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父に怒られて、やっと気づいたこと|若僧の教訓話*31


父に腹が立ちました。

「なんでそこまで言うんだ。」

そう思いました。

私は、

自分なりに頑張っていました。

空いた時間を見つけて塔婆を書き、

お寺のことを考え、

檀家さんに少しでも喜んでいただけるよう、新しい取り組みも進めていました。

だからこそ、

父の一言が胸に刺さりました。

でも、

一日経って、

私は気づきました。

父は、

私を叱っていたのではありませんでした。

今日は、

住職である父と、

その背中を追う若僧のお話です。




🌱 私には私の考えがありました


お世話になっております。

記録と闘う修行僧です。

六月。

私は八月のお盆、お施餓鬼に向けて塔婆の裏書きを書いていました。

裏書きとは、

塔婆の裏面に毎年決まって書く部分です。

六月中に何とか書き終え、

七月からは、

ご注文いただいた戒名や

「〇〇家先祖代々」

などを書く表書きが始まりました。

私には、

一つの計画がありました。

昼は法務。

空いた時間に塔婆を書く。

夜も少しずつ書き進める。

七月末までに終えればいい。

コツコツ積み重ねれば、

必ず終わる。

私はそう考えていました。

ところが父は違いました。

「丸一日、

塔婆だけを書く日を作って終わらせろ。」

そう言ったのです。

私は正直、

納得できませんでした。


🎐 私にも、やりたいことがありました


その頃、

私は施餓鬼で使ううちわを作っていました。

私のお寺には、

まだ本堂にエアコンがありません。

夏の法要は本当に暑い。

だから少しでも涼しく過ごしていただきたい。

それが一つ。

もう一つは、

「何をしているのか分からない一時間」

で終わらせたくなかったことです。

お施餓鬼でお唱えするお経。

その意味。

現代語訳。

ふりがな。

それらを一枚のうちわにまとめました。

法要の前に意味を説明し、

お経を味わいながら一緒に唱えていただく。

ただ参加する一時間ではなく、

少しでも意味のある一時間にしたかったのです。

完成した時は本当に嬉しく、

父にも見てもらいました。

すると父は、

完成したうちわを見ながら、

静かに言いました。

「このうちわを渡して、

檀家さんがどれくらい戻ってくるかな。」

そして続けて、

「そんなことやってないで、

早く塔婆を書いたらどうだ。」

……

流石に、

頭にきました。

「私は遊んでいるわけじゃない。」

「檀家さんのことを考えて作ったのに。」

そんな気持ちでした。


🤔 一日経って考えました

その日は、

イライラしたままでした。

でも、

一日経って、

父はなぜあそこまで言ったのだろうと考えました。

すると、

一つずつ見えてきたのです。

七月中には、

結婚式の案内を全国のお寺さんへ送らなければなりません。

お盆も、

施餓鬼も、

もう目前です。

そして十月からは、

私が兼務寺へ住み込み、

父から少しずつ仕事を引き継いでいきます。

塔婆。

檀家さん。

年中行事。

父には、

私へ渡したいものが山ほどある。

だから、

塔婆を早く終わらせ、

次の仕事を教えたかった。

そう考えると、

父の言葉が少し違って聞こえてきました。


🏯 父は未来を見ていました


私は、

今日を見ていました。

夜に少しずつ書けばいい。

自分のペースで終えよう。

そう考えていました。

でも父は違いました。

父が見ていたのは、

今日ではありません。

この先のお寺でした。

私は、

うちわを作っていました。

父は、

住職を育てていました。

私は、

「やりたいこと」

を見ていました。

父は、

「やるべきこと」

を見ていました。


🙏 父が教えてくれたこと


今なら思います。

父は、

うちわを否定したかったのではありません。

檀家さんに喜んでいただきたい。

その気持ちは、

父も私も同じです。

でも父は、

お寺は理想だけでは守れないことを知っています。

やるべきことを終えてこそ、

新しい挑戦が生きる。

責任を果たしてこそ、

理想を続けられる。

それを教えたかったのだと思います。


🌱 コツコツと、やり切ること


私は、

コツコツ積み重ねることが好きです。

それはこれからも変わりません。

でも今回、

父からもう一つ学びました。

コツコツ積み重ねることと、

「ここは一気にやり切ること」

は違うということです。

お寺には、

待ってくれない仕事があります。

お盆も、

施餓鬼も、

法要も、

「もう少し待ってください。」

とは言ってくれません。

時には、

自分のペースを崩してでも、

目の前の仕事をやり切る。

それもまた、

住職の責任なのだと思いました。


🌸 最後に


父は昔から、

多くを語る人ではありません。

「こう生きろ。」

とも言いません。

でも、

何十年も毎日、

お寺を守り続けてきました。

私は、

父の言葉より、

父の背中から学ぶことの方が多いのです。

今回もまた、

その背中に教えられました。

私はまだ、

住職ではありません。

副住職です。

だからこそ、

理想を語れる立場でもあります。

でも、

本当にお寺を背負う日が来た時。

その理想を、

理想のままで終わらせない力が必要になります。

もっと学ばなければならない。

もっと動かなければならない。

もっと責任を持たなければならない。

今回、

父に怒られたことは、

決して気持ちの良い出来事ではありませんでした。

でも、

あの日があったからこそ、

私は少しだけ、

父が見ている景色を想像することができました。

きっと、

住職になるということは、

こういうことの積み重ねなのでしょう。

私はまだまだ未熟です。

だから今日も、

父に学び、

母に学び、

檀家さんに学び、

失敗しながら、

一歩ずつ歩いていこうと思います。

そしていつの日か、

父が安心して、

「任せた。」

そう言ってくれる日が来るように。

理想を忘れず、

現実から目を背けず、

真正面からお寺と向き合っていきたいと思います。

父に怒られた一日でした。

でも、

父が私を「副住職」ではなく、「次の住職」として見始めた一日だったのかもしれません。

どうもありがとうございました。



シリーズに諸々まとめております。
面白そうなものだけでもどうぞ🙏🙏
因みにうちわは採用されました笑笑

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