災害を"想定内"にするという仕事 ― 8,000件の現場から
なぜ、"診断士"を名乗ることにしたのか
「災害は"想定内"にできるんじゃないか」
8,000件の地盤を診てきて、だんだんそう思うようになりました。
最初に現場に立ったころは、災害は神様の領域だと思っていました。
予測はできる。でも、避けられるものではない。
そういう諦めの感覚が、業界にも、お客様にも、ずっと漂っていました。
でも、件数を重ねるうちに、見える景色が変わってきました。
"想定外"と呼ばれる災害の多くが、実は、土地自身にすでに書かれていた。
古地図に、ハザードマップに、過去の災害履歴に。
誰かが読み解けば気づけたはずの警告が、置き去りになっていただけなのだと。
だから私は、"土地リスクの診断士"を名乗ることにしました。
防災士でもなく、建築士でもなく、消防士でもなく。
土地を診るプロとして、企業と個人の意思決定に立ち会う。
そういう職業としての立ち位置を、自分で定義しました。
"診断士"の視点で、私が見ている3つのもの
私がお客様の現場でいつも見ているのは、次の3つです。
土地に書かれたリスク(地盤、水、地形、歴史)
2. 企業や個人の"意思決定のクセ"(何を優先し、何を見ないか)
3. 書類と実際の運用のズレ(BCPがあるのに動かない、備蓄があるのに使えない、など)
このマガジン『診断士の視点』では、この3つのどれかについて、
現場で気づいた断片を、短いメモのように書き残していく予定です。
書籍や講座のように構造化された情報ではありません。
でも、この仕事の"本当の核心"は、たぶん、こういう断片の側にあります。
書かないと決めているもの
一応、書かないと決めているものも共有しておきます。
具体的な顧客名・案件名(守秘のため)
- 炎上狙いの行政批判
- 他コンサルや専門家を矮小化する言葉
- 明日の地震予知
"診断士"という肩書きは、
他者を断罪するためのものではなく、
自分の判断に責任を取るためのものだと、私は考えています。
書くと決めているもの
逆に、このマガジンで書き残したいのは、次のような景色です。
打ち合わせで、お客様の言葉から見えたリスク
- 現地に立って初めて気づいた地形のサイン
- 「これは迷う」という、意思決定の分かれ道
- 言葉選び ― "危険ですね"と言わずに、本当のことを伝える工夫
- 8,000件の先に見えてきた、"土地と人間"の関係性
"想定内"を広げる、ということ
私たちは、未来を完全に予測することはできません。
でも、"想定内"の範囲を、少しずつ広げていくことはできます。
8,000件診てきて、今日、私の"想定内"は、10年前の自分より確実に広くなっています。
そして広がるたびに、お客様の備えの質も、確実に上がってきています。
災害を"想定内"にするという仕事。
それは、地震を止めることでも、水害を消すことでもありません。
ただ、驚かないで済むように、読めるものを読んでおく、という仕事です。
このマガジンは、その仕事を続ける中で気づいた景色を、
ひとりの診断士として、書き残していく場所です。
読んでくれる方の"想定内"を、少しでも広げる手伝いになれば、うれしいです。
― 神山 健 / 株式会社BCPJAPAN
