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本業赤字なのにPER292倍。岡本硝子(7746)の株価は「深海のガラス球」に何を賭けているのか

プロジェクター用ガラス部品で知られる岡本硝子(7746)は、本業では2期連続の営業赤字に沈んでいる。それなのに株価はPER292倍、PBR8.65倍という水準で取引されている。理由は本業ではなく、深海6,000mで使われる耐圧ガラス球「COEDO」が、南鳥島沖のレアアース泥採泥という国策プロジェクトに採用されたことにある。僕はこの株を「レアアース関連銘柄」としてではなく、「期待先行相場のサンプルケース」として見ておく価値があると思っている。

何が起きたか

岡本硝子は1947年創業の特殊ガラスメーカーで、東証スタンダードに上場している。主力製品はプロジェクター用のガラス偏光子やフライアイレンズといった光学部品だ。時価総額は約226億円(8月31日終値ベース)と、レアアース関連の主力銘柄と比べれば明らかに小さい。

同社が製造する深海探査機「江戸っ子1号」に搭載される耐圧ガラス球「COEDO」(水深6,000m対応)が、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期の一環として2026年1〜2月に実施された、南鳥島沖(水深約6,000m)でのレアアース泥採泥試験に採用された。この試験は世界初のレアアース泥回収成功につながっており、日本経済新聞も「レアアース試掘支えた『江戸っ子』」として同社の技術を報じている。

一方で本業は苦戦が続いている。2026年3月期通期の決算は、売上高47.31億円(前期比1.0%増)に対して経常損失8,200万円、純損失1.49億円という赤字着地だった。プロジェクター需要の世界的な低迷に加え、データセンター投資の活発化に伴う偏光子受注の急減が響いた。会社側は2027年3月期に1.23億円の黒字転換を見込んでいる。

株価は9月2日時点で755円(前日比21円安、2.71%安)、時価総額225億8,000万円。PER(会社予想)は292.64倍、PBR(実績)は8.65倍にのぼる(Yahoo!ファイナンス、9月2日時点)。2026年1月にレアアース泥採泥試験への採用が報じられた際にはストップ高買い気配となった経緯があり、今の株価水準はその期待の延長線上にある。

まとめ: 岡本硝子は本業では赤字が続く一方、国策のレアアース開発プロジェクトへの部材供給という副次的な役割で株式市場の脚光を浴び、株価指標は業績実態を大きく超えた水準にある。

なぜ「マイナー」銘柄なのか

信越化学、住友金属鉱山、三菱マテリアル、TDKといったレアアース関連の主力・大型銘柄は、いずれもレアアースそのものの採掘・精製・磁石製造など、テーマの中心に位置する事業を手掛けている。対して岡本硝子は、レアアースの採掘・精製には一切関わっておらず、あくまで「深海という極限環境で使う特殊部材」を供給する裏方だ。レアアース関連の主要銘柄一覧では見落とされがちなポジションであり、機関投資家のカバレッジも薄い。時価総額226億円という規模も、主力銘柄と比べれば小型の部類に入る。

まとめ: 岡本硝子はレアアースの中心事業ではなく、深海探査機材という周辺領域の部材供給で注目される、間接的でニッチなポジションの銘柄だ。

一般的な見方

この銘柄をめぐる見方は、大きく3つに整理できる。

  • 注目される可能性がある理由: 南鳥島沖のレアアース泥開発は経済安全保障上の国策プロジェクトとして今後も継続・拡大が見込まれており、深海探査機材の需要が続けば、本業の光学部品事業とは独立した新たな収益源になり得る。

  • 慎重に見るべき理由: 本業は赤字基調が続いており、南鳥島プロジェクト関連の売上・利益への実際の寄与度は現時点で開示されていない。PER292倍・PBR8.65倍という水準は、業績の裏付けというより「期待先行」の色合いが強く、過去にもストップ高後に急落した局面が報じられている。

  • 第三の視点: レアアース関連テーマは「掘る・精製する・磁石にする」企業に注目が集まりがちだが、深海6,000mという極限環境での探査・採泥を支える特殊部材のような「縁の下」の技術力に着目することで、テーマの理解を一段掘り下げられる。

