石――意思
私は石が好きだ。
なぜか。
理由なんてない。
ただ、好きだ。
強いて一つ挙げるなら、重さ。
たぶん、これが一番大きい。
石を持っていると落ち着く。
人に聞かれた時のために、もう少し格好のいい答えも用意している。
色が好きだとか。
形が好きだとか。
一つとして同じものがないところが好きだとか。
どれも嘘ではない。
でも、
「一番は?」
と聞かれたら、やっぱり重さだ。
私は好きな石を集めて、自分でアクセサリーを作る。
身につけた時。
手に持った時。
その重さを感じると、
「あぁ、これくらいだ」
と落ち着く。
石には色々な意味があるらしい。
勇気をくれる。
正しい判断を助ける。
金運が上がる。
人間関係を良くする。
正直、私には分からない。
スピリチュアルの話は面白いと思う。
ただ、信じているか、信じていないか。
そこを決めることには、あまり興味がない。
それより、実際に私が経験していることの方が面白い。
何かに迷っている時。
心配事がある時。
少し不安な時。
私は、その日につける石を選ぶ。
意味では選ばない。
重さで選ぶ。
「今日は、これくらいがいいな」
それだけだ。
ところが後から調べてみると、なぜかその石が、その時の自分に合う意味を持っていることがある。
不思議だな、と思う。
もちろん、石が私を選んでいるのかもしれない。
ただの偶然かもしれない。
私が後から意味を見つけているだけかもしれない。
どれでもいい。
私は少し捻くれているので、
「この石があなたを導きます」
と言われると、たぶん一度疑う。
でも、
「今日はこの重さが落ち着く」
という自分の感覚なら、素直に信じられる。
そう考えると、私が石から受け取っているものは、勇気でも、金運でも、正しい答えでもないのかもしれない。
石を選ぶ時、私は少しだけ、自分が今どう感じているのかを知る。
石の意味ではなく、自分の意思を。
だから今日も、私は石を選ぶ。
何を叶えてくれるかではなく、どれくらいの重さなら、今の自分が落ち着くのか。
たぶん私は、石を信じているというより、石を持った時の自分を、少しだけ信じている。
