AI事業者ガイドラインは、読むだけでは足りません
経済産業省・総務省から、「AI事業者ガイドライン第1.2版」が公表されています。
このガイドラインでは、AIに関わる事業者を、大きく三つに分けています。
AIを開発する事業者
AIをサービスとして提供する事業者
事業活動の中でAIを利用する事業者
つまり、AIを自社で開発していなくても、業務でAIを使う会社は、「AI利用者」として整理されます。
ここが重要です。
AIガバナンスは、AI開発会社だけの話ではない
たとえば、企業ではすでに次のようなAI活用が始まっています。
ChatGPTを業務に使う
問い合わせ対応にAIを入れる
需要予測にAIを使う
採用や人材評価にAIを組み込む
在庫管理や発注判断にAIを使う
契約書の確認にAIを使う
与信判断にAIを組み込む
この時点で、その会社はAIを使う側として、どのように管理し、どのように説明するかを考える必要が出てきます。
AIガバナンスは、AIを作る会社だけの問題ではありません。
AIを業務で使う会社にも関係する、経営上の問題です。
すべての事業者に共通する10の指針
ガイドラインでは、すべての事業者が念頭に置くべき共通の指針を、次の10項目に整理しています。
人間中心
安全性
公平性
プライバシー保護
セキュリティ確保
透明性
アカウンタビリティ
教育・リテラシー
公正競争の確保
イノベーションの促進
このうち、AIを利用する立場の経営者が、まず向き合うべきなのは次の五つです。
安全性。
公平性。
プライバシー保護。
透明性。
アカウンタビリティ。
誰が、何を根拠に、どこまで責任を負うのか。
実務で問われるのは、結局ここです。
ガイドラインを読んだだけでは、会社は変わらない
ただし、ガイドラインの内容を理解しただけで、対応が終わるわけではありません。
本当に必要なのは、ガイドラインを自社の業務に当てはめることです。
自社では、次の問いに答えられるでしょうか。
AIに何を判断させるのか。
どこから人間が確認するのか。
AIの出力を見て、最後に誰が決めるのか。
判断が外れたとき、誰が説明するのか。
その判断記録は残っているのか。
個人情報や顧客情報をAIに入力してよい範囲は、どこまでか。
外部のAIサービスを使う場合、データの扱いを誰が確認しているのか。
これらの問いに答えられなければ、ガイドラインを読んでいても、自社のAI利用を管理できているとは言えません。
ガイドラインは、会社ごとの答えまでは用意してくれない
ガイドラインは、考えるべき原則や方向性を示してくれます。
しかし、会社ごとの答えまで用意してくれるわけではありません。
自社の業務。
自社の顧客。
自社のデータ。
自社の責任体制。
これらに引き直して、初めて意味を持ちます。
AIガバナンスの難しさは、基準が存在しないことではありません。
基準を、自社で運用できる制度に変える必要があることです。
AI責任設計研究会で扱っていること
一般社団法人笹川経済支援機構「AI責任設計研究会」で扱っているのは、まさにこの部分です。
AIを使えるかどうかではありません。
AIに何を任せるのか
どこで人間が確認するのか
最後に誰が判断するのか
何か起きたとき、誰が責任を持つのか
その判断を、どのように記録するのか
これらを、自社の制度として設計します。
ガイドラインを知識として読むのではなく、自社で説明可能・運用可能な仕組みに変える。
それがAI責任設計です。
問われるのは「AIを使っているか」ではない
AI事業者ガイドラインは、今後、取引先の選定や調達、監査、行政への説明における共通言語になっていくと考えられます。
だからこそ、経営者が見るべきなのは、ガイドラインの存在そのものではありません。
見るべきなのは、ただ一つです。
自社がすでに「AI利用者」として、説明できる状態にあるか。
AIを使い始めることと、責任を持って使い続けられることは、別の問題です。