まとめ: 期待の理由は国策プロジェクトの継続性、慎重論の理由は業績の裏付け不足、第三の視点はテーマの捉え方そのものの掘り下げにある。

僕の視点: この株は「レアアース株」ではなく「期待先行相場のサンプル」として見るべきだ

僕がこの銘柄で一番言いたいのは、岡本硝子を単純な「レアアース関連の狙い目銘柄」として紹介するのは、あまり誠実な扱い方ではないということだ。

まず数字を冷静に見てほしい。本業は2期連続の赤字で、南鳥島プロジェクトが実際にどれだけの売上・利益をもたらすのか、開示ベースでは何も分かっていない。それでもPERが292倍まで買われているということは、株価のほとんどが「将来こうなるかもしれない」という期待だけで構成されているということだ。これは投資判断としてダメだと言いたいのではない。むしろ僕は、岡本硝子という一銘柄を通じて、レアアーステーマ全体が抱える「期待先行リスク」を具体的に理解できる、良質なサンプルケースだと思っている。

レアアース・重要鉱物というテーマは、経済安全保障という国策の後押しがある分、業績の裏付けが薄くても株価が先に動きやすい性質を持つ。岡本硝子はその性質が極端な形で表れた事例だと僕は捉えている。国策プロジェクトへの採用という事実そのものは本物であり、否定する材料ではない。しかし「採用された」という事実と、「その採用が実際にいくらの利益を生むのか」という話の間には、まだ大きな距離がある。この距離を意識せずに株価だけを追いかけると、2026年1月のストップ高後の急落のような値動きに振り回されることになる。

僕がもう一つ面白いと思うのは、この会社が「本業不振」と「副業への期待」という、まったく異なる二つの顔を同時に持っている点だ。プロジェクター用光学部品というレガシー事業が構造的に縮小する一方で、深海探査という国策の最前線に技術が採用されるという、対照的な物語が一つの決算書の中に同居している。こうした二面性のある企業は、業績を単純な増収増益・減収減益という物差しだけで評価すると本質を見誤る。僕は、南鳥島プロジェクトの進捗(次のフェーズでの発注実績や採泥量の拡大等、具体的な数字が出てくるかどうか)を継続的に追う方が、目先の株価指標を追うよりも意味があると考えている。

僕の意見をはっきり書くと、現在のPER292倍という水準は、業績の実態に対しては明らかに割高だと僕は見ている。国策プロジェクトが順調に拡大し、それが決算数値として具体的に見え始めない限り、この株価水準を維持し続けるのは難しいというのが僕の見立てだ。ただし、これは「この会社に価値がない」という意味ではない。深海の極限環境で使える特殊ガラス技術という独自性は本物であり、南鳥島プロジェクトが今後も継続していく以上、長い目で見れば新たな収益源に育つ可能性自体は僕も否定しない。目先の株価と、事業としての将来性は分けて考えるべきだというのが、僕がこの銘柄について一番伝えたいことだ。

まとめ: 僕はこの銘柄を「今すぐ買うべきレアアース株」としてではなく、「国策テーマがどこまで株価に先回りして織り込まれ得るか」を学べる教材として見ている。株価は割高だが、技術の独自性そのものは否定しない。

まとめ

岡本硝子は、本業の光学部品事業が2期連続の赤字に沈む一方で、深海6,000mの耐圧ガラス球が南鳥島沖のレアアース国策プロジェクトに採用されたことで、PER292倍という期待先行の株価をつけている。僕はこの会社を、レアアース関連の「狙い目銘柄」としてではなく、国策テーマがどこまで業績に先回りして株価に織り込まれるかを示す好例として見ている。技術そのものの独自性は評価しつつも、今の株価水準は業績の裏付けに対して明らかに先行しすぎているというのが僕の意見だ。

出典: 日本経済新聞「レアアース試掘支えた『江戸っ子』 岡本硝子『深海で潰れぬガラス球』製造」、Yahoo!ファイナンス岡本硝子(7746)株価・決算情報(2026年9月2日時点)、みんかぶ「岡本硝子はカイ気配スタート、『江戸っ子1号』が南鳥島沖のレアアース泥採泥試験に採用」(2026年1月13日)

出典: kabutan.jpの岡本硝子(7746)チャート画像を使用しています。

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