアムは最高

  • でも、スタジアムにたどり着くまでの「最後の数キロ」が、観戦体験全体を「惜しい」にしている

第1弾でも、第2弾でも、その「ラストマイル」がボトルネックであることを、データと声をもとに整理してきました。


書くこと、そして現場で動くこと

書いて整理することの価値は、確かにあります。

問題を見える化することで、対話が生まれる。 「うちも同じです」と声が集まることで、構造的な問題だと共通認識ができる。 具体的なアイデアを書くことで、クラブやサポーターの議論の土台になる。

でも、書くだけで満足してはいけないとも思いました。

書いて整理する。そして、自分にできることを1つずつ、現場でやる。

このスタンスを、自分の活動の柱に据えたいと思います。

たとえば、サポーターアンケートをお願いし続けること。 たとえば、整理した課題を、書くだけでなく実際の行動で示すこと。 たとえば、机上で見えてきた選択肢を、自分の足で確かめにいくこと。

その「自分の足で確かめる」の最初の一歩が、駅から歩くでした。


だから、自分で歩いてみた

5月9日のFC岐阜戦の試合開始前、篠ノ井駅東口を出発しました。

向かう先は長野Uスタジアム。 徒歩での所要時間は、情報源によって30分とも40分とも言われています。Googleマップの徒歩ルートで調べると、約3.4km・48分と表示されました。実際に歩いてみても、ほぼその通りでした。

これは「アンケートで届いた声」の中の、徒歩で来るサポーターの体験を、自分で確かめる行為でした。

第2弾で書いた一文: 🚶 徒歩で来るサポーターは、そもそも徒歩ルートそのものを知らない。道中に休憩できる場所があるのかもわからない。選択肢として最初から消えてしまう

「最初から消えてしまう」のは、情報がないからです。

なら、情報を作ればいい。 歩いてみて、確かめて、伝える。 これが、自分にできることの1つでした。

篠ノ井駅東口

一人じゃなかった話

ただ、駅からスタジアムまで歩いてみたのは、僕一人ではありませんでした。

一緒に歩いてくれた人がいました。

元プロサッカー選手の三田尚希(通称:三ちゃん)。同じく長野でサッカーに関わる人です。「すなくん一緒に歩きましょう」と声をかけてもらい、駅から商店街へと一緒に歩き始めました。

そして、「ドロスナ戦記」メンバーシップの方。SNSで「今日歩きます」と伝えたら、後ろから一緒に歩いてくださっていました。スタジアムに着いたとき、「今日どうでしたか」と声をかけていただいて、はじめて気づきました。「これからもみんなで歩きましょう」――そんな話を、自然とすることができました。

歩きながら、何度も思いました。

一人で歩くのと、誰かと歩くのとでは、見える景色が全然違う。

「ここはいいな」「あの建物面白いね」「次は右ですよね?」――そんな会話が自然と生まれる。 道がわからないとき、確かめてくれる人がいる。 「歩く」という選択肢が、一気に楽しくなる。

これは、徒歩で来るサポーターにとって、大きなヒントだと思いました。

徒歩は、一人だと心細い。でも、複数だと一気に変わる。 このことを、自分の足で確かめられたのは大きかったです。

篠ノ井オレンジロード標識

歩いてみて、見えてきたこと

実際に駅からスタジアムまで歩いて、いくつか気づいたことがあります。

① 道はわかりやすい。でも、それを伝える情報がない。

篠ノ井駅東口を出ると、目の前にまっすぐ伸びる通りがあります。これがいわゆる「オレンジロード」(パルセイロのクラブカラーから愛着を込めてそう呼ばれている通り)。ここをまっすぐ進んで、途中で左に折れる――道のり自体は、実はそんなに難しくありません。

でも、駅を出た瞬間に「スタジアムはあちらです」という案内が、ほとんどない。 初めて来た人は、まず「どっち?」と立ち止まるはずです。

② 歩道は広い。でも、休憩できる場所が見えづらい。

オレンジロードは、歩道がきちんと整備されていて、ベビーカーや車椅子でも歩ける幅があります。 途中にはコンビニも、飲食店もあります。ただ、初めて歩く人にとって「この先にコンビニがあるのか」「水分補給はどこでできるのか」が、歩きながらでは見えづらい。

歩いてみてはじめて「ああ、ここで休めたな」とわかる。 それは、初見の人にとって、ちょっと不安な要素になります。

ファミリーマート 長野合戦場店

③ 商店街には、可能性が眠っている。

道中で通る篠ノ井駅前の商店街。 古くからのお店、新しく入ったお店、いまは静かにしているお店――歩いてみると、いろんな時間が混ざっています。

でも、歩きながら見ていて思ったのは――この商店街ともっと一緒にできることがある、ということです。 歩く中で、街の方々とちょっとした言葉を交わす場面もありました。 サッカーと、街と、人。この三つが、もう少し近づけたら――そんなことを、歩きながら考えていました。

駅前商店街の歩道

マップを作ってみた

歩いてみて感じた「情報がない」を、自分で埋めにいきました。

篠ノ井駅から長野Uスタジアムまでの徒歩アクセスマップを、A4で見られる1枚画像にまとめました。

  • 駅からスタジアムまでの2ルート(オレンジロード経由 / 公園経由)

