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第6回【保育士が教える】グレーゾーンの子への「声かけ」——伝え方を変えるだけで、怒る回数は減らせる


はじめに
前回は「グレーゾーンとは何か」をお話ししました。今回は、いちばん身近な支援の場である家庭での声かけにフォーカスします。「どうしても叱ってしまう」
「言っても言っても伝わらない」
「怒ったあと、いつも自己嫌悪になる」グレーゾーンの子の保護者から、こんな言葉を何度も聞いてきました。でも、安心してください。「子どもを変えよう」ではなく「伝え方を変える」だけで、家庭の空気は確実に変わっていきます。現場で私が実践している、すぐ使える声かけのコツをお伝えします。

まず知っておいてほしいこと:子どもは「わざと」じゃない
声かけを考える前に、ひとつだけ大切な前提があります。グレーゾーンの子どもが「動かない」「聞かない」とき、それはわがままでも、しつけの問題でもなく、「今の伝え方では届いていない」ことがほとんどです。特性による「見え方・聞こえ方・感じ方の違い」を前提にすると、怒りではなく工夫が生まれます。「うちの子は育てにくい」と責めるのではなく、「うちの子には、こう伝えると届くんだ」と発見していく。この視点の切り替えが、すべての出発点です。

声かけの基本3つ
① 否定文より肯定文に言い換える
「走らない!」より「歩こうね」
「投げない!」より「こっちに置いてね」子どもは「〜しないで」と言われると、むしろその行動に注目してしまう傾向があります。「してほしい行動」を具体的に伝えると、ぐっと届きやすくなります。
② 指示は「短く・ひとつずつ」
「靴を履いて、帽子かぶって、カバン持って」と3つ続けると、途中で情報があふれてしまい、何もできないまま固まってしまう子がいます。一文一指示。ひとつの指示が終わってから、次の指示を出す。たとえば「ランドセルを置こう」→「できたね。次はお茶を飲もう」のように区切ります。
③ 「待つ」時間をたっぷりとる
指示を出して、子どもが動き出すまで、大人はつい2〜3秒で「早く!」と急かしてしまいます。でも、情報を処理して行動に移すまでに、時間がかかる子がいます。「3つ数えるまで待つ」くらいのつもりでいると、意外なほど自分で動き出せることがあります。「ちょっと待ってね」と一呼吸おく声かけも有効です 。
ポイントは、切り替えの「予告」を先に伝えること。見通しが立たないと不安が強くなる子にとって、「あと○分で終わるよ」という予告は、切り替えのスイッチを押す合図になります。

ほめる」を最強の支援に変える3つのコツ
グレーゾーンの子にとって、「ほめられる経験」は自己肯定感の土台になります。ただ、ほめ方にもコツがあります。
1即時にほめる:よい行動の直後(できれば3秒以内)にほめると、「この行動=認められた」と結びつきやすくなります。
2具体的にほめる:「すごいね」ではなく「自分で靴を履けたね」「順番を待てたね」と、どの行動がよかったかを伝えます。
3名前を呼んでほめる:「〇〇くん、片付けできたね」と名前を添えるだけで、ぐっと本人に届きます。
「えらい」だけのほめ言葉より、「その行動をそのまま言葉にする」ほめ方のほうが、子どもは何を
認められたのかを理解できます。

声かけが届かないときは「視覚支援」を試そう
声かけだけで伝わりにくい場面で、現場でもよく使うのが視覚支援。つまり「見てわかる」情報にすることです。たとえば——
一日の流れをイラストや写真でボードに貼る(朝起きる→着替え→ごはん→歯磨き…)
「あと○分」をタイマーや時計の絵で見せる
選択肢をカードにして選ばせる(「パンとおにぎり、どっちにする?」)

「言ったことを忘れる」のではなく、「目で見ると理解できる」という特性の子には、声かけより視覚支援のほうが驚くほど伝わります。最初は100円ショップの材料で十分。ぜひ試してみてください。最後に、あなたへ——「怒ってしまう自分」を責めないでここまで読んで、「今日も怒ってしまった…」と落ち込んだ方もいるかもしれません。でも、声かけのコツはすぐに身につくものではありません。私も現場で、毎日失敗しながら工夫を重ねています。「伝え方を変える」だけでいい、と知っているだけでも、今日のあなたは昨日のあなたより一歩進んでいます。そして、怒ってしまった日は、寝る前に「今日はここは言えてたな」「明日はここを言い換えてみよう」と、できたこと探しをしてあげてください。親御さん自身の自己肯定感が下がってしまうことが、いちばんもったいないことだからです。あなたの「育てにくさ」は、決してあなたのせいではありません。少しずつ、一緒に「届く伝え方」を見つけていきましょう。


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