飲食の主役は「人」。一度は辞めようとした世界で20年以上続いた理由
「飲食と、ともに。」は飲食店経営者、従業員など "飲食"とともに生きる人の人生にフォーカスするnote連載です。過去の経験から生まれた考え方、経営や仕事へのこだわり、外食産業へのメッセージを届けることで、外食産業をともに盛り上げていくことを目的としています。今回は、有限会社鶏冠菜 統括マネージャーの鶴山智章さまに話を伺いました。

飲食を辞めるつもりが、飲食で腹を括る
高校卒業後、ファッションへの憧れから服飾専門学校へ進むも「本当にかっこいい生き方とは何か」を自問し中退。その後、先輩に半ば強制的に入れられたカジュアルレストランでのアルバイトを機に、飲食のキャリアを踏み出した。当時は今ほど労働環境が整っておらず、一度は辞めようと思った飲食だが、10年近く、先輩の背中を追いかけて走り続けてきた。そんな時、新たな選択肢のひとつとして現れたのが、鶏冠菜。これまで居酒屋という業態にネガティブな印象を持っていた鶴山さんだったが、鶏冠菜で働く人たちの接客サービス力と高い志に触れ「ここなら、これまでとは違う景色が見られるかもしれない」と入社を決めた。

20年続けることができた理由
前職の経験もあり、入社3カ月で店長に抜擢され、気づけば全店舗の統括、さらには子会社の代表までを歴任。辞めるつもりだった飲食の世界に20年も身を置き続けた理由は、鶏冠菜が与えてくれた、挑戦できる環境にあった。自分のやりたいことを尊重してもらうことができ、好き勝手にやらせてもらえたことが秘訣だという。また誰か一人がお客さまを抱え込むのではなく、みんなで迎えるという温かい風習が、鶴山さんには心地よかった。
飲食は単なるビジネスではなく、生産者がいて、調理する人がいて、最後にバトンを受け取ってお客さまに手渡す人がいる。とくに飲食店のスタッフはその“最後の砦”を担っているからこそ、お客さまに評価されることの重みと喜びを自身が感じたように、後輩にも感じてほしいという。
飲食業界の主役は「人」
鶴山さんが大事にしているのは、人間力。ともに店で働く仲間はもちろん、取引先の選定もプロダクトの良し悪しよりも担当者の熱量や人柄を優先する。「この人がやるなら騙されてもいい」そう思える人と一緒に仕事がしたいという強い思いは、野球少年だった幼少期の自身の原体験からきている。
小中高は生活のほとんどを野球に捧げてきた鶴山さんは、中学時代初めてレギュラーから外れたことで、自分の存在を無視されるような疎外感を覚えた。しかし、その苦い経験が鶴山さんの根底にある「人間力」を作り、器用に立ち回る子よりも、不器用でも泥臭く頑張っている子に目を向けるようになったのだ。光の当たらない場所で汗を流す人の気持ちがわかるからこそ、サービス業という「人」が主役の舞台に自然と引き寄せられたのかもしれない。

人とのつながりを大切に想いをつなぐ
鶴山さんにとって飲食は、学校のような場所。他の職業ではありえないスピードで、人が変わっていく、成長していく姿を何度も見ることができるからだ。「仲間が増えなくなったら、僕は辞めるかもしれない」と言い切るほど、人とのつながりを大切にしている鶴山さん。一度は背を向けようとした飲食の世界で、仲間と共に温かいバトンをつないでいく。

