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お客さまへ届ける喜びが原点。数々の挫折を乗り越えた先に見つけた「楽」という飲食

「飲食と、ともに。」は飲食店経営者、従業員など "飲食"とともに生きる人の人生にフォーカスするnote連載です。過去の経験から生まれた考え方、経営や仕事へのこだわり、外食産業へのメッセージを届けることで、外食産業をともに盛り上げていくことを目的としています。今回は、株式会社楽company 代表取締役 矢島富士昭さまに話を伺いました。

矢島 富士昭|料理専門学校を卒業後、京都の割烹料理店で5年間修行。その後「居酒屋 てっぺん」で居酒屋のノウハウを吸収する傍ら、資金を貯めるため訪問販売などを経験し、3年後に独立。共同経営の破綻や借金を乗り越え、楽companyの原点となる「串男」を開業。現在は愛知県春日井町を中心に7店舗を運営する。

自分で作ったライムシャーベットが教えてくれた、届ける喜び

転機は、高校1年生で始めた飲食店でのアルバイトだった。矢島さんが入ったのはカニ料理の店で、働き始めて3日目に教わりながら作った「ライムのシャーベット」。自分の手で生み出したものが、お客さまのもとへ届く喜びを知り、矢島さんはすっかり飲食の魅力にのめり込んでいった。
一方で進学校に通っていた矢島さん。周囲は国公立大学への進学を志望する人が多い中、勉強は諦め、手に職をと卒業後の進路を探している時、ファッション雑誌の片隅に「国立」と書かれた料理専門学校の広告を見つけた。まさか東京都国立市のことだとは知らず、勝手に縁を感じて飛び込んだのがすべての始まりだった。また文句ひとつ言わず高額な学費を払ってくれた両親への感謝の気持ちこそが、“飲食”を途中で辞められない理由にもなっている。

自信のない20代、行動と努力で人生を変革させる

専門学校を卒業した矢島さんは、京都にある老舗の割烹料理屋で5年の修行に身を投じた。失敗のたびに叱られながらも、食材を一片たりとも粗末にしない仕事ぶりに感銘を受ける。着実に実力を付け、独立を意識し始めた矢先、自分には確固たる自信が足らないと気づいた矢島さん。そこからの行動力は凄まじかった。独立資金を貯めるため、ホストと布団の訪問販売を掛け持つ生活を開始。特に布団の訪問販売では、最初の1週間はアポがゼロで挫折しかけたが、先輩直伝の教えを守り「人と心の距離を縮めること」に徹底した営業をすると、初月でなんと450万円を売り上げ、創業40年の歴史で初の快挙を成し遂げた。

さらに居酒屋のノウハウを学ぶため、居酒屋「てっぺん」の創業者の大嶋啓介さんの著書「日本一の朝礼」に魂を揺さぶられた矢島さんは、1年間 居酒屋てっぺんで修業を積み、すべてを吸収してから店を開こうと決意した。実際に飛び込むと、そこは衝撃の連続だった。徹底された朝礼や挨拶。スタッフ全員が一丸となってお客さまを迎え入れるその熱気、圧倒的な格好良さに触れ、矢島さんの理想の店づくりを叩き込んでくれた期間となった。

こうして3年間で1000万を貯め、仲間と共同経営で店を立ち上げた。しかし、栄光は長くは続かなかった。2年後に仲間割れし、一瞬にして夢は崩壊。背負ったのは借金で、返済のためにラーメン店に住み込みで働く日々がはじまった。心が折れてもおかしくない絶望の淵で、それでも矢島さんは自身を奮い立たせ、歩みを止めずにいた

矢島さんの人生を変えた「楽」

返済を終えた頃、かつての恋人が差し出してくれた100万円を元手に、矢島さんは第二飲食人生をスタートさせた。そこで誕生したのが、楽companyの原点となる「串男」だ。開業当初はお客さまがほとんど来ず、書き入れ時である土曜日ですら客数がゼロの日もあり、頭を抱えて激しく苦悩する日々が3カ月ほど続いた。そんなとき手に取った一冊の本が、矢島さんの人生を変えた。「美味しい店はたくさんあるが、楽しい店はあまりない。ならば楽しい店であれば、一番になれる」という、楽コーポレーションの宇野雄大社長の言葉が、胸を撃ち抜いたのだ。そこから矢島さんは接客を根本から見直し、お客さまと名前で呼び合える関係を築くなどやれることは何でもした結果、立地が悪い店であっても常連が通う店にまで成長させた。矢島さんは、自らの人生を暗闇から救い出してくれた宇野社長の「楽」の一字を社名に刻んだ。こうして「楽company」は生まれたのだ。

「飲食」は多くの人を笑顔にできる産業

矢島さんにとって、飲食の真髄とは「楽(たのしむ)」に尽きる。 しかし、その楽しさは決して軽々しいものではなく、例えば100円のトマトが300円の価値に化ける世界の裏には、雨の日も嵐の日も泥にまみれて作物を育ててくれた生産者がいる。その自然の恵みと人の営みへの感謝を、絶対に忘れてはならないと胸に刻んでいるのだ。
そんな矢島さんがめざすのは、自社で働くスタッフの「やりたいこと」を全力で応援すること。最前線に立つ若者たちが主役として輝ける舞台をつくることこそ、自分の使命だと確信しているのだ。
もう一度人生をやり直せても、二度と飲食店はやらない。それぐらい本気で、今の飲食人生を楽しむ。仲間の自己実現を叶え、みんなが輝ける会社をつくるという揺るぎない覚悟を、矢島さんは「楽」という生き方そのもので、これからも証明し続ける。


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