「伝わる」を「より伝わる」に。文章にも〝あしらい〟を。
和食において、主菜を引き立てるために添えられる付け合わせの総称を「あしらい」といいます。刺身のつま、薬味などのことですね。
文章においても「あしらい」を添えると「伝わる」が「より伝わる」に変わる、という話をします。
まずは考えてみてください。
ミラクル有明高校、3戦連続逆転勝ちで夏の甲子園ベスト8へ。
この一文、ミラクルぶりを「より伝わる」ようにするには、どんな「あしらい」を添えたらいいと思いますか?
「なんと」とか「!」とかではないです。よりミラクルに思えるような「事実」を添えてください。
例えば……、
「震災があったばかりの熊本代表」とか「初出場で」とか、どうですか?
言われてみたら「あ、そんなことか」となる話ですが、テレビ制作の現場でも意外と忘れてしまうものなんです。
また例を出します。
フェンシングのある金メダリストによる発言。
「このあと、日本は衰退します」
こちら、今のままでも十分強く響きますけど、実はある事実を添えることで、より衝撃的になります。
「近年、日本フェンシングは順調に成長し、2年前のパリ五輪では史上最多5個のメダルを獲得しているのに」
ほら「衰退」という単語がより伝わりませんか。
もう一丁いきます。
テニスの錦織圭選手が現役引退を表明。
その凄さを伝えたい。
これも今のままで伝わるんですけど、より切実に伝えたい気持ちを強化するために、こんな事実を添えます。
「今、日本のジュニアは錦織選手の全盛期を知らない世代になっている。だからこそ」
おまけに、もう一丁。
新体操日本代表・フェアリージャパンが、
世界選手権団体総合で銀メダルを獲得。
日本勢ではロス五輪出場第1号となった。
さて、こちらは銀メダルの快挙を引き立てる「あしらい」を探しましょう。こんな事実を添えます。
「前回のパリ五輪では出場権を逃していた」
どうですか。ちょっとした事実を添えることで、伝えたい部分が引き立つでしょう?
これが、文章における「あしらい」です。
原稿を書くとき、字数が埋まらず、淡白な印象になりがちな人は「あしらい」のない料理を振る舞っています。伝えたい部分が引き立つ事実を調べましょう。
あと「あしらい」を添えるときは効果的に!
例えば……、
普段はあどけない表情だが、
試合になると、この真剣な眼差し。
こちら、若手のディレクターが好む演出なんですけど、僕はほとんど採用しません。
ビフォーアフターが常軌を逸して激しいならいいです。それこそ『大魔神』くらい豹変するなら。
しかしこの場合、ディレクターが伝えたいのは「真剣さ」より、むしろ「密着取材で試合以外の画も撮れた」なんですよね。
あどけない表情ってのもふんわりした表現だし、何より試合になったら真剣になるなんて、そらそうよって話じゃないですか。
だから、密着取材の画を使うなら、別の使い方を探る。別の場面に変えるか、同じ場面でも違う部分に注目するか、あるいは構成の工夫で何とかするか。
うまく「あしらい」を添えられた文には、物語が宿ります。意識して損はありません。
最後にお題を出します。
よかったら、考えてみてください。
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