  • 各区間の距離と所要時間

  • 道中の目印やコンビニの位置

  • 主要駅から篠ノ井駅までのアクセス時間

このマップは、誰でも自由に保存・配布できる形にしています。 このnote記事の最後、そしてX(@sunasnasna)でも共有します。

「徒歩は無理」と感じていた人が、「これなら歩けるかも」と思えるきっかけになれば嬉しいです。

マップのご利用について
個人・サポーターの観戦目的での保存・配布はご自由にどうぞ(クレジット表記は不要です)。商用利用の場合はご相談ください。


帰りの「徒歩」も、選択肢になる

今回歩いてみたのは、駅からスタジアムへの「行き」のルートでした。

でも、歩きながら感じたのは、試合終わりの「帰り」こそ、徒歩の出番かもしれないということでした。

試合終わりは、一斉に何千人もの人がスタジアムから出ます。シャトルバスにも、駐車場の出口にも、行列ができる時間帯です。

そんなとき、「歩いて帰る」という選択肢が頭にあるだけで、待ち時間のストレスは少し変わります。 試合の余韻を、街を歩きながらゆっくり味わう。 帰り道で気になるお店を、ちょっと覗いてみる。

明るい時間帯のホームゲームなら、行きはシャトルバス、帰りは徒歩――そんな組み合わせも、十分アリだと思います。

駅前にある居酒屋 ホルモンバル ののい

こんなマップも、あってほしい

今回作ったのは、「駅からスタジアムまで」のシンプルなアクセスマップです。

ただ、歩いてみて感じたのは、同じ徒歩ルートでも、目的が違えば、欲しい情報も変わるということでした。

たとえば、こんな派生型のマップがあってもいいと思っています。

  • 道沿いの飲食店マップ:店名、営業時間、予約できる電話番号、おすすめメニュー

  • 試合の前後にちょっと立ち寄れるお店紹介マップ

  • 子連れ・ベビーカーで歩く人のための休憩スポットマップ

「歩いて帰るなら、ここで一杯やって帰ろう」「電話してから寄ろう」――そんな選択肢が、地図1枚で広がります。

これは、僕一人ですべて作るというより、地域の方や商店街の方、サポーターの方と一緒に育てていくものだと思います。同じ徒歩ルートを土台に、いろんな目的のマップが派生していけば、徒歩観戦が「移動」だけでなく、「街を楽しむ時間」になっていくはずです。

篠ノ井オレンジロードにあるタコ焼き屋 じゅんじゅん篠ノ井店

「複数で歩く」が、ラストマイルを変える

歩いてみて、いちばん強く感じたのは、こういうことでした。

ラストマイル問題は、「移動の問題」ではなく、「体験の問題」だ。

物流のラストマイルなら、最終区間のコストを下げることが課題になります。 でも、サッカー観戦のラストマイルは、コストの話だけでは終わりません。

  • 一人で歩く徒歩40分は、「ただの苦行」になりやすい

  • 複数で歩く徒歩40分は、「会話と発見のある体験」に変わる

同じ距離、同じ道のりでも、誰と歩くかで、まったく違う時間になる。 これは、実際に歩いてみて、肌で感じたことでした。

だから、もしクラブやサポーターの間で「徒歩観戦」を一つの選択肢として育てていけるなら、考えるべきは「歩きやすい道」だけじゃない。

「一緒に歩く仲間がいる」状態を、どう作るか。

ここが、ラストマイル問題の本質に近いと思います。


次の一歩 ― 5月23日、甲府戦の前に

次のホームゲームは、5月23日(土)のヴァンフォーレ甲府戦

この日、もし駅から歩いてみようと思っている方がいたら、ぜひ作ったマップを使ってみてください


おわりに

書くことで、見えるものがあります。 歩くことで、わかることがあります。

僕がこれからやっていきたいのは、その両方を行き来することです。 机上で整理して、現場で確かめて、また書いて、また歩く。 そのループの中から、誰かの観戦体験を、ほんの少しでも変えていけたら――そう思っています。

これは、僕一人でやることではありません。 クラブと、サポーターと、地域と、一緒にやることです。 だから、こうやって書きながら、皆さんの声を待ちます。

第1弾、第2弾を読んでくださった方も、今回はじめて読んでくださった方も、ぜひコメントやリポストで、声を聞かせてください。

「ラストマイル問題」を、現場主義で、一歩ずつ解いていく。 その挑戦を、これからも続けます。


合わせて読みたい

シリーズの第1弾・第2弾も、よかったらどうぞ。


協力

今回の篠ノ井ウォークにご一緒くださったみなさんへ、感謝を込めて。

  • 三田尚希さん(通称:三ちゃん):篠ノ井駅から商店街、そしてスタジアムまで一緒に歩いてくださいました

  • 「ドロスナ戦記」メンバーシップの方:SNSから一緒に駆けつけてくださり、スタジアムまでご一緒しました


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。 もし共感していただけたら、スキ❤️ を押していただけると嬉しいです。 それが、次の記事を書く、いちばんの励みになります。

泥臭く、一歩ずつ。


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